第1話『金と菌』
これはもう小学生の頃の話だ。微かな記憶でしかないがその頃の僕は何処に行くときでもゲームホーイアドバンスってゲーム機を持って行くという今で言うゲーマーって奴だった。そんな奴だったからか僕には友達が少なかった。
あまり親しくない人と喋ろうとしたら言葉の頭に、「あ....」、「えっと....」なんて言葉が入ってしまい、喋ると顔が茹でダコみたいになる。だからか僕はその頃、タコって呼ばれてたな。
けどさ、
友達がいなかったわけでもなかった。ぼっちってわけでもないな。僕が学校に行くと何時も同じ数少ない友達と顔を合わせる。
山田太樹
前橋咲
この2人は僕が幼稚園の頃から付き合いがある幼馴染だった。いつでも何するときでも一緒であった。
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「おい、光ぃい!!給食食い終わった?!サッカー早くやろうぜ!!」
あぁ、このうるさい怒鳴り立てた声。太樹だ。毎日4時間目が終わって給食が始まると分もただずに完食してしまう。僕は、もしも給食オリンピックなんてあったら多分彼が優勝するだろうと思っているほどだ。
「ちょっと待ってよ。まだ煮物食べ終ってないんだからさ。」と僕が言うとカウンターの様に言葉が飛んでくる。言葉がナイフになってズサッズサッっと体を突き刺す様だ。
「お前食べるの遅いんだよ!女子かよ!?先にみんなでボール取ってくるから食い終ったらこいよ!!行こうぜ春樹!!」
「おう!」
今日も災難だったな。
因みに言うと僕と違って太樹は友達が多い。太樹はスポーツが出来てかっこいい。僕と太樹の存在価値を比べたら多分、金と菌になるだろうと僕は思っている。もちろん僕は後者のきんだ。
とりあえず早く食べ終わるか....
給食を食べ終ったから友達付き合いに行こうとしたのだが僕は足を止めた。
「時間...」
学校の時計を見ると残りの休み時間は後10分ほどになっていたからだ。流石に今からグラウンドに出て遊ぶとなってもなぁ。
僕は教室のいつもの机の上で寝たふりをすることにした。
なんで寝たフリをするかって?周りを見渡すと女子が右往左往に駄弁っているからだよ。
もし絡まれなどしたら。そう考えながらフリを続けていた。
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「なんでまたこなかったんだよぉ。」
あぁ、やっぱりか。こなかったから言われると思っていた。
「ごめんね。」
因みに僕がこう謝るのは今日が初めてではなく多々あることだ。太樹には何回謝ったことか。と思えば劣等感で押しつぶされそうになる。
キンコーンカンコーン
チャイムの予鈴だ。この音が鳴れば僕を攻め立てる太樹はいなくなった。僕は小さくガッツポーズをした。
「次の授業なにー?」
「次は道徳だよ」
チャイムの音とともに次の授業は何かを誰かが聞く声がした。
次は道徳か。