悪夢2
朝でもなく昼でもない奇妙な空気。
見知った道路を歩いていると、誰かが近づいてきた。
白いヒゲを生やしたおじいちゃんだ。
小奇麗とは言えないロングコートを着ている。
鎖の先に鉄球が付いたものを振り回している。
これで人間の首を絞めたり、頭蓋を砕こうとしてるのね。
「はっ……!」
キィン……キィン……
別の方向からはかぎ爪の金属音がする。
某映画のパロかもしれないが、今の私には恐怖の方が勝った。
逃げなくちゃ、と思うと同時に家族に電話をしていた。
繋がった。早くどうにかして伝えないと。
「あ、お母さん!」
「どうしたの、奈桜」
「殺人鬼が近くをうろついてるの。わたし、いま逃げてる最中で」
いまこのとき、視点が切り替わる――
「あぁ、そういえばうちにもお客さんが来てるのよ」
「ダメだよっ。家には入れないで! きっとそいつ、殺人者だよ!」
「あら、お姉ちゃんと遊んでるわ。そう、良かったわね。ジュンも、控えめにしなさいよ」
「やだやだやだ! おかーさん、お願い、みんなを、逃がしてよ」
「どうして?」
奈桜が殺人者だと騒いでるアレは、姿かたちを変えてまで我が家に侵入してきたのだ。それならば、我が家でおもてなしをするのは道理である。
「おかーさ……」
「ジュンもさやかも、控えめにしなさいって言ってるのに。あらあら、どんどん削れていってるわね」
顔の造形がおでんの具の三角になっている。
他にもどんどん削られて、人間ではなくなった。
「ん~、反応が無くなったわ。じゃぁ、奈桜、早く帰ってきなさいよ」
「へ……?」
「武器持ってる割には大したことない殺人者だったわね。もう一人は~、ダメだわ、失格」
「お母さん……」
「奈桜、家の門限時間あと30分よ。早く帰ってこないとどうなるかわかってるわね?」
「あぁっ! そうだった、教えてくれてありがと。おかーさん!」
「どういたしまして」
殺人者には殺人家族で迎え撃ちましょう。
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雰囲気からして自分の部屋だと分かる畳部屋。
根拠も何もないけれど、納得している感覚だけはあった。そして唐突に始まる壱ページ。
知らない男の子が不法侵入していた。
どこから入ったのか問い詰める。
窓からと言われても、割られた痕跡がない。従って、窓の鍵が開いてたのだろうと推測する。
犬もいたけど種類はわからない。でも毛並みがふさふさ。顔をうずめると凄く気持ちいいのだ。その子はコタツの中へ潜って隠れる。また出てきたときは毛並みが物凄く綺麗だった。
チンパンジーらしき子もいた。真っ黒い。
犬もチンパンジーも大人しい。どちらも親しみが湧いてきた。
そこで目が覚める。
昔飼ってた犬が、あんな風に可愛く輪廻転生してくれていたら……どこに生まれ変わっても可愛がってもらえるだろう。夢だけに、そうあってほしいと願わずにはいられない。
そんな感じで、5月22日の白昼夢は幕を閉じた。
end
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いつもはゾンビに追いかけられてる悪夢ですが、今回は少し違ってました。筋も通ってないし無茶苦茶です(爆)