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転生したってわたしはわたし。  作者: なの
ファンタジーっていいですよね
4/60

4.ある日、森の中、小人さんに出会った。

 こんにちは、ユイ7歳になりました。


 今日はメイドのアンジェリカことアンジーと一緒に近所のお散歩をしていたのですが、気付いたらアンジーがいなくなってました。

 アンジーはメイド長であるハイジェルーーハイジーーさんの娘です。


 あれぇ?

 ハイジさんがアンジーにお使いを頼んでたから一緒に行くと駄々をこねて連れてってもらって、護衛に騎士さんもつけてもらったはずなんだけど……


 ちょっと人混みに紛れてしまったみたいで露天商の魔導具見てたら皆いなくなっちゃいました……。


 困りましたね。

 とりあえず万が一はぐれたら通り道にあった噴水広場にいくって約束をしたので、そっちに行きましょう!

 もう、みんな迷子になっちゃって!

 え? わたしが迷子? ソンナコトナイデスヨ?







 そして歩き出したわたしの少し遠くの後ろの方では、噴き出した噴水の水で出来た虹がキラキラと光っていたのですが、それに気付くことはありませんでした。













 そうでした、わたしは方向音痴なのでした。(2回目


 気付いたら森の中です。どうしてこうなった。

 アンジーとお買い物してたら森の中にいました。

 どうしよう、ハイジさんにアンジーが怒られちゃう! 早く戻らなきゃっ……


 と思っていたはずなのに何故森が深くなっているのでしょう、周りには小人みたいな小さい人たち。

 某林檎姫に出てきた小人みたいな髭ズラではなく、小学生くらいの子供みたいな少し耳の尖った可愛い小人です。

 林檎姫の方はきっとドワーフですよね……今目の前にいるのはホビットかな……?

 可愛いけれど……武装して囲まれちゃってます。


 手にはみんな短剣を持ってとっても警戒態勢です。

 まさか人肉ウメェーとかされちゃうのでしょうか、困ります、わたしは美味しくないですよ。


「お主は何者だ。応えによっては生きてここから帰すことはできぬぞ。」


 子供のような見た目で声が落ち着いた大人、年配の方のようなホビットさん(仮)がスッと前に出てきました。


「えっと……ユイです。リシュール侯爵家第4子……ユイリエール・リシュールです。

 街でメイドと護衛と一緒に買い物していたはずなのですが、迷ってしまい気付いたらこの森に入り込んでしまっていました。」



 はい、実は我が家は侯爵家でした。

 個人的には伯爵って漢字がかっこよくて好きだったので伯爵あたりがよかったのですが、もっと偉かったみたいで聞いたときはびっくりしました。


 しかもアイラお姉様は自由に森ーーこの森ではないーーに旅立っていってはお父様に怒られてるし、わたしの知ってる侯爵家……というか貴族ってこんなに自由じゃなかったはずなんですけどね?



「侯爵家の……?」

「街ではぐれて迷った……?

 それでこんな所まで来るなど……嘘をついているのではないのか?」

「どんだけ方向音痴ならそんな迷い方をするのだ……。」

「我らの平穏を脅かすつもりなのでないのか。」

「殺すべきではないか……」


 なんてヒソヒソ聞こえる。うるさいですね、事実ですよ。

 わたしが間違ってるわけじゃないです、道がおかしいのですよ、仕方ないのですよ。


 この不穏な発言はあれですかね、ホビットさんは迫害とかされてたりするのでしょうかね、人族至上主義とかあるのかな?

 天使クロサワ氏は人族以外もいるって言ってましたが、わたしは今の所見たことないのですよね。

 まぁほとんど家から出ないのもあるんですけどね。

 貴族の女の子って自由に外に出れないんですね、だからお姉様は脱走するんですね……。


「……ユイリエール殿、と仰ったか。

 リシュール領主様のご息女というのは本当だろうか?

 それを証明する手段は持っているのだろうか。」


「証明出来るかは分からないですけど……お父様にわたしのためのものだと、何かあった時に使えと渡されたものが証明になるのであれば……」


 そして首にぶら下げて服の中にいれていた袋から、不思議な模様が彫ってある楕円形で琥珀色の綺麗な宝石を小人さんに見せる。


 途端にざわついた小人さんたち、そして次々と頭を垂れていくので何事かと思うと


「ありがとうございます。確認させていただきましたのでしまっていただいて構いません。

 確かに貴女は間違いなくカイザント様のご息女様です。

 その宝石は我らがあなたの誕生の際にお渡ししたもので間違いありません。」


 なんとびっくり、この宝石はホビットさん(仮)たちからもらったらしいです。


「我ら、ホビットは何十、何百年も人間から迫害されて生きてきましたので、何人も奴隷として囚われてしまっています。

 非礼をお許しください、我らを奴隷にしようとするものは何者であろうとここから帰すわけにはいかないのであの態度になってしまいました。


 身体も小さく力も強くない、特別な何かがあるとすると鉱石の加工技術ですが、それは人より少しだけ優れているだけ。


 そんな人にほとんど益のない我らは見目が良いと愛玩用に攫われ、追いかけ回され逃げ惑い彷徨っていたところを先先代のリシュール領主様に救われ、この地に住まわせてもらうことになったのです。


 ちょうどこの森の中に人に知られていない鉱山があり、許可をいただきそこを採掘しては鉱石を加工してリシュール領主様に売らせていただいているのです。

 そして、お子様が生まれた際にはその年の最高品も技術者に加工をさせて献上させていただいているのです。」


 ホビットであってましたね、いえい。

 壮絶ですね、やっぱり人族至上主義あるんですね……奴隷制度があることも知っていましたが、我が家には奴隷も他種族もいないので遠い存在に思ってましたが……。

 他種族はいないんじゃなくてコッソリ住んでいたとは。


 いやーでもまさかこんな近くにホビットがいたなんて……よく異世界ものだとドワーフは出てくるけどホビットはあまりいないですよねー。

 珍しいです、いいですね、ホビット!


 ドワーフってどうしてもオッさんで、女の人でも髭ズラのイメージですけど、ホビットは小さくて子供みたいなイメージあるのですよね。

 そしてその通りの可愛らしい見た目でギュッとしたくなりますねー。

 手足の指は4本でしょうか……見せてもらえないですかね、わくわく。


「それで、ユイリエール様はどうやってこのような森の奥深くまで?

 森の入り口には方向感覚を狂わせる結界を張ってあるのですぐ森の出口についてしまうはずなのですが、どうやってここまできたのでしょう?」


「えっと……? そんなものありました?

 最初に言ったように街からきただけなんですけど、特に結界とかにあたった感覚も迷った感覚もなかったですけど……」


 そもそも迷ってここまできといて迷った感覚もなにもないのだけども。

 そこはつっこまないようにしましょう。


「さっき迷ったって言ってたよな……」

 ボソッといっても聞こえてますよ、そこのホビットくん!

 という思いを込めて睨んだらサッと目をそらされてしまいました。


「なんと、普通に歩いて辿り着いた……? 結界に干渉せず……?

 トーイ、森の入り口の方に行って結界の確認をしてきてくれないか?」


「はいです、長様(おささま)。」


 トーイと言われたホビットくんが走っていきますが……早っ、早いです。

 ホビットって足早いのですねぇ。

 そしてさっきから喋ってた年配のホビットさんが代表者だったらしい。


「あなたがこの地の長なのですね、改めましてユイリエール・リシュールです。

 名前長いのでぜひユイって呼んでください。」


 貴族令嬢らしく淑女の立ち振る舞いで礼をとったら丁寧に返してもらえました。


「ご丁寧にありがとうございますユイ様。

 私がリシュール領ホビット族の長、シーユと申します。

 先ほどの若者はトーイ、30歳という今年成人したばかりなのでまだまだ若輩者ではありますが……我がホビット族一足が速く、風と光の魔法に長けているので結界術にも優れた青年になります。」


 そういって年齢に「ん?」と思い詳しく聞いたところシーユさんの年齢が95歳だと教えてもらいとても驚きました……。

 ホビット族は大体120~130歳くらいまで生きるそうで、成人は30歳らしい。

 人族や前世と違いすぎて感覚がずれますねぇー。

 前世では20歳、今世では18歳、と思ったらホビットは30歳!

 うーん、バラバラですね。

 ちなみに見た目は成人あたりから変わらず、100歳前後から老けていくらしいです。


「長様戻りましたです。

 入り口の結界なのですが、破れてはいませんですが、何かが干渉して通った形跡があり歪んでましたです。

 サイズがちょうど僕と同じくらいだったので、僕と同じくらいの身長ですし、そこがユイリエール様が通った跡と予想するです。

 見たところユイリエール様の魔力がとても高いので、ホビット族の結界が全く通用せずに結界を歪めて通過してしまい、僕たちもユイリエール様本人も気付かぬうちに突破したものと予想するです。」


 なんと、いつの間にか結界を通ってきたようです。びっくり。

 全員ポカーンとした顔をしています。

 そりゃあ結界があることに気付かないのに歪めて通って、尚且つホビットたちも歪められたことに気付かないとか異常ですよね。

 これは謝った方がいいんですかね……?


「えっと……ごめんなさい……?」


「はっ……いえいえ、貴女様に非はありませぬので、お気になさらないでください。

 次からはユイ様は問題なく通れるように結界に認証させておきます。

 迷ってきてしまったということですし、はぐれた方々も心配していらっしゃるでしょう、街の近くまでお送りいたします。


 トーイ、ユイ様を街の入り口まで送って差し上げてくれ。」


「はいです。ユイリエール様こちらです。」


「ユイ様、またいつでもお待ちしておりますので次回はカイザント様の許可を得てぜひ皆様でいらっしゃってください。

 一族総出で歓迎させていただきます。」


「はい、ありがとうございます。お姉様やお兄様たちも一緒に皆で来ますね!」


 笑顔でお見送りされて帰る途中、何度もトーイさんから離れて迷いそうになったのでついに手をつながれてしまいました。

 前世ではありましたが、今世では初めて異性と手を繋ぐので緊張します……(兄を除く)

 といっても前世のときから年上好きのわたしは見た目が子供のトーイさんたちホビット族には全く興味がないのですが……。

 トーイさんも興味ないでしょうし、迷われても困るということでの手繋ぎですしね。

 色気なんて皆無です。

 何よりわたし7歳なのでトーイさんからは赤ちゃんのようなものでしょうしね。



「ユイリエール様つきましたです。

 あちらに見えるのが街です。

 僕はホビットなので街に近づくことが出来ませんが、流石に見えていたら大丈夫……です?」


「大丈夫ですよー!

 そこまで酷くありません、目の前じゃないですかぁ!」


 と、ぷんぷん怒っているとトーイさんも可愛い笑顔を浮かべてくれました。

 ホビットって可愛いいぃ……


「またお待ちしておりますです。

 結界に穴を開けますのでそのまま真っ直ぐ進んでくださいです。

 また会える日をお待ちしてるのです。」


 にっこり微笑んだトーイさんの笑顔にノックアウトされながら手を振って前に進んで少ししたら

 結界の外にトーイさんが出てきて慌てて方向を正されました。

 わたしの方向感覚はどんだけねじ曲がっているのでしょう、後ろ向いて手を振っていたら向きが変わるとか前世よりひどい気がします。

 結界から出させてしまってごめんなさいトーイさん。










 そして心配しながら噴水で待ってくれていたアンジーと、わたしを捜してくれていた護衛さんたちと合流して買い物を終えたわたしは、もちろんハイジさんからお説教をいただきました。

 この世界にも、正座ってあるんですね……。






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