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転生したってわたしはわたし。  作者: なの
道が見えなくなっちゃったんですよね。
49/60

挿話.天使との約束(side カイ)

大変お待たせいたしました。


大量の改稿をしています。書ききれないので大まかな点だけ簡単に載せさせていただきます。


・ストラ初登場時がラルフとの初遭遇→ストラは学園に通う12歳まで侯爵家と交流があった。

・リリィママの独白、大幅改稿。

・ラルフシスコン閑話もストラとの出会い変更したため大幅改稿。


これ以外にも細かい改稿をいっぱいしてあります。

読んでいくとあれ、前と言ってること違くない?ってことも出てくると思います。

気づく限りの誤字脱字も直しましたので時間が空きすぎて話も覚えてない方もいらっしゃると思いますし、丁度いい機会ということでこの話を読む前に手間でなければ読み直しいかがでしょうか。


めんどうな方は基本的なところや話の大筋は変わっておりませんので、そのまま読み進めていただければと思います。



ではお待たせいたしました、ここから更新分となります。↓↓↓





「私今とっても幸せなのよ。

 ふふ、お父様もまさか侯爵家から妻にと打診されるとは思わなかったって驚いていたわ。


 あの時に今が一番幸せな瞬間だと思ったのに、幸せな時間が1分1秒と増えていくのよ。

 もうあれから倍以上の年月生きているわね。


 ねぇ……カイ。

 私たちもいつ死ぬか分からないけれど……その時のためにこれだけは約束しましょう?

 ーー」







 -------------------------------------




 周囲に蔓延する血の臭いと燃える臭い。

 それは壊滅した村の住人なのか、俺たちが殺した魔物なのか、それとも、俺たちなのか。




 はぁ……はぁ……


「っ、ヘイズ! リードラ! 大丈夫か!?」


「ちっ……ヘイズはもうダメだ!」


「くそっ……!」


 あと1年で成人という17の年、大規模魔物侵攻が起こった。

 何百年に一度起きるこの大規模魔物侵攻……『今回は天才魔導士がいるから大丈夫だ!』とあんだけ持て囃されてきたのになんだこの体たらくはっ……!


 侯爵家に生まれて民のためにと学んできた。

 使える魔法が発覚してからは国のため民のため陛下のためにと学んできた。

 大魔導士の再来かと騒がれたが俺はそこまでの力はなかった。

 普通の人間よりも倍以上の魔法を操ることは出来ても、偉大なる大魔導士のようにその魔法を同時に操ることは出来なかった。

 魔力操作は得意だが魔力量はかの大魔導士とは比べものにならないくらいで少し人より多いだけだ。


「仲間1人救うことができなくて、何が天才魔導士だっ……!」


 血の味が滲むほど歯に力がはいる。

 あたりは守れなかった村人や共にこの場に来た他の兵士たちの死体が転がっている。


 リードラとヘイズはリシュール領の若者で小さい頃から家を抜け出しては遊んでいた良き友人だ。

 学園に行ってからは会う回数が減ってしまっていたが2人とも青龍院に通って今は侯爵家お抱え兵士だった。

 兵士ではあるが、大切な友人で……死んでほしくなど、なかったのに……!


「仕方ないだろ! ヘイズはさっきの水の矢で一瞬だった……!

 むしろ俺だってお前がいなかったら軽く2.3回は死んでいる!」


「あっは、麗しき友情ってやつですかぁ〜?

 キミ達もすぐにさっきのオトモダチの後を終えるからさ〜、そっちで再開を喜んでねぇ〜。

 ボク人探ししていて今急いでいるんですよねぇ〜。」


 喋りながらも水魔法を放ってくる少年(・・)に対抗するようにその水を凍らせて地面に落とす。

 同時に襲ってくる狼型の魔物3匹はリードラが相手をしてくれているが流石のリードラでも3匹同時は辛いらしく倒し切ることができないでいる。


「も〜急いでるんだって〜。

 あ〜そうそう、黒髪長髪のボクの同族見なかった〜? 探してるんだよねぇ〜。

 ま〜見てたらもう死んでるかぁ〜。いやでも紛れ込んで生活してるっぽいからなぁ〜?

 どうやってこの特徴的な瞳を隠しているのかぁ〜。」


 驚きに目が見開く。

 この魔族の少年(・・・・・)は今なんと言った!?

 人に紛れ込んで魔族が生活しているだと……!?

 何がどうなったらそんなことが……!


「あ、キミ達には悪いことばかりではないですよ〜?

 彼は裏切り者だからね、孕んだ人の女を連れて魔族領から逃げたんですよ〜。

 目立つ行いをしたらボクたちに見つかるからねぇ〜……騒ぎは起こしてないと思うよぉ〜?

 人からも魔族からもつまみ出されてしまう子供を産ませようとするなんて、罪深い人だよねぇ〜。」


 どういうことだ……?

 連れ去られた魔族と遭遇すると男は殺されて女が連れ去られるのは分かっているが女はやはり連れてかれると犯されているのか……。

 そして女を連れて逃げた……? 子供……?

 くそっ……攻撃が止まないから考えてる余裕がないっ!


「あはっ、キミにそんなに考え事をしている余裕があるんですかぁ〜?

 ほらほら、オトモダチも危ないよぉ〜?」


 慌ててリードラの方を見るといつの間にか狼型の魔物の他に猿型の魔物が2匹増えていて押され始めている。


「リードラ!」


「あっは、よそ見しちゃうなんて余〜裕〜。」


「余裕ぶっこいてるやつにっ、言われてもなっ!」


 5つの氷柱のような水の矢が飛んで来れば全部巻き込むようにヤツに向けて火の龍を放つ。

 すると龍を包み込むように波のような水が返ってくるのを凍らせて焔火を使って蒸発させる。

 自分の額からは脂汗が浮いているのが分かるが相手は鼻歌でも歌いそうなほど軽やかに返してくる。

 急いでるとか言ってるくせにコイツは俺で遊んでいる。


「あはっ、ほらほら〜頑張らないとオトモダチがまた減っちゃうよぉ〜?」


 そういいつつもさっきまで水魔法しか使ってこなかったヤツは今度は水と氷結魔法を合わせて放ってくる。

 火魔法を地面に放ち土を跳ねあげさせ、ヤツと自分の間に大きな穴を開ける。

 次の瞬間には焔火魔法を使って氷結と水を蒸発させて間に合わない分は開けた穴に流れ込むようにする。


「あはっ! キミ面白いねぇ!

 何種類あるんですかねぇ〜? ボクより使える魔法多いじゃないですかぁ〜。

 妬けちゃうな〜。あはっ妬けちゃう妬けちゃう、うん、焼けちゃ〜う! あはははっ」


 狂ったように踊るように跳ねながら膨大な量の魔法を練り始める。

 まずい、まずいまずい。

 どう考えても直接当たったらただではすまない魔力の量。

 きっとこの魔族は水と氷結魔法の使い手だろうからくるのは氷結だとは思うが相殺できるかわからないほどの魔法を練り上げているのが肌でわかる。

 辛うじて避けることができたとしてもリードラにはそんな余裕がないように思える。


「くそっ、リードラ! 逃げれるか!?」


「ぐっ、ゲホッゲホッ! はぁぁ!?

 おれ、に! 今そんなっ、余裕があ、ると! 思ってたら! 大間違いだコラァ! ウラァッ!」


「あっは! オトモダチ怒ってるよぉ〜あは。

 逃げないの〜? ボク今氷結魔法練ってるよ〜? さっきので余裕がなかったキミの焔火魔法で相殺できるかなぁ〜? あはは。」


 キレながらも返事をしてきたがリードラに余裕がありそうには思えない。

 どうする、逃げるか?


 ……リードラを見捨てて?

 ありえない! 俺はもう友人にいなくなってほしくはない……!

 集中して焔火魔法を練る。

 俺の一番得意な魔法はなんだ! 焔火だろうっ!

 少しでも範囲が広くなるように、ヤツの氷結で貫かれてしまうものが少しでも少なくなるように。


「ばっかお前! 時期領主だろう!?

 俺はいいから逃げろよ! 自分を大事にしろよ!

 俺がどうにか食い止めるから!

 あの魔族だって魔法を練ってる間はそこまで素早い動きは出来ないはずだから逃げるのは今だ!」


「こ、とわる!

 俺はもう、大事な友人は失いたくない!」


「ヒュ〜、やっぱり麗しき友情〜。」


「テメェも出来ねぇ口笛吹いてるんじゃねぇー!」


「あっは、八つ当たり〜?」


 なんなんだこいつら仲良しかよ!


 どんどんでかく、数を増やしていく氷柱に自分の顔が青ざめていくのが分かる。

 しかしそんなことを気にしていてもどうにもならないから負けじと炎を広く、強く作り上げていく。

 その間にもリードラは狼型の魔物を一匹、二匹と倒していくがすばしっこく動き回る魔物を1人で倒すのは困難なようで手間取っている。


「よぉ〜し、いっくぞ〜!」


 気の抜けるような声で気の抜けない大量の魔力で練り上げた大量の氷柱を投げてくる。

 明らかに負けているが仕方ない焔火魔法をそれにぶつけるように放つ。


 2/3は蒸発して消えたように思えるが残りは明確な殺意を持って、鋭利な氷の塊が飛んでくる。

 少しでも軽減できるように火の塊を練っては当てていくがまだ当たったらただではすまない量が飛んできている。

 ちらりとリードラを見てみると焦った顔をしながらも猿型2匹に張り付かれていて逃げることすらできない。


 魔族を無視してリードラの援護に行くか……?

 しかしそんなことをしたら自由になった魔族に後ろから……!


 考えてもどうにも出来なくて、時間は1秒ずつどんどん減っていき遠かったはずの氷柱との距離も縮まって行く。

 焦燥が体を駆け巡っているその時





 美しい天使が現れた。






 いつから狙っていたのか魔族の死角から気配を殺して近付いてきていた天使は後ろで三つ編みにした黒い長髪を蛇のようにくねらせながら魔族の心臓を貫く。


「えっ、あ、は……あっれぇ〜?

 キミいつから、グハッいたのかなぁ〜……さすがに心臓一刺しは魔族でも無理だよ〜……気付かなかったなぁ〜……隊長(・・)を殺すのはゲホッゲホッ、ボクがやりたかった、んだけど……なぁ……あは。」


 倒れて動かなくなった魔族と連動するように氷柱が霧散する。

 あと少し遅れていたら俺もリードラも傷を負っていたことは間違いないだろう。生きているかも、分からないが。


 キラキラと輝く一瞬で消えてしまった氷のパウダーの向こうでは漆黒の天使が貫いた体勢のままだった身体を起き上がらせ、俯いていた顔をあげる。


 目があった瞬間微笑まれ全身がカッと熱くなり顔にも熱が集まっていく。


 夜の闇よりも深いその漆黒の髪は後ろで三つ編みに結ばれているにもかかわらず触り心地は絹のようであろうとわかる美しさ。

 頭上には天使の輪と言われる光が映し出されていて『ああ、本当の天使の輪はコレか』と思った。


 少し幼さの残る顔つきをしているが頬には魔族のであろう赤い血が飛んでいて妙な色気を感じる。

 ふんわりとした微笑を浮かべながら近づいて来る足取りは、当たりが血塗れで彼女が着ているのはガチャガチャと音が鳴る簡易的ではあるが騎士の鎧のはずなのにドレスのようで、舞踏会場でも歩いているような優雅さだった。


「御機嫌よう、こんな格好で失礼いたします。

 ディオナ男爵の娘、リリエラ・ディオナと申します。

 危険が迫っていたとはいえあなた様の手柄を盗ってしまったことをお詫び申し上げます。」


 声までも美しい。

 ディオナ男爵の娘ということは、人間、なのか。

 貴族の娘が何故こんなところに、とか、何故剣を、と一瞬思ったがすぐに理由に思い至る。


「ディオナ男爵……前騎士団長の娘か。

 俺はカイザント・リシュールだ。


 助かった、手柄などよりも命の方が大切だ。ありがとう。」


 礼を言うと軽く目を瞠るも優雅に微笑む。


「そう言っていただけるとありがたく思います。

 はい、ディオナ前騎士団長の娘でございます。

 リシュール様とは知らなかったとはいえ、身分不相応に話しかけてしまい申し訳御座いません。」


「良い、そのような決まりこのような場所では関係がないだろう。」


 笑顔を向ければ頬を染めながらもはにかんだ年相応な可愛らしい笑顔を向けてくれるリリエラ嬢に手を伸ばしそうになる。

 この笑顔が見れるならば何でもしてしまいそうだ。


「おいっ! お前ら!

 俺のこと忘れてイチャイチャしてんじゃねー! 助けろー!」


 その時魔族を倒してすっかり忘れていたが、魔物とボロボロになりながらも戦っているリードラを慌てて助けにいった。


 助太刀いたします、と戦闘に入ったリリエラ嬢は領内で2番手のリードラよりも明らかに強く、魔族に対しても死角からじゃなくても1:1で充分勝てるのではないかと思えるほどだった。



 その後も他の場所に3人で移動して生き残っている人々を癒し、守り進んでいく。

 気づいたら『焔の癒し手』という二つ名がつけられていて、リリエラ嬢にも『黒蝶』という二つ名がついていた。

 確かに蝶のように舞っているように見えるが、どうしても俺には天使に見えてしまい……

 洗脳のように『黒の天使』という二つ名を流して定着させた。

 俺としては艶やかな髪の色で黒としたのだが、何故か暗黒微笑という裏の意味もついてしまった。


 まぁ、確かに血を浴びても微笑む様はたしかにゾクッとはするかもしれないな。







 -------------------------------------




「あれから20年か……月日が経つのは早かったな……リリエラ、キミは俺の友を守ってくれただけではなく大切な宝をいくつもくれた。

 思い出も、子供も……そしてキミ自身も。


 あぁ、大丈夫だよ……キミが守っているんだ……明日からは、キミとの約束を守るから……今、だけは……2人きりだ……涙が溢れてしまうのを許してくれ……。」








 ーー私今とっても幸せなのよ。

 ふふ、お父様もまさか侯爵家から妻にと打診されるとは思わなかったって驚いていたわ。


 あの時に今が一番幸せな瞬間だと思ったのに、幸せな時間が1分1秒と増えていくのよ。

 もう倍以上の年月生きているわね。


 ねぇ……カイ。

 私たちもいつ死ぬか分からないけれど……その時のためにこれだけは約束しましょう?




 最期は笑顔でお別れしましょう。そして残された方が私たちの宝を守るのよ。

 だから絶対に私たちは一緒に死んだらダメだからね。

 貴方が死んでしまっても、私は笑顔で生きるわ。

 だから、私が死んでしまっても、貴方は笑顔で生きてね。ーー





 さようなら、ありがとう、俺の愛しの天使……。



 リリエラの最期の顔は苦しそうなものではなく、俺が一目惚れをした、あの時と同じ微笑みを浮かべていた。





大変お待たせいたしました!

ほんっとうに!ほんっとうに長い休載という形になってしまって申し訳ないです……。

今回カイザント……パパのお話となりましたが、前回更新後執筆していたのはストラの話でした。

書いては消してを繰り返し、仕事中に「あー、こういうのどうかな……」とか考えたりもしていたのですが、何故か全く考えてなかったパパの話をパッと思いついて書いてみたら、半日で書けました。

え、この数ヶ月なんだったん?ってなりましたよ、まじで。

初めて書くパパ視点、ほぼ過去編ですので本編ではなく挿話として入れてみました。

そしたら勢いのママ次の話も書くことが出来たので感動で今は打ち震えております。これから手直しなのでどんだけ勢いで書いたか確認するのが怖いですがw

でもパパのおかげで物語がようやく動くよ、ありがとう!


さてさて、そんな感じで作者の重いお尻……もとい……重い腰が上がりましたが、更新頻度は少しの間減らした状況でいようと思います。

いつ止まるか分からないので少し執筆貯金がほしいなと思いまして……。

待っていてもらったのにさらに待たせて申し訳ないですが……ここまで待ってくれた人たちならきっと大丈夫だよね、とか安直なこと思ってますごめんなさい。


いつも閲覧ありがとうございます。

改めましてこれからもよろしくお願いします。


次回は6月23日午前9時に更新いたします。

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