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転生したってわたしはわたし。  作者: なの
束の間の休息があってもいいですよね?
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29.デザイナーアオイ

「あー書いてなかったかも……ごめんなさい、このわきの部分は身八つ口といって穴をあけるんですよー。あ、袖の内側も開けてください。」


「あ、この燕尾部分はもう少し長めがいいです!

 っていやいや、それだと長すぎですけどね!?」


「うーん、そろそろストラの服の露出をもう少し増やしたいんですよねぇ……」


「おい、それはやめろ。」


「あら、聞いてたんですか?

 でもその意見は聞きいれられません。」


 ここは仕立屋『生まれ変わり館アオイ』の作業部屋の一室、わたし専用のデザインルームです。

 入れ替わり立ち替わりで人が入ってきます。

 ストラはずっと部屋の隅でお茶しながら本読んでますが。


 メインデザイナー兼オーナーであるわたしがこういうものを! とデザインしたものを更に細かく細部を練り直してくれる人やお針子さん。

 そしてわたしの作品を見慣れたデザイナーさん、大体一つの部署? に1人か2人の少数精鋭で営業をしています。

 まぁお針子さんだけは10人いますが。

 最初はもっと少なかったんですけどね……思いの外人気が出て間に合わなくなってきたので……。


 はい、わたしは今や旧時代的ファッションを抜け出して斬新なファッションを生み出しておりますデザイナーアオイとして日々頑張っています。

 まぁ、普通に前世で馴染み深いようなデザインなんですけどね。


 おこめ食堂の方は次期領主であるお兄様が関わっているのでユイリエールとしてやってるのですが、ファッションデザイナーとしては一個人で経営をしています。

 一経営者として領主様にお伺いを立てて裏路地のひっそりした場所での経営です。

 はじめはお針子さん一人から始まったんだけど気付いたら人手が足りなくなって増えるとか。


 やっぱり新しい風が世の中には必要だったんですね!


 今日は久しぶりの領なので書き溜めていたデザインを渡して新しいデザインを今は考えています。

 1日ここにいるつもりなので安全ですしストラは別にこなくても良かったんですけどねー。

 まぁわたしが安全じゃないときがそんなにないんですけどね。



 今日の一番の目的はデザインを渡すことですが、もう一つ目的があって……大分ヨレてきたので着まわしてる冒険服何着かわたしとストラの分作り直そうと思ってるんですよね!


 ストラなんてわたしの護衛になる前は二着しか持ってなかったんですよ!?

 臭いが気になるようになったら変えるとか……イケメンなのに!


 というのもこの世界の文化のせいでストラが特別不潔(笑)なわけじゃないんですけどね。

 異世界定番のお風呂なんて貴族だけ入れば充分じゃ! な世界だったのですよ。


 使用人も毎日のお風呂を義務付けられていますが、護衛騎士になる前のただの冒険者であるストラがお風呂に入るわけもなく。

 身体は濡らした布で拭う程度、服は汚くなったら洗う程度。


 わたしの護衛になってからは『汚い!』と無理やり服は洗って、お風呂に入れないときはわたしがクリーンの魔法を使って綺麗にします。


 でもいつからか『前は平気だったけど今はクリーンじゃなくて風呂に入りたい。布で拭うとか論外。』らしいです。

 ストラが気づいたら綺麗好きになってました。


 正直わたしは面倒くさいからお風呂なんて2日に一回でいいとおも……いえ、なんでもないです。





 ちなみにお店のイメージは名前の通り生まれ変わり。

 『今までとは違う自分に出会えるお店』をコンセプトにこの世界にはない雰囲気作りをしています。

 洋服屋さんだと大体がシンプルなお店ばかりですが、ここは内装も可愛くです。


 前世で一時期ハマっていたお店の内装が森の中にいるみたいでとっても可愛かったのでそれを参考にしています。


 まぁ、そこは森ガールのお店だったので森の中のような内装だったわけで……

 わたしのお店は森ガール専門店ではないんですけどね。


 可愛いは正義ですよね。


 うちの店はドレスから冒険者が着れる実用品まで、もちろん男女問わず着れる服を取り扱っています。

 しいていえばあまりお年寄りになると着れないなーくらいの服です。


 女性服はKA WA I I !

 男性服はMO E RU !


 を目指して作っております。

 え? 誰が萌えるって? もちろんわたしがです。

 だってわたしのお店ですから!

 わたしが萌える服ならどんなものでも作ります、悪食です、ふふ。


 さて、今回のストラの服は……RPGのシーフとかアサシンっぽい感じにしたいんですよねぇっ

 口元までマントかストールで隠して……ヘソだしして……ああ、薔薇も忘れずに入れなければいけませんね……うふ……うふふふ……。


 おっと危ない危ない、ちょっとトリップしてましたがなかなかの出来のものができたんじゃないですかね?


 さーて、次は……


「ユイちゃ……じゃなくて、アオイちゃん!」


 勢いよく開いたドアに少し驚きつつ振り返れば、そこには金茶色のふわふわした腰まである髪の毛をゆるく後ろでくくった、ルビー色のうさぎちゃんみたいな瞳をした超絶美人が立っていました。


 ちなみに美人すぎるのでうさぎちゃんっていうかバニーさんのが似合う。


「サラおねーさま! どうしてここに?」


「最近皆外に出してくれないんだもん……私だって洋服作りたいから……抜け出してきた。」


 ナイスな笑顔でサムズアップしてくるこの美人さんはサラおねーさま。キズリお兄様のお嫁さんです。

 キズリお兄様の一目惚れで超アタックして口説き落としたらしいです。

 普段のお兄様見てるとそんな情熱的なイメージ全くわかない。本気(マジ)で。

 思わず本気と書いてマジと読んじゃうくらいには意外ですよ。


 でも前にたまたま二人きりでいるところを目撃したときに……甘い雰囲気でとてもいたたまれなかったです。

 お姉様の頬に手を添えてピンクな空気を漂わせながら会話してると思ったら……キズリお兄様のあんな蕩けそうな笑顔初めて見ましたもん。

 見ちゃいけないものを見ちゃったなぁって思いましたよ。


 サラおねーさまいわく初めて会った時のお兄様は大笑いしてたらしいですよ?

 え、それ本当にお兄様ですか? 偽物じゃなくて?


 そんなサラおねーさまはなんとわたしと同じ転生者で、なんと乙女ゲームのヒロイン転生をしたらしいのです。


 そしてなんとなんとあの自由人第二王子のキリュウ殿下も攻略対象だったらしい。

 実際はゲームとは性格が全然違ったうえにゲーム通りに進まなくて平穏だったのでよかった。とかなんとか。


 それで実はストラとも顔見知り程度の知り合いだったらしいですよね。全然話したことなかったそうですが同級生だったとか。

 実際ゲームではストラはいなかったそうなのでゲームとは類似点があるだけの別の世界なのかもね? とは言ってましたが。


 まぁ話題にすら出ていなかったらしいキズリお兄様と結婚してますしね。


 サラおねーさまは平民としてリシュール領に昔住んでいたらしいのですが男爵家に引き取られてからはランジット男爵領に住んでいたらしいです。

 とは言っても半年もしたら寮生活だったので、学園卒業後また男爵領に戻って、お兄様の卒業後すぐに結婚って感じなので男爵領にはほんの数年しか住んでなかったみたいです。

 お父様が結婚すると聞いた時泣いちゃったらしいです、侯爵家じゃ断れない……!って。

 まぁサラおねーさまのことが大事だから幸せになってくれるならって賛成してくれたようですが。


 キズリお兄様が15歳サラおねーさまが19歳で結婚してリシュール領に来た時にキズリお兄様に連れて行かれた『おこめ食堂』を見て驚いたらしいです。

 前住んでいたときはなかったのにどうみても日本を知っている店構えだったから転生者がいるのか、と。

 この時はまだ実はわたしと会ったことなかったんですよねぇー。


 クリスマスとハロウィンを始めた7歳のときって、サラおねーさま丁度花嫁修業期間でキズリお兄様待ちだったんですよね。


 で、よく見れば侯爵家の面々の服装がコスプレっぽくね? って結婚ちょっと前に気付いてキズリお兄様に問い詰めたところわたしの存在が露見してーー何回かあってはいたけどもちろん転生云々は話ししていなかったーー二人きりになって問い詰められました。


 すっごい驚きましたよー、まさか転生者と会うとは思わないじゃないですかね。

 しかも兄嫁って。


 そして今ではとっても仲良しです。

 最終判断はわたしがしてるんですけど、実は生まれ変わり館のもう一人のデザイナーはサラおねーさまなんです。


 サラおねーさまは声優萌えでファンタジー服にそこまで興味があったわけじゃないし、前世の記憶もほとんどないらしいです。

 なのでそんなにデザイナーとして多くは作ってないのですが、縫うのが意外と楽しいらしくて今ではデザイナー兼お針子さんです。


 わたしは不器用なので尊敬します。


 わたしは記憶あり生まれ変わり転生なのでチート大量にあってセコイーって可愛らしく拗ねられました。

 サラおねーさま本当かわいい。


 乱入してきたサラおねーさまの話を詳しく聞いてみると、現在妊娠中なのでキズリお兄様が心配して家からあまり出してくれないらしいです。


 惚気か。


 まぁ心配すぎてプチ監禁みたいになってて最近はお店にすら来ていなかったらしいです。

 妊娠したのは知ってたけどそこまで心配されているとは……。


 お兄様溺愛すぎー。


 今日はわたしがいるからと無理矢理、というか勝手にお兄様に内緒で出てきたそうです。

 帰宅したあとにすごい勢いで迎えにくるお兄様が目に浮かびます。


 もうそのうち来るだろうしお兄様なんて放置して二人でデザイン考えましょう!


 あぁ、子供服を作るのもいいかもしれませんね!





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「サラ!」


 夕方になり帰宅したらしいキズリお兄様は、予想通りすごい勢いでサラおねーさまを迎えにきました。


 リシュール本宅の横に建てた小さめのお家がお兄様たちのお家ですが、冒険者として仕事をしてきたお兄様は疲れているはず。


 そしてリシュール家とうちのお店の距離は結構あります。


 肩で息をしてるお兄様はきっと全力疾走してきたに違いないです。


 風魔法使ってきたんだろうなぁ……。


「あらキズリ。もうきたの?」


 つれないサラおねーさまとショックを受けたようなキズリお兄様。え、なにこの図。


「サラ……身体を休めてほしいとあれほど……」


「もーいつも言ってるじゃない! 少しは動かないと逆によくないって!


 私だってお出かけしたいのー! 動きたい遊びたいおとなしくしてたくないー!」


 実はサラおねーさま、とっても活発な人で大人しくしてるだけの貴族令嬢生活が嫌だそうです。


 困ったように眉尻下げてるこの男性は誰?

 わたしの知ってるキズリお兄様はそんなに表情筋動かないはずなんだけど……。


 結局はサラおねーさまが折れなかったので困ったキズリお兄様にわたしが説得されて、わたしがサラおねーさまを説得して、全員で予定よりも少し早めに帰宅することになりました。


 何故だ解せぬ。


 結局ストラの服一着、わたしの服一着、赤ん坊の服三着しかデザインできなかった……。


 ちなみにわたしとストラの服は対になるように作ってみました。

 ふふ、完成した時のストラの反応が楽しみです。


「なぁユイ……」


「なんですか?」


「いつまでこの甘々な空気の二人と一緒にいなきゃいけないんだ?」


 前を歩くのはストラとわたし、後ろにはサラおねーさまを気づかいながらベタベタしつつ歩くキズリお兄様。


「うん、家まででしょうね。

 今なら口から砂糖吐けそうです。」


「あぁ、よく分からないが、わかる気がする……。」


「早く、帰りましょう。」


「あぁ、早く帰ろう……」



 予想通り家前で別れるまでベタ甘でした。






やっと『赤の奇跡』のサラさんが出てきましたー。


ちなみにストラの服に薔薇を入れなきゃーってのは、二人とも武器が薔薇に関係あるからですね、イメージを薔薇で統一しようという思惑です。

実際にデザイン考えています。ストラの服はマントに薔薇の刺繍、ユイちゃんはヘアアクセサリーが薔薇かなーっと。


次回更新は2/15月曜日の朝9時です。


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