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転生したってわたしはわたし。  作者: なの
新人だろうが冒険者っていいですよね。
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12.守るべきもの -ガーネット-

 幻とも言われている虹色スライムと森の入り口付近で遭遇するとか……このお嬢様はどんだけ運がいいんだよ。


 何年も冒険者をやってきたが実物は初めてみたくらいの希少生物だが、ドロドロした通常のスライムたちと違いプルプルで雫のようで可愛らしい見た目をしていた。

 そして恐怖に震えている姿は噂通りの最弱モンスター。


 虹色スライムは弱さ的にはFランクだが、本気で探すとなると色んな場所で必死に探してようやく見つけるくらい見当たらない。

 なので基本的に依頼はAランク並みの能力が必要だと言われている。


 目撃情報があったこの場所がFランクから攻略可能な狩場ということでFランク依頼となってはいたが、依頼主も見つかるとは思っていなかったことだろう。


 そもそも目撃情報とはどこの情報なのか。

 見かけたのならばその場で嬉々として狩りとって魔石を換金してもおかしくないと思うのだが。


 ユイには言わなかったが、この依頼は報酬額もありえないくらい低く依頼条件として破綻している。よくギルドの審査を通ったものだと思う。

 依頼料は魔石売却額の半値、誰も受ける気などなかっただろう。

 俺もこの状況じゃなければ絶対に受けない依頼だ。


 止める間もなく勝手に受けてしまったからそのままついてきたが、万が一見つけることが出来た際は依頼失敗になってもいいから魔石は売るべきだと言うつもりだった。


 依頼を受けずに虹色スライムを探しているやつも何人もいるだろうなぁ。

 うん、俺でもそうするな。


 なのにこのお嬢様はいとも簡単に見つけた(探す前にあちらから出てきたようなものだった)上に、狩ることもせず本人(本獣?)から何故か魔石をもらい、そのうえほぼ廃れているはずの使役契約までしてしまった。


 なんていう規格外。


 使役魔獣は今の世にはほとんどいない。

 何百年前から代々仕えているような長命種の妖精(ピクシー)が何匹も王家にいる程度なのだ。


 使役魔獣を得るためには契約をするに値する心が必要だと言う噂がある。

 詳しいことも実際はどうだかも知らないが。


 清い心や優しい心、勇敢な心、かと思えばいたずら好きな心など様々なそれぞれの魔獣が求めるそういったものが必要だと言われているが前提としてその魔獣に殺されないある程度の強さが必要なのは確実である。


 しかしそんな契約がなくても、今の時代は魔獣を使役することが出来てしまう。


 奴隷契約の魔導具がそれだ。


 冒険者にも善人はもちろんいるが、普通の仕事につけないような荒くれ者もやはり多い、そうなると悪い仕事を依頼するやつも同じように多くなる。


 奴隷商人がどこからか買い付けたその魔導具を渡して、依頼を受けた冒険者が魔獣を捕まえる。

 そしてその魔獣を商人が売っていく。


 その際に発生するのが使役契約ではなく奴隷契約だ。


 そしてその魔導具……奴隷契約の首輪『隷属(れいぞく)の首輪』はたまに壊れることがある。

 もちろん、壊れない確率の方が高い、たまに、だ。


 ハイリシエールでは人の奴隷は違法ではないが、扱いや奴隷の対応などがキチンと厳しく決められている。

 逆に先に言った魔獣奴隷は首輪が壊れる可能性を考えて危険性が高いため禁止されている。

 魔獣以外の奴隷になる人間は家族に口減しで売られたり借金の形に一時的に奴隷に堕ちたり、または犯罪者であったり……決して人攫いや人種でなるものではない。


 しかしそういう壊れるという確率が出てくると、壊れたと言い隷属の首輪を自分のものにするやつが出てくる。

 そしてそれを黙認するやつも出てくる。


 あとは簡単に想像が出来るだろう。


 田舎の村や、王都の路地裏、スラム街……光があれば闇ができるのと同じで必ず立場の弱い人間はいるわけで……。


 しかし昔と違い今は壊れた隷属の首輪を回収して個数確認を義務としているので、そういった不正は減ってはいるが、やはりこちらもゼロではない。お役所仕事というものは減らないものだ。


 誘拐して奴隷にする行為も、それを売って自分の利益にする行為も胸糞悪い話だな。





 しかし横で楽しそうに虹色スライム『スイレン』と名付けた虹色スライムの頬? をつついているこのお嬢様はそんなものを使わず、奴隷契約ではなく使役契約をしたのだ。


 先ほど唱えていた契約言(けいやくごん)はたまたまアイツ(・・・)から軽く聞いたことがあるだけでもちろんちゃんとしたものをリアルタイムで聞いたのは初めてだった。

 使役契約をしようとすると頭に浮かんでくるという謎多き呪文だからか、使役契約自体が『神からもたらされる絆』とも言われている。

 もちろん契約される側が契約を認めないと浮かんでこないらしい。


 成功したときに眩い光を放つというのも、契約の証として使役獣の右目に出るという(いん)ももちろん初めて見た。


 ユイいわくこれがスイレンの花の模様らしい。

 (しるし)は契約の際の使役者のイメージが反映されると書いてあった気がするから、名前からのイメージでそのままスイレンの(いん)になったんだろう。

 フローラとは似てないが見たことのない形をしていて綺麗だと思う。






 本当に規格外なお嬢様だなぁ。


 使役獣は使役者の能力によって強さが変わるという。

 最弱と言われる幻の虹色スライムが、この規格外なお嬢様の強さをどれくらい得ているのか。


 楽しみでもあるがそのことはまだ秘密にしておこう。

 ユイの驚く顔はこの2日ほどでほとんど見ていないが、年相応でとてもかわいらしかったからまた見たいのだ。



 興奮したときの火照った顔もとても可愛らしかったし、どーだと言わんばかりの勝ち誇ったような顔も、拗ねた顔も、楽しそうな笑顔も、困ったような眉の下がった表情も……ころころと変わるその表情は見ていて飽きない面白いもので。


 冒険者ギルドでの(いさか)いのときの見ているものを虜にするような天使のような笑顔と、正反対の氷のような雰囲気もまた味わい深い美しさをしていた。


 本当に、見ていて面白い、可愛い存在だ。

 まだ出会ったばかりだが妹のようで、こんな存在も悪くないなと思う。


 守る必要はないかもしれないけれど。

 それでもなるべく悪意に触れないように大切にしていきたいと思う。


 使役獣も含めて、ユイの笑顔は俺が守ろう。






おや?ストラの様子が?

AAAAAAAAA




芽生え始めたかもしれないロリコン。

わくてかが止まりませんね。



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