アーサー魔導師目線/事件後
大人が読むような難しい本が並ぶ書斎。そこで昨日とんでもない事が起きた。
話はさかのぼる。
私はフルブラント・A・ペルデリア・アーサーだ。
上位貴族の次男で、長男が後を継ぐ話でまとまっている。
しかし私は幼い頃から魔法適正があり、物心がつく頃には魔法学院に入学し、魔法の基礎を学んできた。
学院卒業後、上位学院と呼ばれる場所に入学、応用から実用までの魔法を学んだ。
さらにその先魔導団と呼ばれる王国組織の新人として入団。先輩の魔導師方にご指導をしてもらい、その魔導団の1位2位を争うほどにまで上り詰めた。
特にトラウマもなかったのでオーロラとまではいかないが11属性を使いこなすことができるため、極めて貴重な存在であることは自覚している。
そんな私はある時、前国王陛下に用があり城を訪れた。
私が手短に用を済ませ、前国王陛下の返事があるまで待機せよとの命令だったので中庭に出た。
そこでフルブラント・S・セレシアン・アルフレッドという男にあったのだ。
その時の私は彼が王子であるとは思わなかった。
私は常識知らずで、いつも魔法団か学院に篭ったり屋敷の自室で研究していた。
だからそこにいる男が王子だとはおもわず、この城に私と同じようにやってきた貴族の一人だと思っていた。
私の貴族は上位、Aと付く程だから上に出るものの方が少ない。
だから私は彼に気さくに話しかけたのだ。
これが彼と私の接点だった。
その後割愛するが、王子だと知り、失礼を詫び、それでも友情はあり、今に至る。
それから1年経たず前国王陛下が退位なされ、アルフレッドは現在国王陛下になった。
アルフレッドはその時すでに結婚しており、子供も二人いて、もう一人がお腹の中にいた。
間もなくして三人目の子供が生まれたと報告がきた。
ちょうどその時私は前国王陛下の任務の真っ只中で、どんなに早くてもあと2年はかかると返事をして任務を遂行した。
任務は龍の山の調査。
龍の山はその名の通り龍が住むとされていて、非常に危険な山だ。
そこから貴龍骨を採取できないかとの相談があり、調査をしていた。
実際龍はおらず、あっさり貴龍骨の採掘を始めたのだが…
2年後ようやく首都ハウトディアを訪れ、久々に見た友人が見ないうちに陛下としての威厳を持っていたので緊張した。
見せてもらった第3皇子はレア・ドミニクという名前だった。
2歳になった彼女はとても大人しく、長男であるクリス殿下や次男であるエメスト殿下よりも大人びて見えた。
抱きかかえてみると、内なる力が見えた。
魔法適正があるとすぐにわかった。
それも、とても強大で…私などを超えてしまうようなほどだ。
そして冒頭に話したことに戻るのだが、難しい本が並ぶ書斎でクリス殿下とエメスト殿下の二人と共にレア・ドミニク殿下も本を読んでいたところ、デルダメイド長に見つかったそうだ。
その際、本来ならいたはずのレア・ドミニク殿下も叱られるはずだったのだが、彼はすでにそこにいなかったそうだ。
夕飯前にでもなれば出てくると思っていた両殿下は、結局現れなかったレア・ドミニク殿下を心配し、アルフレッドに相談したのだった。
早急にメイドや執事達が捜索にあたり、自分も焦るアルフレッドを思い捜索した。
隅々まで探したのにもかかわらず見つからない。
相手は2歳児、一人で城の外に出ていけるはずがないのだからと、拉致されたのではないかと疑い始めた。
そうなるといよいよ騎士も動き出した。
こうなってきた頃、私はふとレア・ドミニク殿下の落ち着き払ったあの姿を思い出したのだ。
もしやと思いもう一度書斎を訪れ、無属性の探知を使った。
徐々に力を強めていくと書斎の隅に違和感を覚え、見に行くと明らかに空間のねじ曲がった場所が存在した。
考察はこうだ、レア・ドミニク殿下は魔法適正のある落ち着いた2歳児だ、デルダメイド長の目を免れるために自身を透明化させたのではないだろうか…と。
デルダメイド長は私でも目をそらすほどに怖い人だ。
睨まれたら何か悪いことでもしただろうかと考え込んでもおかしくない。
レア・ドミニク殿下が落ち着いているとはいえ、まだ2歳児。
きっと恐怖によるパニックでも起こして透明になった可能性があった。
そのねじ曲がったそれは確実にレア・ドミニク殿下だった。
それは空間の歪みの小ささもあるが、私の魔法でこの程度までしか見破れないという底知れない強さも決め手だった。
歪みを抱きかかえて応接室に向かう。
そこにはアルフレッドとルミニア王妃が互いに励まし合い、それでも顔を青くしていらっしゃった。
なので、私が見つかったと言った時驚いてすぐさま会わせろとおっしゃった。
最初は誰もこの歪みが見えなかったが、私が魔力を高め心を鎮めていくうちに見えるようになったので喜びをあらわにしていた。
相手の魔法が解けるのと同時にぼうっと集中力の切れたような感覚に襲われた。
久しいほど体験していなかった魔力切れだった。
だというのにレア・ドミニク殿下はまだ半分も使っていない様で、私を超えるものなど居ないとつい最近まで言われていたことが皮肉の様にも思えてくる。
拉致ではなかった事は良かったが、こういった事がもうないわけではない。
どこかでまた透明になってしまったら、見つけられるのは私ぐらいだろう。
アルフレッドはその件に関してやはり不安だったらしく、私を王室の魔術師兼教師として迎え入れると言い、半ば強制的にこの城に住む事となった。
私に課せられた任務はレア・ドミニク殿下のお守りだった。
3歳を過ぎたら魔術の稽古も私がする事になった。
レア・ドミニク殿下は非常に好奇心が旺盛で、私の昔話よりも勉強の方に興味があるらしく、昨日の書斎にどうしても行きたい様だった。
アルフレッドにその事の許可を得に行くと、彼も昔から殿下の落ち着き様には驚いている話を聞かせてくれた。
書斎については、私がしっかりと見ている事を条件に許可された。
それを知ったレア・ドミニク殿下はとても嬉しそうにしていた。
クリス殿下とエメスト殿下も書斎に入り込んできたので、この二人もしっかりと見ておく事にした。
クリス殿下とエメスト殿下は魔法の冒険ものが好きらしく、リッシュの話を読んでは笑っていた。
もちろん私の冒険話も急かされ話した。
レア・ドミニク殿下はというと、最初は神話を読んでいたと思えば、地図と経済の本を読み始めていた。
私ですら欠伸の出る本をとても興味津々に読んでいる。
読む…というよりは2歳児なので眺めているの方が正しいのだろうか。
「面白いですか?」
「うん」
貴龍骨が特産品だと書かれているページを眺めているレア・ドミニク殿下。
指でなぞりながらぶつぶつと独り言をしながら楽しそうにしていた。
つくづく変に落ち着いている子だと思う。
あのアルフレッドの子とは思えないほどだ。
「レア・ドミニク殿下は面白いですね」
「そう?」
もう少し子供らしくしていても構わないだろうにと不安に思い、失礼だが頭を撫でた。
撫でられた事を喜ぶクリス殿下やエメスト殿下とは違い、何か不安げな表情をし、一人で考え込んでいた。
それも途中で考えるのをやめたらしく、また地図と経済の本に没頭していた。
しばらくすると夕食だと呼ばれ、三人を連れて食卓に出向き、終われば風呂に殿下達が連れて行かれ、でてきたレア・ドミニク殿下を寝かしつけると自分も疲れ果て眠った。




