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転生したってわたしはわたし。  作者: なの
学園編に入ってもいいですよね?
22/60

18.友達100人できるかなぁ? - 王子 -


 王都の別邸から徒歩10分ほど。



 少し前から横には白い壁。

 ひたすらに壁。歩いても歩いても壁。


「ストラ……さっきからひたすら壁で学園が現れないんですけど……。」


「この壁、というか塀の向こうが今向かってる聖樹魔法学園だな。

 デカイからな、速攻道案内用に友達作れよ。

 毎日迎えにくるから帰りは門まで送ってもらえ。


 っと着いたぞー。ここが聖樹魔法学園の門だ。」


 でかっ! ……えぇー。

 なんですか、学校サイズじゃないですよ、これ。


 でかい壁、もとい塀を越えて見えた門の内側には、広大な敷地であろう道と庭園のような庭が見える。

 門の横には警備員の詰所のような小さめの建物があり、門のところにはそこを使用しているであろう警備員のような人が二人立っています。

 絶対に警備だよ、先生じゃないよ。

 ここ学校なのに!


 そしてその先に白い建物が少し湾曲して広がっていますが……あれ、建物まで遠くないですか……?

 実際どれくらいでかいのか距離感が分かんないですけど……

 湾曲してるのは遠すぎてそう見えるんじゃなくて実際に湾曲してる、んですよね……?


「あー……目の前に見えてたら流石にいけるよな……?


 建物の近くに新入生案内の羊皮紙が置いてあるから、そこで地図とかクラス名簿を確認して、あとは人波に乗っていけば講堂につく。


 講堂から教室に行くには上級生が案内をしてくれるからな、ついていけばいい。


 わかったな?」


「それなら迷わずにいけそうです。

 じゃあ行ってきますね!」


 大変な方向音痴ではあるのですが、連れてってもらったり人波についていくようなことはちゃんと出来るので問題なしです。

『気づいたら周りに誰もいないで一人』なんてことはないはずです。


 あれ、これフラグ?


「あぁ。迷わないようにな。

 帰りはある程度の時間になったら迎えにくるから、あまりにも遅くなりそうだったり、予定が変わったりしたらシキガミを飛ばしてくれ。


 じゃあ行ってこい。」


 そう、式神。


 実は学園に行ったら方向音痴が心配だとストラがいうので、伝言だったりが出来るように何か無いかな~と考えたときに『式神はどうだろう?』と思いついちゃって試してみたらアッサリいけたんですよね。

 人間みたいな妖怪物でありそうなかっこいいやつのはなくて、紙を切り抜いたような人型のやつね。


 それに魔力を込めつつ伝言を吹き込むと送りたい相手のところまでふわーっと空高く飛んで行って音声で伝えてくれるのです。


 現代風陰陽師って感じでかっこいくないですか?


 問題があるとしたら、一方通行なこととかっこいい名前が思い浮かばなかったことですかね。

 往復にしてストラからの伝言も預かれないか試してみたのですが……往復してくることは可能でもストラの伝言を吹き込むことが出来なかったのです。残念。


 そして詠唱というか呼び出し文言は『伝言式神』です。

 捻りなさすぎてつまらないのです。厨二病的詠唱求むです。

 だからわたしは詠唱なぞしない!

 そもそも詠唱いらないんだから!



 そんなことを考えながらストラに手を振り建物を目指して歩いていくと、門付近ではちらほらとしかいなかった同じ制服を着た人たちが増えてきました。


 赤いネクタイ(一年生)が多いですが少しだけ黒いネクタイ(三年生)もいますね。

 石は基本的にガーネットやペリドットで他のものは見当たらないです。

 あ、よく見たら黒ネクタイの人の石が青いのでアイオライトですね。特待生っぽいです。


 それに一人だけ青ネクタイの人がいますねー。

 ってことは特待生の五年生ですね。

 黒ネクタイの人と仲が良さそうです。

 黒ネクタイも青いネクタイの人も手伝いの人って感じですかね?


 入学式の手伝いをする生徒会役員って感じに見えます。

 それとも特待生は強制お手伝い参加?

 うわぁそれは面倒くさいです、ぜひとも拒否権を。




 建物近くまでくると人がいっぱい。

 特に集まっている場所が多分案内の置いてある場所なのではないかなと思うのですが、人混みで近づけないのでもう少し空くまで待っていようと少し離れたところで待機していると……


「あの、あなたは特待生ですか?」


「はい。そうですけど……あなたは?」


「ぼくも特待生なんです!

 よければ一緒に講堂に行きませんか?

 案内図もクラス名簿も手にできたのでぜひ!

 帰りまでここに置いてあるらしいから後でもらえますし、どうですか?」


 そう言ってエスコートのためか笑顔で手を差し出してくるアクアマリンのような、襟足だけを伸ばした青い髪の毛の幼さが残る男の子




 の制服を着た少女(・・)……はわたしと同じ赤いネクタイにガーネットの石を付けていました。


 彼女は先ほど特待生と言っていましたが、シングルで特待生になるには大量の魔力量や相当の才能が必要です。

 逆に滅多にいないトリプルだろうと魔力量や才能がなかったりすると特待生にはなれません。


「あ、やっぱりこれ気になりますか?

 ぼくは水魔法のシングルなんです。

 氷魔法は使えないんだけど、そこそこ魔力量が多いから特待生に入れたんです!」


「そうなんですね、まじまじと見てしまい失礼いたしました。

 わたしはユイリエール・リシュール、リシュール侯爵家の次女でございます。

 氷魔法……が得意ですわ。」


「……なるほど氷結魔法ですか!

 リシュール侯爵令嬢だったんですね、お姉様のアイラ様も得意だそうですし、将来はユイリエール様も宮廷魔法師でしょうか?


 ぼくはセイルス・ハグアス!

 こんな身なりとちょっと男みたいな名前ですが、ハグアス伯爵の娘です。

 気軽にセイルって呼んでください!






 (はぁ……よかった……父様に敬語叩き込まれてて……最初に話しかけたのが侯爵令嬢だとは……危うく不敬になるところだった……)」


 ボソッと出会った頃のストラみたいなこと言ってるけど、残念ながらちょいちょい敬語崩れてます。


 ハグアスってことは王国騎士団団長のハグアス伯爵の令嬢ですよね。

 結構な力のある家名のお嬢様なはずですが敬語が苦手みたいですね。


 まぁわたしも人のこと言えないですけどね。

 侯爵令嬢モードなだけだし、今。



 それにしてもネクタイの宝石(ダイヤモンド)を見て声をかけてきただろうにわたしの様子を見てか何も言ってこないですし、家名を聞いても媚びても来ない……うん、きっといい人です。


 なんで男装なのかは気になりますが……キリッとした顔をしているのでとても似合ってて素敵ですね。


「よろしくお願いします、セイル様。

 実はわたし方向音痴なので、ここの卒業生でもある護衛に早く友達作って道案内をしてもらえと言われていたので、とても助かりましたわ。


 ぜひご一緒させてくださいな。」


「良ければ呼び捨てで呼んでもらってもいいですか? そっちのが嬉しいです!」


「分かりましたセイル。こちらもユイと呼んでくださいね。

 あと、敬語もなくて良いですよ? 特待生ってことは同じ10歳ですし、なにより苦手でしょう?

 わたしも普通に喋らせてもらいます、侯爵令嬢モードは疲れるので。」


 笑いながらそう言えば照れたようにはにかんだ笑顔を向けてありがとうと言われ、案内図と名簿を渡されました。

 なにこの子可愛い。





 セイルと共に案内図を見ながら、人波について行くように進んでいくとストラの言っていた講堂が見えてきました。


 中に入るとクラス毎に席につくらしく簡易椅子がいくつかの塊になって並べてあります。


「えっとぼくたちのクラスは……あ、良かった! 二人ともAクラスだね。

 Aクラスの席はあっちみたいだよ、行こうユイ。」


「あ、はい。」


 笑顔で手を引くセイルについていきながら周りをキョロキョロみると、やはりシングルの子が多いみたいで赤い石の子が多い。シングルやダブルの中にたまにトリプルのアイオライトがついた子もいるみたいですが。

 特待生かな?


 緊張した顔持ちで一人で席に座っている子もいれば知り合いなのか楽しそうに喋っているグループも結構ありますね。


 セイルもそうですが喋ってる人たち社交性ありすぎでしょう。


 わたしですか?

 もちろん席に座って話しかけてくれるのを待つタイプです。

 外面は良かったので意外とふわっとした友達はいっぱいいましたよ?

 本当に仲良いと自信を持って言える子は片手で数えれましたけど……。


 いいんです、何事も少数精鋭ですよね、うんうん。





 辿り着いたAクラス席は講堂の奥側でした。

 クラス内はガーネットが圧倒的に多いですがちらほらとペリドットの子もいます。

 今の所席についている子達はその2種類の石で、アイオライトの子やダイヤモンドの子はいないみたいですね。

 まぁダイヤモンドなんて何十年もいなかったみたいですけどね。


 今年は特待生枠には8人の生徒がいるらしく、A~Gの7クラスに振り分けているそうです。

 そして三年間同じクラスで過ごしたのちに四年五年で8人全員が同じクラスになるそうです。


 通常の生徒は三年生で卒業ですからね、そのままのクラスだと6人がぼっちクラスですからね。


 あとは進学の意思があり、成績優秀な人間のみ特待生じゃなくても四年五年になれます。


 王宮魔導師を目指している人たちは、四・五年生にならないと入れない図書館に入って知識を増やすためにと、毎年何人かは進学していくらしいです。

 なので(ふるい)にかけられた一般生と特待生という限られた人間だけが残るのが四、五年生、と。



「この辺に座ろうか!」


 そう言って適当に空いてる席に座ってセイルと談笑をしていると時間になり入学式が始まりました。


 開始の挨拶、先生の紹介、そして学園長のありがたーいお話や生徒会長のお話などをウトウトしながら聞いていると

 いつの間にかウトウトではなく本気で寝ていたらしく

 セイルに起こされてしまいました。



「……て。きて……起きて!

 ユイ、みんないなくなっちゃうよー起きてー」


「はっ!? わたし……寝てましたかっ……」


「バッチリ寝てたよー……まさか侯爵家ご令嬢が入学式でグッスリと寝てしまうとは思ってなかったよ。」


 苦笑されてしまいました、恥ずかしいです……。


「さぁ、教室に一度集まって話を聞いてから解散だそうだよ! 行こう?」


 そして来た時同様セイルに手を取られエスコートされて案内役の上級生に道を教えてもらい進んでいきます。


 講堂のあった建物は魔法の練習場 (いくつもあるらしい)、闘技場のような場所、演習場などがくっついてるらしいと地図を見ながらセイルが教えてくれました。


 無駄に広かったですもんね。






 ていうか体育館に体育座りでいいんじゃないですか、学生ってそんなもんですよね?

 ……いや、貴族の子弟がそんなことするはずないか、床に座るとかあり得ないですよね、ていうか土足だもんね、うん……ないわ。


 わたしの通ってた中学校なんてとても少子化で人数がいなかったので二クラス合わせて60人とかだったんですよねぇ……。

 三年間いつでもうちの学年が一番少なかったので全学年合わせると少しはマシになりましたが……それでも二クラスずつでしたから……。


 体育館って、無駄に広いんですよ。

 知ってますか、生徒数の少ない学校で冬場の体育館の全校集会とか……

 ヒーターのようなものつけてくれても暖かいのは目の前のみで、それ以外何も暖かくならないんですよ。

 危ないからって生徒から少し遠い距離に設置されてるから何もあったかくないんですよ、あれ。


 高校に進学して技術系コース合わせて10クラス以上だったので本当に入学式の日には驚きました。

 そのあとの全校集会ではもっと驚きましたよ。

 体育館が狭いって状況に……。







 おっと、閑話休題







 入学式をした講堂を出たあとは隣の建物に移動しましたが、こちらもまだ教室ではないそうで国内有数の本が集まった図書館の建物だそうです。

 何故これを教室よりも手前に作ったのでしょう。

 ていうかこのデカイ建物本当に図書館だけなの!? と思ったら本を読みながら寛げるカフェのようなスペースもあるそうです。

 超金持ちっぽい!


 そんなことを考えながら渡り廊下に差し掛かると中庭が見えます。

 なんか噴水とかありますね。

 講堂の方にも別の中庭あったので今度どちらの中庭も見に行こうと思います。

 ていうか入り口にも庭園っぽいのありましたよね? いくつ庭あるんだろう……。



「いやぁ~遠いねぇ~。

 毎日この距離歩くのって普通の令嬢には辛いよね、ユイは大丈夫?」


「え? あ、そうですね、少し遠いなとはおもいましたが疲れてはないので大丈夫です。

 あぁ、だからそこらへんにベンチがいっぱいあるし、時間も余裕を持ってるんですね。」


「あ~そうかもしれないね。

 ぼくとしては訓練になりそうだしユイを抱きかかえて走ってもいいんだけど。ふふ。」


 冗談、といいつつ舌をだす様は令嬢には見えないのですが、ハグアス伯爵家ではどんな教育をしているのでしょう……。


 はっ、もしかしてわたしと同じ転生者なのではっ……!?


「ん? どうしたの? 急にキラキラした目を向けてきて。

 そんな可愛い顔してると食べちゃうよ?」


「えっ……」


 いきなりタラシのような甘いセリフを言いだすセイル。

 え、どうしたんですか? 何か悪いものでも食べちゃった?


「ふふふ、可愛い反応されちゃった。

 実はぼく兄が2人いてね、上の兄は……ちょっとあれなんだけど……下の兄がね、……いやこっちもまた別の意味であれなんだけど……。

 下の兄はこういうセリフをね、ポンポン口から零してはご令嬢方を虜にしていくような人でね。

 どこでもそんな風だしぼくにもそんな感じだから移っちゃったみたいでたまに言っちゃうんだ。

 ごめんね? あ、食べちゃいたいくらい可愛いのは本当だよ。」


 どっちもアレなんですか。

 下のお兄様はたらしで上のお兄様はなんなんですか……。

 聞いたら負けなんでしょうか……。



「あぁー気になっちゃってる感じ……? いや、うん、ちょっとね。

 ……すこぅし、変態、でね……痛いのが、好きみたいなんだ……」




 聞いたら負けなやつでした。

 ドMお腹いっぱいです。






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「さて、君たちのAクラス担任となったワズリー・ダンだ。魔法は火と焔火のダブル。

 こんな見た目をしているが剣等は得意ではない。」


 こんな見た目とは御馴染み熱血体育教師ゴリラです。嫌いじゃないです。

 ダンっていうと……たしか侯爵家でしたっけ?


「講堂でも話があったから知っているとは思うが一応。

 学園に通っている間は身分などはなく皆平等に一生徒として扱う。

 今年はいないが王子だろうが王女だろうが俺たち教師は同じ扱いをするし、お前たち生徒も庶民とか、庶子とか、貴族とか、種族とか。……そういう差別は許さん。

 そしてこれは王族の決定だ。

 敬語等は悪いとは言わんが態度等、特に貴族は気をつけるように。


 もちろん身分差はあるのだから卒業後は学園内と同じ態度でいろとは言わん。

 だが卒業後も身分で差別はするな。そして種族差別はもっとするな、俺は許さん。

 人だろうと獣人だろうと亜人だろうと、皆一つの命だ。

 同じ人族だって性格も皆違って誰一人として同じやつはいないだろう。種族の違いだってそれと同じだ。

 エルフは美しく、そして長寿であり魔法にも優れているが子供ができ辛い。

 獣人は人間よりも力が強かったり鼻や耳が良かったりするが魔法が使えない者が多く魔力量も少ない者が多い。

 人は特別優れているものはないが総合的にみて劣っているところがあるわけではない。特化したところがないのが悲しいな。


 それぞれの種族で良いところも悪いところもある。人の中にも良い奴や悪い奴がいる。


 何も違わないだろう?


 俺はお前らがこの学校に通っている間、それだけは口を酸っぱくして言っていくつもりだ。

 目標はお前ら全員、今どれくらいの偏見があるか知らないがそれらを全て無くすことだ。


 さて。では各々自己紹介をよろしく頼む。


 あー、魔法は得意なものを一つとかで充分だからな。」


 わー、チラリとこちらを見たダン先生と目が合いました。今の最後のは確実にわたしに向けて言いましたよね……。






お待たせしました。

学校編始まりました。

長くなったので分けちゃいました。

まだ続きます。


早速お友達ゲットです。

気付いた人がいるか分かりませんが、サイドストーリーである赤の奇跡にて設定だけ語られていた、『元仔犬攻略者だったドM騎士団長子息』の妹です。

ドM兄が出てくるかどうかは未定。





ちなみにユイちゃんの前世の話は名前以外全部作者の実話を用いています。



中学の体育館本当に寒かったです。

高校に進学して人の多さに本当に驚きました。

田舎こゎぃ。

高校もチャリでいける距離の田舎でしたけどね。



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