事件後
目をさますといつもの私のベットで、昨日書斎に居た気がして不思議に思い首をかしげた。
ベットから起き上がるとアーサーさんが近くの大人用ベットで寝ており、さらに不思議で首をかしげた。
しばらくしているとデルダさんがやってきて、昨日のことを叱り、心配したのだと抱きしめられた。
さらにルミニア母様がやってきて泣きながら抱きしめた。
そのあたりでアーサーさんが眠そうにしながら起きて、ルミニア母様が疲れているのだからと遠慮せずに寝てくれと寝かしつけていた。
寝かしつけられたアーサーさんはなんだか恥ずかしそうでもあった。
母様が出て行き、部屋がアーサーさんと私だけになると、アーサーさんはさっさとベットから起き上がり身支度を整えた。
アーサーさんは今まで着ていたしっかりした服ではなく、ラフでシンプルな服装だった。
普段はやはりこっちの衣服なのか着慣れているようだった。
私もついでにアーサーさんが着替えさせ、髪を整え、抱きかかえられた。
少し疲れた表情のアーサーさんは、そのままアルフレッド父様のところに向かい、私を父様に抱かせた。
この日からアーサーさんが私が行く方向について回り、大人用の書斎には入れてもらえなかったが、中庭で小さめの魔法を見せてくれた。他にもアーサーさんの人生で面白かったことを話してくれた。
書斎で本を読みたいが、これはお預けらしい。
しかし、アーサーさんの経験談は為になるので今のうちにしっかりと聞いておくことにする。
書斎にいけないとなると兄様達が帰ってくるまでは暇なので、アーサーさんと追いかけっこをしたり魔法の話をしたりして時間を潰した。
兄様達が帰って来たら、兄様二人に剣術や格闘技で遊んでもらう。
もちろん完全に手を抜いてくれているし、遊び程度なので本気でもない。
クリス兄様が木の棒で構えを教えてくれたり、エメスト兄様が軽く戦ってくれたりして体を動かす。
一人木の棒を振って構えを復習していると、飽きてしまった兄様達がアーサーさんに冒険話をせがんで聞いていた。
もしや今がチャンスかと思い抜け出して書斎に向かうと、すでにアーサーさんがいて捕まってしまった。
いつ抜かされたのかもわからないが、アーサーさんを欺くのは相当難しいらしい。
「どうしても書斎に行きたいのか?」
「…うん」
本当は書斎は入ってはいけないのだが、どうしてもどうしてもというとアーサーさんが父様に許可をもらってきた。
ただし、アーサーさんと一緒でなければ入れない。
兄様達もアーサーさんと一緒に書斎に入り、兄様二人はちょっとグロテスクなリッシュシリーズを読んでいた。
私はこの世界の歴史の本を手に取り、なんとなく眺めているだけを装い読んでいた。
アーサーさんはそんな三人の子供を注意深く見守り、わからないことを聞かれては答えていた。
この世界の歴史とは名ばかりの神話だが、この神話が元にして国が成り立っているらしいので為にはなるだろう。
この世界には11の精霊と1の神がいるらしい。11の精霊の属性は魔法の属性と同じそうで、無の精霊というものが存在するのかと考えるとなんだか不思議な感覚もする。
1の神は精霊の生みの親であり、この世界の生みの親でもあるそうだ。
11の精霊の名前はそれぞれあり、信じる精霊によって苗字が変わるそうだ。
フルブラント・S・セレシアンのセレシアンが光の精霊を意味する言葉らしく、フルブラント王国の光の精霊を信じる者という意味があるのはわかった。
苗字に着くSとかAは別のページによれば人間の質…つまり血筋、貴族階級のことらしく、Sが一番上で王家しかつけられないのだとか。
ちなみにレアという名前については、この世界に存在する五匹の神龍の一匹であるレアテルオスから取られており、五匹の神龍の中で最も勇敢で、最も正義感のある龍の名前らしい。載っていた絵を見る限りだと獅子のようにも見えなくはない。
ドミニクは神の子や奇跡の子の意味なので”フルブラント王国の王族で光の精霊を信じ、五匹の神龍のうち獅子の名を持ち神に愛さる者”というかなり強い名前だった。
名前負けしないかが心配になる。
この感じだと、アーサーさんは”フルブラント王国の上位貴族で闇の精霊を信じ、夜明けを導く者”となる。アーサーは結局”朝”という意味だと知り、なんだか拍子抜けした。
そのままじゃないか。
本をそのまま読んでいたが、めぼしい情報はそこまで見当たらず、別の本に手を伸ばした。
現在ある王国の名前とその特産品が書かれている地図帳のような本を手に取り、開く。
生前は日本地図を見て都道府県と県庁所在地と特産品を暗記するなんてことをした。
覚えないとテストで良い点数がとれないこともあり、必死こいた思い出がある。
ここではそんな事はないだろうけれど、地図は比較的に覚えたくなる。
地の利はどんな時でも必要だからだ。
自国であるフルブラント王国は首都ハウトディアとし、特産品は貴龍骨らしい。
貴龍骨とは、はるか昔に死んだ龍が上から被さった土やら土砂やらで潰され、大地から来る熱で焼き溶かされ、長い年月をかけて固まり、地震や噴火によって地表付近に出てくる貴重な素材の事らしい。
龍の素材そのものがとても高価で貴重だというのに、それ以上の素材であり、龍の骨のように硬い事から貴龍骨と呼ばれているそうだ。
その貴龍骨が特産品という事は、このフルブラント王国は地震が頻繁に起きていて火山活動も活発だったという事だ。
地図を見ると確かに山が多い。
貴龍骨はかなりの財産らしく、どの王国も欲しがるものだ。
しかし安く提供するのでは何かあった時に自国を守れなくなるのでとても高価に設定し異国に売り渡している。
この国の騎士は他の国とやりあう時に有利になれるよう、王国から貴龍骨で作られた鎧と剣が支給されている。
なんとも太っ腹な王国だ。
貴龍骨の他にも果物やキノコ、はちみつ、野菜なども特産品らしい。
さらに、フルブラント王国の国民は皆手先が器用らしく、細かな装飾品や衣服のクオリティーが高いそうだ。
「面白いですか?」
「うん」
知らない事が知れて楽しい、脳が若いからなのか覚えるのも早い。
生前では3歳から記憶が定着し始めるらしいとは聞いていたが、それはあくまで転生していない人のことだ。
私は転生者なのだから、記憶の定着は関係ない…はずだ。
でも、今のうちから鍛えて今のうちから学んでおくのだ。
小さくつぶやきながら指でなぞり覚える。
「レア・ドミニク殿下は面白いですね」
「そう?」
なぜか優しく頭を撫でられ、そこまでおもしろい事をしているだろうかと首をかしげた。
確かに2歳児にしては変な行動ばかりなのはわかるけれど、それはおもしろいのだろうか。
うーんと頭をひねってみたが、そんな事をしていても意味がないので本を読む事に没頭した。
夕飯だとメイドさんに呼ばれ、四人で部屋に向かう。
その後はお風呂に入れられて布団に寝かされ、しばらくして眠りについたのだった。




