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冒険者ネームは天使です


学院生活は順調だった。

なぜなら勉強は朝飯前だったからだ。

さらに剣術でも私に叶う人は一人もいなかったのだ。

エメスト兄様ぐらいしか特訓相手がいない。そんなエメスト兄様も学院では叶うものがいないらしく日々つまらなさそうに過ごしていた。

私は暇があったらエメスト兄様と剣術で組手をし、腕を上げていた。


この学院に来てわかったことは、剣術中級がとんでもなくすごいということだった。

戦士級と騎士級で分かれているとは思わなかった。

戦士級が戦術で騎士級が剣術。魔法学院ではないから魔法は使えない子のほうが多い。

というか使えないのが普通だった。


授業は綺麗にノートをとることを心がけながらのんびり過ごし、戦術の授業では男子相手に無双して、体育では兄様達との追いかけっこで身につけた体力をフルで使った。

私はその強さから先生にも驚かれ、同学年からも尊敬されていた。

なぜ尊敬だけで済んだのかはわからない、恐怖や妬みにならない理由はないはずなのに…


「レアさん勉強おしえて?」

「いいよ」


最近私はクラスの子と仲良くなった。

貴族学院だというのにとても平和だ。

まあ、私を蔑むことができるほどの人がいないのが現状だけれど…

だってお姫様だし。


「レアさんって可愛いですよね」

「ありがとう」


私が皇女だと知っててみんな仲良くしてくれている。

男の子は気をひこうと頑張っているみたいで少し微笑ましい。


そんな友人達の中でも中のいい子が二人いる。

一人は艶やかなブロンズの髪を肩ほどまでに伸ばしていて瞳はグレーの女の子のフルブラント・B・ヴォズテスタ・ロレッタ=マドレナード

=マドレナードというのは出身の街名だ。今いる街出身だと略しているが、他の街に行くときは必ず名乗らないといけない。

ロレッタはとても大人しくて優しい女の子だ。

私が王女だからなのか”さん”をつけて私を呼ぶ。

勉強は中ぐらいで、私がよく勉強を見てあげている。


「わたくしも教えてくださいませ!」

「いいよ」


もう一人はエメラルドグリーンの髪をツインテールにしていて瞳はペリドットのような女の子のフルブラント・B・ウォタリス・ユーリスだ。

ユーリスは気の強いお嬢様気質な女の子だが、悪い子ではなくて気が強いだけの優しい子だ。

勉強はロレッタよりもできないが、私を頼ってやってくる。

この子も私を”さん”で呼ぶけれど、それでも命令口調が多かったりするので敬ってるのかどうかは不明だ。


二人とも戦術の下級程度しか剣は扱えないらしいが、別にだからと言って女の子だから困ることもないそうだ。

逆に二人はおかし作りなんていう女子力が高いスキルを持っている。

私は今までそういうことをしてきたことが無いので作れない。

まあ、昔から考えればかなりできる方ではあると思うが、そこはこの世界とこっちでは勝手が違うので割愛。


「ねえ、冒険者ってどんなことするのかな」


ふと前にどうしても必要になって冒険者カードを作ったことを思い出したので二人に聞いてみた。

二人は私が冒険者という言葉を口にするとは思っていなかったのか驚愕の表情を浮かべ、口を開けていた。


「冒険者は一般人と下級貴族がお金を稼ぐために命を張って戦うために作られた職業ですわ!」

「だから、レアさんがいくような場所じゃないんですよ?」


二人が必死になって私を説得しょうとするが、なるほど、この貴族学院には下級貴族がいないのか。

もしかしたら中級から上級貴族しか入れない学校なのかもしれない。

だから喧嘩もいじめもなく平和なのだろうとなんとなくわかった。


そして下級貴族たちは一般人と同じ学院に通い、冒険者になる。

魔法が使えるものだけは魔術学院に入り、中上級貴族が入る上位学院を目指すのだろう。

だめだだめだと言われると行きたくなる。

それが人間のサガってものだと私は思う。


授業が終わり、二人と別れた後、私はそっと冒険者ギルドに向かった。

ギルドには今日も屈強な男と女が酒を飲み交わしており、私が入るとやはり黙ってしまった。

しんとするギルドをキョロキョロ見渡し、総合案内の所でクエストの受け方や戦い方、利用の仕方を聞いた。

ギルドの人も私が冒険者なのがあまり現実味がないのかおどおどしている。


「あの、えっと…」


私もわからず不安げにギルドの人を見上げていた。


「僕が教えてあげようか?」


振り返るとそこには同い年ぐらいの少年がいた。

栗色の髪をストレートにしており、耳を隠さない程度に切られていた。

瞳は私と似ている深い青だった。

衣服は魔導師が使いそうな高級なローブを羽織っていた。


「いいんですか?」

「もちろん、こう見えて僕はランクBだからね。ベテランだよ?」


少年なのにベテランと言われて魔法使いだからかと一人納得した。

腰にも剣を下げているので剣の腕もあるのかもしれない。


「ここの使い方だったよね?」

「はい」


少年はクエストカウンターで依頼が受けられて、依頼を受けたら魔法機器によって依頼場所まで転送され、クエスト終了後しばらくするとクエストを受けたギルドに戻ってくるのだそうだ。

そうするとカードと依頼書を渡してしばらくすると報酬を受け取れるようだ。

いたって簡単でシンプル。

ランクはFからSまであり、FEDCBASで左が最も低く右が最も高い。

少年はBなのでかなり強いことになる。


「わかった?」

「はい!ありがとうございます」


ニコッと笑顔を見せると少年は耳を赤くしていた。


「あ、そうだ!あなたの名前を聞きたいんですけど…」

「僕?僕の冒険者ネームはリッシュだよ」

「え?」


冒険者ネームを聞きたかったわけではなかったが、リッシュと聞いたらどうでもよくなった。

あの魔導師リッシュのことだろうか。


「学院でのあだ名を書いちゃったんだ」


はははと笑う少年に納得した。


「わたしも、天使なんて書いちゃって」

「でもぴったしな名前だよ、天使みたいだし」


天使じゃなくてお姫様だけどね、なんて言ったらこの子は言葉を改めてしまうかもしれない。

そう思ったらなんだか言えなかった。


「天使、せっかくだしクエスト受ける?僕もついてくよ?」

「いいの?」

「うん、どうせ暇だし」


リッシュはにこやかに笑い、わたしも初めてのことにワクワクする。


「ただ、遊びで行くとかなり苦しい思いをするから、覚悟は決めた方がいいよ?」


特に討伐だとね、とリッシュは言った。

そうか、確かに動物とはいえ殺すことになる。

クエストの中にはお尋ね者や盗賊の討伐もあったりする。


「討伐以外のクエストってないの?」

「あっても稼ぎが低いよ」


お金に関してはわたしは気にしていないけれど、そういうわけにもいかないのだろう。


「でも討伐はランクDからだから安心して今日は薬草でも摘みに行こうか」

「うん」


薬草を摘むだけのクエストを受けて一緒に向かう。

魔法器具で瞬間移動して魔物の住む森へやってきた。


「薬草はこれ、似てるけど毒なのがこれだよ」


ささっと地面に生えていた草を抜いてリッシュは教えてくれた。

違いを覚え自分で抜いてみる。


「それ毒草の方ね」

「難しいね~…」


じっくり眺めて引っこ抜いてようやく薬草を見つけた。

わかってくると楽しくなってきて二人で森の中を散策しながら薬草を引っこ抜いた。


しばらく薬草を引っこ抜いているとズズンと何かが降りてくる音が聞こえた。

何かと思って音の方を向くと、そこには虎のような姿に翼を持っているモンスターがいた。

空気がビリビリとしていることから電気属性だということもわかった。


「タイガーライズ!?天使危ない!」


リッシュがとっさに叫んだ瞬間、タイガーライズは私めがけて突っ込んできた…が

目の前に出来上がった障壁によって攻撃は防がれた。

私の魔法じゃない。


「ーーー…ーー!」


神言で唱えた魔法が硬く鋭い槍に変わり、タイガーライズの翼を貫いた。

『アースピア』リッシュの使っていた大技でもあり、唱えられる人物はアーサー兄様ぐらいしか聞いたことがない。

ショートカットは出来ている方で、魔法学院生というものはつくづくすごいと思った。

けれど、戦いは五分五分で、彼は私を守らなければならないので不利だった。

他人の目の前で魔法を使ってはいけないが、今は剣も何も持っていない。

それにあの敵に接近戦は非常に危険で、できることなら援護をしてあげた方が良さそうだ。


「障壁は任せて!自分の身ぐらい自分で守れるから!!」


目の前で奮闘するリッシュにそういい、神言で魔法を唱え障壁を作る。

少しばかし傷を負ってしまったリッシュに聖属性の治癒を施す。

相手が電気属性なので土属性のオーラを作成する。

本当ならオーラは仲間の得意に合わせて考えた方がいいのだけれど、アースピアを使える彼は土は苦手じゃないだろうと判断した。


私の支援がうまくいったのか、彼は戦いやすくなったようだった。

タイガーライズをようやく仕留め、互いに障壁の中で腰を下ろして息を吐き出した。


「天使が魔法使えるとは思ってなかったや…ありがとう」

「本当は家族以外に魔法が使えることは言っちゃいけないんだけど、こんな時にそんなこと言えないから…無事でよかった」


二人であははと笑いあい、初めて何かを殺めたというのに達成感があった。

殺めたのはリッシュで私ではないけれど…


「なんで言っちゃいけないの?」


当然の疑問をリッシュはぶつけてきた、なんでかは私にもわからないと答えるとうーんと唸った。


「わかった、天使が可愛いからだ」

「なにその理由」

「絶対にそうだよ」


リッシュはその後この世界で弱いものはどうなるかと話してくれた。

上級貴族たちは平和かもしれないけど下級貴族や一般人や力のない子供はなにをされるかわからない。

魔法が強い子が生まれた母親が我が子を売るケースもあるのだという。

子供のうちは普通は隠して育てたり、魔法学院に入れて魔法団の恩恵を受けるかしないと身を守れないのだ。


「天使は見た目とても弱そうだし、狙われやすそうだもん」

「こう見えても私剣術中級なのよ?」

「ええ!?そうなの??」


そんなに意外だったのかリッシュが目を見開いて口もぽかんと開けている。

なんだかおかしくて声を出して笑ってしまった。


「なんだ、僕と同じぐらい強いんじゃないか」

「兄様がとても強かったからね」


二人でのんびりしていたところ、ふとクエストのことを思い出し、また二人で薬草を引っこ抜いた。

しばらく引っこ抜くとクエスト完了という魔法陣が足元に出てきて瞬間的にギルドへ戻ってきた。

クエストカウンターで二人分の薬草と依頼書とカードを渡す。

しばらく待つと報酬を受け取った。


銅貨100枚そこそこのお小遣い程度がたまった。

初めて自分で稼いだお金がなんだか嬉しくてニンマリ笑う。


「リッシュありがとう!」


リッシュは銅貨なのはあまりどうでもいいらしく、特に嬉しそうにもしないでバックに詰めていたが、私の言葉を聞いて驚いてキョトンとしていた。


「私、リッシュがいなかったらクエストの受け方分からなかった!」

「そう?」

「うん!それにね!初めて自分で稼いだのが嬉しくて!これもリッシュのおかげかなって」


だからありがとうというと頬と耳を真っ赤にしてリッシュが頭をかいてそっぽを向いた。

小さな声で「どういたしまして」と言いながら…


「もう帰らないといけないけど、また一緒にクエスト行こうね!」

「う、うん!」


大きく手を振ってギルドから駆け出した。

とても嬉しくて嬉しくてたまらなくて、途中で貯金箱を買って城に帰った。

自分の部屋に貯金箱を置いてその中に今日の銅貨を入れていく。

銅貨が100枚だからすぐにいっぱいになってしまったけれど、そんなことはどうでもいい。

いっぱいになった貯金箱を大切に箱に入れてクローゼットにしまった。

そしてニマニマしながら今日のことを思い出して足をバタバタした。


冒険者、ハマっちゃいそうだな。


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