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転生したってわたしはわたし。  作者: なの
学園編に入ってもいいですよね?
33/60

※ 挿話.とある女の物語 その1

作者的にはセーフゾーンだと思っていますのでR18にはしていませんが、性描写&無理矢理表現、そして残酷描写がありますので苦手な方はご注意ください。


本編に関係はありますが、見なくても問題はないお話になっています。






では本編です↓↓↓↓


『昔々のお話です。

 とある村に大層美しい娘が住んでおりました。

 娘の美しさは他の村や街まで噂として広がっていくほどです。

 ある時その噂を聞きつけて魔王と名乗る男が美しい娘を攫いにきました。


 村人は抵抗しますが、魔族の強さに勝てるものはいません。

 村人たちの命と引き換えに自らの身を差し出す娘のおかげで村人は誰一人として死ぬずに済みましたが、娘は約束通り攫われてしまいます。

 そんな時、噂を聞きつけた勇者が村に現れます。

「あぁ勇者様、美しい娘は攫われてしまいました。どうかお助けください。」

 村人の話を聞いた勇者は娘の救出に向かいます。

 道中色々なモンスターや魔族に邪魔をされながらもやっとの思いで辿り着いた魔王の城はとても大きく禍々しいけれど、勇者は一人乗り込みます。

 激闘の末、ようやく魔王を倒し美しい娘を救い出すことができました。

 助けてもらった娘は勇者に恋をし、二人は皆に祝福されて末永く幸せに暮らしましたとさ。』




 そんな昔話が頭をよぎる。

 こんな話は都合が良すぎる。


 まず娘は攫われた時点で道中に絶対犯されるし、勇者が魔王の元にたどり着いた頃にはもう壊れてると思う。

 それとも一日でたどり着いたと?


 それこそあり得ない。

 そんな近くに住んでるのならその村は人間じゃなく魔族の村だ。


 美しい娘じゃなきゃ勇者は動かないし、そもそも勇者がちょうどそのタイミングで来るとかご都合主義にもほどがある。


 ていうか美しいならそれこそその場で犯されるだろうとつっこみたい。


 現にあの女はそうだったし。






 -------------------------------------




 冒険者として、男4人、女2人のパーティーで森の中にいた時に、いきなり魔族に襲われた。

 魔族は私たちと同じような見た目をしているが、人族には絶対に産まれることのない金色の瞳をしている。

 そして人族よりも圧倒的な力を持っているのだ。

 1人でも敵うかも分からないくらいなのに3人、かと思いきや1人増えて4人という絶望的な人数になってアッサリと最後にきた魔族に男4人が殺された。


 二人は男が現れたことすら気付かぬうちに上半身と下半身を切り離されて。

 もう一人は後ろから聞こえる倒れた音に振り返ったときには剣で縦半分に裂かれた。

 最後の一人は魔法使いの女を後手に庇いながら首から上が亡くなった。


 そんな光景をスローモーションのように見ていた。


 壁役として前にいた私ではなく魔族を攻撃していた男たちや、もう一人の女を守っていた男……そう、男だけが死んでいった。


 聞こえるのは木々がざわざわと揺れる音と、少し荒い複数の呼吸音、剣から血を振り払う風切音と飛び散る血の音。


 そして斬られたばかりの身体から止まることを知らないように流れ出る血の音と、そのうちの一人の血を身体中に浴びた女の絶叫。



 あぁ、私たちはあの物語の美しい娘のように連れ去られて、あの娘とは違う運命を辿って死んでいくのだな、そう他人事のように思った。


 魔法使いの女はとても可愛いらしい娘で周りにも大事にされていたから万に一つ助けがくるかもしれないが、冒険者だということが災いして帰ってこないと気付かれるころにはもう死んでいるだろう。


 現に今私の目の前で服を破かれて襲われそうになって悲鳴をあげているところだ。

 物語と既に違うね。


 私も同じ運命だと思い逃げもせず眺めていたら最後に現れて男たちを殺した魔族が後ろから来て私の首に隷属の首輪をつけて抱き上げる。

 もちろんお姫様抱っこといわれる持ち方ではなく、俵担ぎだ。

 お腹に肩が刺さって痛いから他の持ち方をしてほしいな、と場違いなことを思った。


「この女は俺がもらうから手を出したら殺す。

 その女は好きにしろ。

 だがまずは帰路につく、夜まで待て。」


 どうやら私も魔法使いの女も夜までは無事なようだ。

 そして彼女はわからないが私は少なくとも複数人に犯されることはないらしい。

 偉そうにしているし、一瞬で4人を殺したのだからきっとこの男が一番強くて偉いのだろう。


 肩に担がれたまま進んでいく。

 隷属の首輪があるから勿論逃げることはできない。

 魔法使いの女もいつのまにか首輪をつけられていたし、魔封じの手錠もつけられていた。

 まぁそりゃあ魔法使われたら痛いもんね。

 そして泣き叫んでうるさいからか口にも布をかまされていた。

 泣いても誰も助けてくれないよ。

 あなたの王子様たちは全員あそこで物言わぬ骸となっているのだから。


 その日から彼女は泣いても叫んでも毎日夜になると犯されていた。


 1人のときも、複数人のときもあったが、私は誰にも犯されていない。

 彼女が泣き叫ぶ横であの偉いであろう男に後ろから抱かれて毛布に包まれて寝ていた。

 何故かは知らない。

 最初に喋った以外男が喋ったことはないからだ。


 ちなみに余談だが、犯していた男は皆口に布を噛ませたままだったが、一人だけ外していた。

 優しさではなく泣き叫ぶ様が見たかっただけだと表情を見てわかった。

 あいつは鬼畜だなと冷静に眺めていたら目があってニヤッと笑われた。

 私に被害がなくて本当によかった。

 あれだけはごめんだ。


 一週間たったころ、魔族の領域についたらしい。

 どうも空間が違うのかなんなのか分からないが、途中で目の前がグニャッと歪んだと思ったら通り過ぎるときには意識が飛んで、気づいたら広い部屋のベッドに寝転がされていた。


 起き上がると部屋の隅に侍女らしき女性がいて、世話をしてくれた。

 必要最低限なことしか言わないけれど、雑な扱いはされない。

 本当に意味がわからない。

 何故私はここに連れてこられたんだ。


 なんて色々考えていたら夜帰ってきたあの男に抱かれ、それから毎晩のように抱かれている。


 そして二月ほどたったころ、普段はこない昼間に男がきた。



「一緒にいた魔法使いの女が魔族の子を(はら)んだため殺した。」


 意味がわからないという顔をしていたのか、男が説明をしてくれたのをまとめると

 昔魔族と他種族の混血の子供により魔族が大量虐殺されたらしく、それ以降混血は忌み子として産む前に母体ごと殺すらしい。



 他種族の女はやはり遊びだけで、飽きたり孕んだ時点で殺される運命らしい。

 あの女も魔族の領域に入ったあとは連れてった男たちや他の何人もの男たちに犯されたうえにどの男のとも分からぬ子を孕み死んだらしい。


「……泣いたり喚いたりしないのか?

 お前も孕んだら殺されるんだぞ。」


「別に……捕まった時点でいつ殺されるかわからないと思ってましたし、冒険者をやっていたのだから覚悟はとっくにできていました。」


「……あの女は最後まで泣いていたらしいが。」


「あの女は冒険者じゃない。

 ただの少し魔法が使えるだけの可愛いからって大事にされてきた、私とは違う愛されていた甘ちゃんな女だから。」



 可愛いからこそ直ぐに弄ばれたんだろうと思うと鼻で笑っちゃうわ。


 私は親の顔を知らない。

 小さいころに捨てられていたところを孤児院の人に拾われたらしい。

 私のいた孤児院は色んなところから子供を拾ってきては育てて、15歳の大人になると稼いだお金を育てた年数分決まった金額を払い続けなければならない。

 私は15年間払わなければいけないが、その金額は普通の仕事では生活していけない額だから誰もが冒険者になる。

 その途中で死んでも孤児院は困らないのだ、そもそも孤児たちにそんなにお金をかけていなかったのだから。

 他の人間から返って来る方がでかい。


 そしてその孤児院はその土地の領主が経営している。

 冒険者ギルドにも顔のきく領主のせいで、冒険者になっても出来る仕事は壁役か囮などでいつでも死と隣あわせだ。


 そして一月前までいたあのパーティはあの女を囲う男たちのパーティだった。

 1人が婚約者で後の3人は選ばれなかった男たち。

 何故振られたのにあの女をちやほやし続けるのか分からないが、何故か一緒にパーティを組んでいた。

 そしてそこに私が入って壁役兼、振られ野郎共の夜のお相手だ。

 毎日毎日代わる代わる、あの女が魔族にやられていたように人族の男に犯される。

 昼はモンスターと戦い、夜は犯される毎日。


 死なんて怖いどころかいつでも来てほしかった。

 何度壁としての仕事を放棄しようとしたか分からないくらいだ。

 だが、婚約者の男だけは私に何もしていないから見殺しに出来なくて今まで生きてきてしまっただけだ。

 結局目の前の男に殺されてしまったけれども。

 あれは私にはどうしようもないから仕方ない。

 別に好きだったわけでもないし、優しくされたわけでもないし。


「そうか。」


 そういって部屋を出て行く魔族の男は本当に何を考えているのかわからない。


 そして夜また来たと思ったら昨日同様抱いてきたが一つだけ変化が起きた。

 いつもは私が気を失ったあとは部屋を出て行き自室で寝ているようなのだが、今日は出て行かなかったらしい。


 朝起きたら整った男の顔があるからとても驚いた。

 驚きすぎて叫んでしまった声で起こしてしまったが、男は驚いた顔をしたあと初めて笑った。



 そして朝から男に促されて何故か部屋を移動することになった。






 -------------------------------------






 攫われてから半年ほどたったころ

 気づいてしまった。

 二月ほど前から月のものが来ていないことに。


 あぁ、私の命もこれまでか、と思いつつも

 あの男に殺されるのなら悪くないかもなと思ってしまった。


 あの日から笑顔を見せてくれるようになった。

 そしてふとした瞬間から実はもっと喋りやすい人なのだと気付いた。

 昼間も用もなく来てくれるようになった。


 優しくされたのは初めてで。

 嬉しくて。

 好きになってしまったようだ。


 好きな男に殺されるのならば、悪くないじゃないか。




 その日は男が来る前に読みかけだった本をひたすら読み耽り、後悔しないように過ごした。

 夜になり男が来て、最後にもう一度だけ抱かれようと、一度だけと決めて抱かれた。


 いつも一度では終わらない男はもちろんこの日も終わらず、もう一度しようとしてくるが

 私は初めて拒否をした。

 初めての拒絶に戸惑ったのか動きが止まった男の下から抜け出て前に座り、別れの言葉を一言。



「月のものが来ないから子供が出来たと思う。

 私は殺されるなら貴方に殺されたい。」








一人の魔族を愛してしまった女性のお話。




次回は18日の9時です。

章が変わります。

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