挿話. リリィママは幸せなんです。
本編ぶった切って
ユイちゃんのお母さん、リリエラさんの独白です。
本編↓↓↓↓
私はリシュール領主である侯爵家当主カイザント・リシュールの妻、リリエラ・リシュール。
旦那様は……優しくて凛々しくて、魔導士という天才に与えられる称号を持つ素晴らしい宮廷魔導士です。
それはもう本当にカッコよくて、結婚してから10年以上立つ今でも一緒にいるとドキドキしちゃうわ。
そんな私たち夫婦には可愛い子供が4人もいます。
一番上が男の子で、ラルフシェイド16歳
私が16歳の時に初めて産んだ子供ね。
見た目は夫であるカイにそっくりで、物腰が柔らかいけれど少しキリッとした印象を与える顔をしていて見惚れる令嬢がいっぱいいて婚約話が途絶えない子で、断っても断っても後を絶たないわ。
本人はユイちゃんが嫁ぐまでお嫁さんは決めないって言っているのよね。
結婚適齢期すぎちゃうわ、とも思うけどそれでも人気があるので問題はなさそう。
剣の腕には恵まれなかったし、魔法も技術は悪くなくても戦闘に使えるようなものがないし魔力量もとても少ない……けれど代わりにとても頭がよくって通った学院では始まって以来の天才と言われていたくらいの異才。
学院での成績は常に1位だったから親としてとても誇らしいわ。
きっとカイに似た良い領主になってくれるわね。
でも次女であるユイちゃんのことが本当に可愛くて大好きみたいで、構い過ぎるとユイちゃんの目がどんどん死んだ魚のように濁ってくからほどほどで止めなきゃね。
これだけは溺愛すぎて唯一の欠点かしら?
昔は仲良くて後ろを雛のようについていってたストラも目の敵にしちゃってるし……。
いつかまた仲良くしてくれるといいんだけど。
二番目はラルフくんの双子の妹でアイラちゃん、同じく16歳ね。
この子はカイと同じで魔法の才能があるので、通常12歳から通う魔法学園に特待枠で10歳から通い、王都の別邸から5年間しっかり通ってたので親元から離れるのが少し早くて寂しかったような、誇らしいような……。
面倒くさいわって帰ってくるのも大型連休だけだったのだもの……。
結婚はしない! って宣言をして宮廷魔法師になったのよね。
毎日楽しいみたいだし、宮廷魔法師は宮廷魔導士であるカイの部下のようなもので、限られた人しかなれない素晴らしい職ではあるわ。
我が家では政略結婚はする気はないので構わないけれど……結婚……とてもいいものだと思うからもったいないわ……。
良い人が現れたらあの子の気持ちも変わるのかしら?
昔から周りの子たちを振り回してるお転婆さんだったから、ちょっと心配だわぁ。
あぁ、でも学園に通うようになってから以前は夜会のときくらいしかしなかったのにシンプルだけど可愛らしいようなアクセサリーをするようになったのよね……気になる方でも出来たのかしら? ふふ。
そして次男のキズリエラ14歳。
あと一年でキズリくんも学院卒業ね。
魔力量があまり多くないからと魔法学園には通わずにラルフくんと同じ学院に通ったけれど、キズリくんは実はとってもお兄ちゃんっ子だから一年だけでも同じ学院に通いたいって同じところに行ったのよね。お母さまはお見通しなのよ、ふふふ。
ラルフくんを支えるつもりで勉学にも武芸にも励んでるみたいだし、とってもお兄ちゃんっ子ね……ふふ、本人はバレてないと思っているところが可愛いわ。
この子は珍しい弓の名手なのよね。
弓を使わなくても魔法で遠くに当てれちゃうから、あまり使ってる人はいないのだけど……家の武器庫に置いてあった狩り用の弓に興味を持ってから使い続けて、少量の魔力で矢に魔法を纏わせて飛ばせるようになったのよね。
なんでもユイちゃんがこういうのは出来ないのかって言って使えるようになったとか……。
うちの子たちは皆天才ねぇ。
キズリくんは学院に通いつつも冒険者をして技術を高めているみたいで今はDランクらしくて、すぐストラに追いついちゃうのかしら、ふふ。
そういえばユイちゃんがキズリくんの弓術を見て『ヨイチ! 現代に蘇ったヨイチです!』って大興奮してたけれど……ヨイチって何なのかしら?
キズリくんは前からあまり感情が顔に出ない大人しめの真面目な子だったけれど、婚約者が出来てから前より表情が柔らかくなってきたのよね。
しかも前にたまたま見かけたのだけれど、相手の令嬢と二人きりのときは普通に笑うのだもの、驚いちゃったわ。
あんな笑顔母の私ですら見たことないのに……むぅ~……羨ましいわ。
愛って偉大なのね。
相手は年上だし、卒業したらすぐに結婚するのかしら?
上に二人もいるのに三人目が最初に結婚なんて、ふふ。
そして最後、末娘のユイちゃん。
ユイリエール7歳
ラルフくんたちとは9歳も年が離れた子供だからもちろんカイも私も可愛がっているのだけれど……ラルフくんの可愛がり方が凄いのよね。
以前ユイちゃんに髪の毛は短い方が好きだと言われたらしくて、カイに憧れて真似をして伸ばしていた髪の毛もバッサリと切ってしまったのよね。
カイには伸ばした理由は言ったのに切った理由内緒にしているのよね……ふふ、切った直後『嫌われたのだろうか』って悩んでたのよね。
カイに言ったらきっとカイも切っちゃうものね、ユイちゃんモテモテね。
アイラちゃんもキズリくんもラルフくんみたいな溺愛ではないけれど、年の離れた妹をとても可愛がっていて、家族仲はとても良好だわ。
1歳の頃に魔法を使ってベビーベッドから抜け出していて……子供達はそれぞれ皆天才だとは思うけれど……きっと一番天才なのはこの子なのよね。
1歳で魔法を使うのなんて聞いたことないもの。
しかも街の外れにある森のホビットさんの報告によるとホビットさんに気付かれることなく、壊すことなく、そして本人も微弱すぎて結界があったことにすら気付かないというあり得ない状態で結界を通って中に迷い込んだらしいのよね。
あの結界はそんな簡単に壊れるものではなくて。
何代も前の保護をした領主様から受け継がれてきた結界をカイが更に強化して、ホビットさんたちと共に維持をし続けている現代の天才魔導士の作品……それを壊してしまうこともなく、本人からしたら『結界が微弱すぎて気付かない』ほどの魔力を保持しているなんて……。
聞いたときは淑女としてありえないくらい口が開いてしまったわ。
気付いてすぐに気をつけたけれど……カイなんて驚いたあとは放心状態だったわね。
彼に勝てる魔法使いはいないと言われているくらいなのに、まさか7歳の娘が最高傑作の結界を気付かぬうちに突破しているなんて、それは悔しいでしょうねぇ。
最近はラルフくんも領地経営を一緒にやってくれているから、その分余裕ができて魔法の研究が進んでいるみたいね。
ユイちゃんや他の子供達にも良いところを見せたいのでしょうね。
ユイちゃんのことラルフくんに負けず劣らず大好きだものね。
ラルフくんとのユイちゃんの争奪戦には日々負けているけれど。ふふっ
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我が国の成人年齢は18歳。
学校という義務教育期間は15歳までなので一応大人に近い扱いをされ、15歳で結婚も可能となります。
私はカイと出会ってしまったから卒業後すぐに結婚をしてしまったけれど後悔なんてもちろんしていないわ。
ずっと冒険者になりたいと思って前騎士団長だったお父様から剣を習い続けてきたけれど、結局お披露目は学園卒業の年の大規模魔物侵攻の一度だけだったわね。
でもそこで愛する旦那様と出会えたのだもの、剣を習っていたことも無駄ではなかったのよね。
まさかあの一回で二つ名がついてしまうとは思わなかったわ。
『黒の天使』って……ふふふっ
白い髪の毛だったら白の天使だったのかしら? ふふ。
素敵な夫と、可愛い子供たちがいて。
こんなに幸せでいいのでしょうかと思うくらい、私は今世界一幸せね。
本編が思いつかなかったので挿話にしてみました。
連続更新出来ないように挿話や閑話でストック作るのもありかもですね。
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