19.友達100人できるかなぁ? - にゃんこ -
「じゃあそうだな、入り口側の後ろから自己紹介してもらおうか。
前までいったらその隣、そして後ろって順番で。」
「は、はいっ! ……です! 属性は風のシングルです! これからよろしくお願いします!」
一クラスの人数は40人前後だそうです。
わたしは前世の記憶を生かして一番前や一番後ろを避けました。
もちろん自己紹介一番目とかやりたくないからです。
あとは変則的に真ん中からとかいうのも合ったので真ん中の列も避けました。
数えてみたところうちのクラスは縦6人、横7人、の42人ですね。
わたしは窓から二列目の日当たりの良さそうな後ろから二番目を選んで、その前にはセイルが座っています。
前に座ってもらいました。
セイルの背は高めなのでサボりもいい感じに出来そうです……むふふ。
「くすっ、ぼくの後ろに隠れて寝ないようにね?」
うっ……バレバレです……。
「……です! 火と風のダブルです!
よろしくお願いします!」
「……だ。得意なのは豪雷だ。」
「……です。火のシングルです、よろしくお願いします。」
ふああ、やっと半分ちょっとですか、飽きてきましたねー。
昔から根本的に人に興味ないんですよね、実は。どうせ上辺だけの友達ばかりになるわけですしねぇ。
やっぱり朱雀院や白虎院に通う平民が多いですし、わざわざ王都まで遠方の平民はこないので貴族が多めなんですね。
偉そうな人が多いです。
奨学金制度があるっていっても学費高いですからねぇ。
聞いているとやっぱり初期魔法のシングルが多くて、次に同属性上位の二種が多いですねー。
特殊魔法はとても少ないんですねぇ。
使うのは人がいないときだけにしましょう(ストラは除く)
「リュカ。闇のシングル……です。」
ざわっ
ぅぇぇ!? 今のわたしの思考はフラグだったんですか!?
滅多にいない特殊魔法のうえに忌避されてる闇魔法使いが!
しかもいつのまにか自己紹介が後ろの席の男の子まで来てました!?
-------------------------------------
「さっきも言ったように、魔法には初期魔法6種類と上位魔法が4種類あるんだけど初期魔法も2種類に分かれてるんだよ。
まずは火、水、風、地 の4種が下位魔法。
焔火の下位が火、氷結の下位が水、豪雷の下位が風、樹木の下位が地だね。
火魔法は、んーっと、あ、これだね。
この本にある、こういう燃えてる赤くて熱いのが火っていうんだよ。
熱くって痛いから本物には触っちゃダメだからね。うん、よしよしいいこいいこ。
下位魔法の中で一番威力があるのがこの火魔法かな。
水魔法はよく飲んでるよね、お水。あれを使った魔法だよ。
治癒のメインは光魔法だけど軽い治癒なら水魔法でも出来るんだよ。光魔法使える人も少ないからねぇ、水魔法はとっても重宝されるんだよ。
優しそうなイメージのある魔法だけど、上位になると途端に激しくなるんだよね……。
水は似合わないけど氷結はアイラにぴったりだもんなぁ……。
風魔法は窓を開けると、ほら、髪の毛がふわふわするでしょ?
この流れているのが、風だよ。
使いこなせると風を鋭い刃にして物を切ったりも出来るんだって。
土魔法は僕が使えるやつだね。
こっちおいで、外が見えるように抱っこしてあげる。
……よいっしょ、これで窓の外見えるかな?
いくよー……すぅー……『落下穴』!
ふぅ……見える? あそこに穴掘ったの。
あとは土を動かすくらいしか僕は出来ないからねぇ……。
それじゃあ見せたかっただけだから、危ないから埋めちゃうね。
土魔法は少し地味だよね……。
うぅー僕もアイラみたいにかっこいいお兄ちゃんをユイちゃんに見せたい!
え? 僕が一番かっこいいって?
もーユイちゃんったらー!
あっ、やめて、そんな冷めた目で見ないでっ!
1歳児にそんな目で見られるとか僕の心が折れちゃいそう!
うぅ……えーっとそれでどこまで言ったっけ? ああ、土魔法まで言ったんだったよね。
でね、初期魔法の残り2種が特殊魔法って言って、特殊魔法に適性がある人はとても少ないんだよ。
光魔法は、そこ見てごらん、そこの壁に付いてるランプが光るから夜でもいつも明るいでしょう? あれが光魔法を使った明かりなんだよ。
光魔法の使い手の人しか作れない魔導具だから稀少価値があって高いんだよー。
父上は光の適性があるから自分で作れるんだよ。
すごいよね。
まぁ光魔法といえばっていうの灯りよりも治癒魔法なんだけどね。
ライトとかはオマケだって言ってたけれど、オマケもメインもすごい属性なんだよ。
水魔法の治癒とは比べものにならない治癒能力も速度もあるからね。
それに比べると闇魔法っていうのは……光が正の魔法だとすると闇は負の魔法の扱いなんだ。
精神に働きかけて言うことを聞かせたり出来るんだって。
だから闇魔法が使える人は忌避の対象になってしまったりするんだよ。
ユイちゃんも無理矢理言うこと聞かされて奴隷になりたくないでしょう?
だったら関わらなければいいって思っちゃうから闇魔法の適性持ちは嫌がられちゃうんだよね。
もちろん、精神に働きかけるのだって良い人が使えば悪いことにはならないんだけどね。
嘘を見抜いたりもできて政治的にも使えるすごい魔法だって父上は言ってたよ。
僕にはまだよく分からないけど、学校に通ったらよく学ぼうと思うんだ。
ユイちゃんも一緒に勉強しようね。
いっぱい勉強して、どんな魔法が使えても、もちろん使えなくても良いことに使えるように頑張ろうね。」
-------------------------------------
1歳の頃はラルフお兄様に魔法のことをいっぱい教わっていたけれど、その頃に闇魔法ももちろん教わりました。
そして、リュカと名乗るこの少年は。
忌避とされる闇魔法を使うことが出来る、数少ない人間……いや、猫の獣人です……。
なんてことでしょう、獣人と闇魔法とか忌避される対象代表みたいな子です……。
ちょっと目つき悪いけど、黒髪に碧の目でとっても猫っぽい整った顔立ちのイケメンなのに……!
周りもざわざわしてますし……入学して早々イジメとかリンチとか除け者とか可哀想です……。
あっ! そうか!
ガタンっ!
おわっ、焦りすぎて音立てちゃった!
いけないいけない、侯爵令嬢なんだからお淑やかに……。
「リシュール侯爵第4子、ユイリエール・リシュールですわ。
得意なのは氷結魔法、ネクタイにはダイヤモンドがついてますがあまり言いたくないので属性個数はいくつあるかは内緒にさせていただきますね。
特待生で侯爵令嬢なんて話しかけにくいかもしれませんが学園のルールに則り気軽に話しかけていただいてかまいませんわ。
これから三年間、または五年間よろしくお願いしますね。」
題して「木の葉を隠すなら森の中」作戦です!
あの有名なリシュール侯爵の令嬢!
しかもアイオライトのトリプルですら滅多にいないのに、まさかのダイヤモンド!?
しかも個数は言わないからいくつ適性があるかも分からないだとー!?
って感じで興味をグイグイ惹いてみました。
そしてリシュール侯爵令嬢ってことは宮廷魔導士であるお父様、この国のトップ魔導士の娘であるということをアピールしたのでざわめきの対象は今やわたしです。
ふふん、これでリュカくんもとりあえずは安心ですね。
「えーっと、はは、ユイの壮大な肩書きとかのあとって自己紹介しづらい雰囲気だね。
ぼくはセイルス・ハグアスだよ。
今自己紹介してたユイリエール嬢とは知り合ったばっかりだけど親友になった! とぼくは勝手に思ってます。
属性は水のみ。
シングルだけど一応ユイと同じ特待生だよ。
男の子みたいな、というか男子の制服着てたりするんだけど……一応女です。
女子トイレ入っても叫ばないでね? これからよろしくね!」
ニッコリ色気を垂れ流しながら笑って冗談をいうセイルのお陰でさらにリュカくんの悪印象が薄くなった気がします。 ありがとうセイル!
クラスのほとんどの女子が目をハートにしていますよ!
わたしも惚れちゃいそうです!
「……。」
リュカくんの無言の視線が背中に刺さって痛いね! 余計なお世話とか思われてるんですかねっ
「……です。よろしくお願いします。」
「うん、よーしおつかれー、これで全員終わったな。
では明日から本格的に授業を始めるが、今日はこれで終わりだ。皆仲良くな。」
先生が出て行ったら教室の雰囲気が緩くなりました。
こういうところはやっぱり全世界? 共通なんですね。
「……い。」
さて、そろそろストラに一応連絡を入れなきゃですかね。
何かあったらって言ってましたが最初ですし、とりあえず連絡くらいしてもいいと思うのですよね。
「……おい。」
うーん、どこで式神さん出しましょう。
人がいなそうな場所で尚且つ迷わなそうなところ……なんてあるのですかね……?
「おい、ユイリエール・リシュール」
「はっ!? わ、わたしを呼んでたんですか!
すいません……なんでしょう。」
「……」
わぁ、なんか睨まれてます……ずっと呼んでたのにシカトしちゃってたからでしょうか……。
余計なお世話だったからでしょうか……
それとも今普通に素で返事してしまったからでしょうか……?
「貴族だろうがそうじゃなかろうが女性を睨むのはよくないと思うなぁー?
ユイが怖がってるよ?」
「あ。あぁ、すまない。睨んでるつもりはなかった。」
はぅっ、セイルさんまじ救世主! 惚れちゃいます!
「さっきは、……その……助かった。ありがとう。」
そういって軽く頭をさげて尻尾をゆらゆらしているのは後ろの席の闇魔法使い系猫獣人リュカくん。
かっ、可愛い!
ニャンコが尻尾をゆらゆらしてる時って……犬と違うっていうもんね……調べよう……
『地球知識検索、猫、尻尾』っと……
なになに……小さくと大きくで違うのですか……
リュカくんは、立ってる。
尻尾は大きくゆらゆらしてる
『立っているときに尻尾を大きく振っているときは見慣れないものを見つけたりして観察しています。興味津々です。』って……
興味持たれてる! 助け船だしたからでしょうか……?
「気にしないでくださいな。
先生が言っていたじゃないですか、人族も他種族も同じ命だと。
でしたら闇魔法も、火魔法も、他の魔法が使えても同じですわ!
悪い人も良い人もいますから、リュカくんが良い人でいたらいいのですよ。」
「……そうか……。」
ってあれ?
ぷいっとそっぽ向かれてしまいました。
照れたのか、それとも返答が気に入らなかったのか……
あ、尻尾がピンとしてますね……。
たしかこれは嬉しいとかそういうのでしたよね……照れてるみたいですね。
なんですかこれ、尻尾可愛い……!
「じゃあ、俺は帰るから。」
「はい、また明日です。」
「また明日会えるのを楽しみにしているよ。」
「……あぁ。」
スタスタと教室を出て行ってしまいました。
窓から。
いやいや、ドアから出ましょうよぅ。
「口数の少ない獣人さんでしたね、リュカくんは。」
「尻尾が雄弁に語っていたけどね。
表情には全くと言っていいほど出ていなかったけども。
学校が嫌にならないといいと思ったけれど、多分大丈夫だろう、ユイが優しくて可愛いってことが彼もわかっただろうからね。」
えっ、甘い笑顔でそんなこと囁かれるとか!
なんなのこの子、わたしを落としたいんですか!?
あれ、なんか最初はそこまで思わなかったけどどんどんたらしになってないですか?
ドMのお兄様が特別なだけでハグアスの家系は皆たらしとかそういうあれですか?
「あ、あは……ありがとうございます……。」
「どういたしまして。本当のことだからね。」
ニッコリと聞こえてきそうなスマイルご馳走様です。
教室にまだ残ってこちらを見ていた女生徒の黄色い声が聞こえてきます。
わたしはハグアス家の王子と仲良くなったみたいです。
「じゃあぼくたちも帰ろうか。
ぼく寮生なんだけど、ユイは?」
「わたしは家からです。
護衛が迎えに来てくれてると思います。」
「そっか、じゃあ寮は途中で曲がるからそこまで一緒に帰ろうか。
そこからは簡単な道だったから大丈夫だと思うし。」
-------------------------------------
迷いました。
ちゃんとセイルが道を教えてくれたんですよ?
聞いたときは簡単だったはずなのに……なんかこう……迷う磁場でも出てるんですかね……?
庭っていうか森に入っちゃいました。
うーんどこでしょう、ここ? これは助けを求めるしかないですよね。
『伝言式神』
ふわっと風がふいたと思ったら目の前に白い手のひらサイズの人型の紙のーーように見えるけど実際は魔法で作ったものなので役目を終えたら消えますーー式神が出てきました。
目印になりそうな物はっと……。
「『あー、大変です学園内? で迷いました。
えーっと、なんかわたしの身長よりもでかい岩もある岩岩しい森の中にいます。
他にもその岩が砕けたかな? みたいな大小様々な石もあります。
王宮も少し見えますがほぼ木で見えないです。
あとは川の音がどこかから聞こえますが見える範囲にはないです。
ここは迷いの森ですか、そうですか。
助けてください、ストラ~……』
はい、以上です。
では人目につかないようにストラまでお願いします。」
了解! と言わんばかりに敬礼した式神がふわふわと飛んでいきます。表情ないのに可愛い。
あとは岩に座ってストラを待つだけです。
「ニャー……」
ん? どこからかニャンコの鳴き声が……。
「あ、ニャンコいたー。
可愛いですねぇ……この森に住んでるんですかね?
おいでおいでーって来ないか、構いたくて仕方なくてしつこいからかニャンコには嫌われるんですよねぇ……。」
キョロキョロ探してみれば森の中から黒毛に金目のツヤツヤした毛のニャンコが歩いてきました。
首輪はついてないから野良なのかな?
「ふぁっ!? スリスリ……だと!?
抱っこしていいんですか!
ふゎぁぁ、もふもふ……。 金色の目とか目力あるねぇ~。
むふふ、可愛いです。
わたし今迷子なのですよー。
ストラに……あぁ、護衛の名前なんですけどね、助けを求めてる最中なのでくるまで一緒にいませんか?
今日はあったかいし一緒に日向ぼっこでもしながらー。」
ニャンコに話しかける痛い子。
でもいいんです、ニャンコしかいないんだもん。
膝からぴょこんと降りて横に寝っ転がって尻尾をたしたし。
可愛さにニヤニヤしながら寝っ転がるとこちらを見ながらピクリと髭が動きましたがそのままいなくなることもなく、むしろ腕の中に包まって尻尾をパタンと一度だけ動かして目を閉じてしまいました。
膝が小さいので寝心地悪かったんですかね……? 近寄ってくるとか、くっそ可愛いです……。
「ふふ、芝生が気持ちいい~……ポカポカだから眠たくなっちゃいますね……」
「ニャー」
「ふふ、くすぐったいです。
ほっぺた舐めても味しないですよー。
あったかくて気持ち良いから迎えくるまで寝ちゃいましょうかぁー……。」
春と惰眠が大好きなわたしにとってこのぽかぽかした陽気は天然の揺籠のようで、あっさりと睡魔に負けて眠気が襲ってきます。
腕の中に包まれて丸くなりすり寄ってくるニャンコを撫で撫でしながら、あっさり陥落していきました。
おやすみなさい。
リュカくん登場です。
犬(狼)と狐の獣人は出したし、兎出したいけど男の子で兎は可愛すぎるからイメージ合わない……ときたらやっぱり猫かなぁ! ってことでリュカくんは猫さんに決定です。
そして最後に動物の方の猫さんも登場。
おや? 関係はあるのですかね?
では次回も続きます。
次はストラ視点になります。
閲覧、ブックマークありがとうございます。




