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冒険での事件


あれからさらに一年が経ち、冒険者仲間のリッシュが上位学院の受験で冒険者をあまり出来なくなった。

アーサー兄様は仕事から帰還し、久々に顔を合わせた。

私はカインと仲良く話すようになり、ロイがなんだか悔しそうにしていた。

カインと私が話しているのは大体冒険のことで、モンスターの特徴や攻撃手段などを本を片手に話していた。

リッシュがいないのはとても心細いが、ランクの低い私とカインは二人で細々とした依頼を受けてランクを上げていた。

リッシュのランクBに追いつくのが目標だ。


今日も放課後に一緒に冒険者ギルドに向かい、昇級クエストを二人で受けて現地へ向かった。

昇級クエストはランクをあげる時に出てくるクエストで、これを達成するとランクが上がる。

私はカインのお手伝いで、FからEへの昇級クエストを受けてあげていた。


昇級といっても採取クエストで、今回は丸キノコを10個採取すればいいだけだった。

丸キノコは名前の通り丸いキノコで、キノコとは思えないサクサク食感と甘さを兼ね合わせた天然スイーツキノコだ。

人気が高く高値で売れる。

しかし見つけるのは極めて難しい上に、採取するとなると崩さないようにとってこないといけないため難易度が高いのだ。


いつもの森を二人で散策しながら丸キノコを探す。

見つけたら瓶に入れ、圧迫されて壊れないように気を使う。


この森はランクD程度のモンスターしかいないので、剣術下級と中級の二人がいれば何も恐れることはない森だ。

確かにまれに凶悪なタイガーライズなんてモンスターもいるが、あれだってCランク程度で、剣術中級がいれば勝てるらしい。

だから大丈夫、そう思っていた矢先の出来事だった。


突如空が暗くなり、嵐になった。

私とカインはひとまず岩陰に入り雨風をしのいだ。


「突然で驚きだったね」

「本当だね」


あと一つの丸キノコを採取すれば終わりだという時に雨に降られて互いにビショビショになっていた。

水の滴るいい男とはよく言ったもので、今まさにカインはいい男なのだろう。


「丸キノコ、これじゃしけっちゃってそうだね」

「そうだね」


特に緊張感もない会話を交わして、ふと嫌な気配を感じたので二人とも息を殺した。

森の奥から響く大きくゆっくりとした足音。

覗き見ればそれはダークスピアロー…死神だった。

こんな森に出るはずのないモンスターに二人して怯えて寄り添い、縮こまった。

突然の雨と何か関係があるのだろうか?けれど死神は豪雨を呼ぶなんて話はない。

再び足音がして震えながら覗き見ると、スピアローというダークスピアローの下位種が大量におり、そのスピアローに囲まれるようにそれがいた。

『エンペストスピアロー』世界に数体しかおらず、大概が死神とその僕を大量に連れており、奴が現れると空が割れ、大地が吹き飛ぶ都まで言われる天災の龍だ。

ダークスピアローが5匹にスピアローが10数体しかここからは見えないが、見えただけでも相当な数だ。

アーサー兄様がいたらどうにかできたかと言われても即答できないほどのモンスター群だ。

そこにランクがFとEでしかない私たちがいる。

どうしようもないがクエストをクリアしない限りは戻れない。

採取クエストは失敗が存在しない。

存在するとしても一週間連絡がなければ破棄という形でその場放置になる。

一週間以内に丸キノコを探さないとここで一生を過ごすことになるし、だからといってこの環境下で動く何てことも到底不可能だった。


エンペストスピアローが私たちに気がつかず遠くへ行ったのをしっかりと見てから二人してコソコソと丸キノコを探した。

もちろん全てしけってしまい、ターゲット外になってしまっていた。

しけってない丸キノコを探さないといけないが、この大嵐だ。

洞窟内や岩陰にあるものを探すしかない。


「死にたくないな…」


自分たちが隠れた岩陰にある潰れた丸キノコを見てカインがそう呟いた。

私も同じく潰れた丸キノコを眺め、同じことを思ったのだった。


これが潰れていなかったら、帰れたかもしれないなと

ちょっと泣きそうな目の二人はそれをみつめていた。


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