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VS サイクロプス 難易度:チュートリアル

戦闘回です、そして、主人公の秘密が明らかになります。

 門番サイクロプス


 人間の何倍もの体躯をもつ、一つ目の黒い巨人。

 ゲームを開始したプレイヤーが最初に出会う敵であり、ボスでもある。

 フラーロクス村を襲撃した魔王軍の尖兵だが、その力は人間を遥かに凌駕し、数多の初心者を叩き潰してきた。


 しかし、この敵を倒すことが出来なければフリーダムフロンティアの世界で生き抜くことは不可能である。

 相手の動きをよく観察し、装備に見合った戦い方を心掛ければ勝機は必ず見えてくる。



以上、攻略サイトより「門番サイクロプス」。



「ガァァァ……!」

「さーて、ようやく第一関門か……!」


 巨大な柱を棍棒のように持ち、一つしかない目で睨みつけてくるサイクロプスを、俺は臆すること無くしっかりと睨みつける。

 敵を見つけて興奮しているのか、その目は毛細血管が広がって真っ赤に充血してたり、牙が並ぶ口からはダラダラとよだれを垂れ流してたり、体からは汗が出てたりと凄まじいまでにリアルな感触だ。流石DLCだぜ!


 こいつは迷宮を出たプレイヤーが最初に立ち向かう難関、門番サイクロプス。フリーダムフロンティアを始めたばかりの数多のユーザー達を恐怖に陥れた悪名高きボスだ。


 その悪名を高める一環となったのが、まず見た目がめっちゃ怖いこと。

 フリーダムフロンティアはVRゲームが世に出て直ぐに発売されたゲームである。ということは当然、VRゲームに初めて触れる人達が最初にプレイするゲームもフリーダムフロンティアというケースが非常に多かった。


 で、今まではテレビ画面の中だけに存在していた怪物達を、実際に生で目にするような感覚を味わえるのがVRゲームの最大のメリットともいえるのだが、コレが数々の悲劇を生み出してしまったのである。


 要は、迷宮を出たらいきなり10メートル近いデカさの怪物が石柱担いでこっちに向かってくるってシチュエーションに遭遇したら、人間はどんな反応をするかって話。



 いやぁアレは酷かった、以前公式ホームページで行われた「フリフロ、初めての死亡アンケート」によると、初見でおおよそ半分の人は何が起こってるのか理解できずに棒立ち、柱に叩き潰されて死亡、理解したとしてもパニックに陥り態勢を整えようと戻ろうとして、迷宮入り口には結界が張られてしまい逃げられずに柱に叩き潰され死亡の2パターンだった。


 初見実況プレイ動画を見ても、叫び声を上げ半狂乱になる実況者が後を立たず、最悪あまりの恐怖にVRマシンの座席を暖かく濡らしてしまった人までいる程。


 怖過ぎてクレームとかあったらしいが、今更ボスを変えるわけにもいかず、スタッフがやったことといえばサイクロプスが開幕からダッシュで突っ込んでこなくなるようにするだけだった。


「「ギィィっ!」」

「おっと、見張りのゴブリンも来たか」


 更にここで村を巡回するゴブリンが二匹、広場から向かって来た。

 このゴブリン達もなかなかに曲者で、あんまり強くはないのだが倒すのにモタモタしてるとゴブリン諸共サイクロプスに叩き潰されてしまうというある種足止めトラップに近い役割がある。

 かといってガン無視しようとしてもこいつらサイクロプスと戦ってるときに後ろからザクザク斧で斬りつけてくるし、結果その攻撃に怯んでしまいサイクロプスに……といった感じ、人によっては「実はゴブリンが本体」「ゴブリンは事故多発装置」なんて言われるくらい厄介なのだ。


 だがしかし、今更こいつらに遅れをとる俺ではない。

 サイクロプスは動きを見れば挙動は隙だらけなのが分かるし、ゴブリン達も簡単に処理する方法はある。


「要するに、ビビったら負けだ!」


 叫ぶと同時に、俺はサイクロプス目掛けて真っ正面から突っ込んで行く。左右から先に向かってくるゴブリンなんてお構い無しにだ。


「「ギッ!」」


 無視されたゴブリンは、俺に追いつこうと後ろから一列に並んで追いかけて来た。

 よし、狙い通り、コイツらはあんまり賢くないからホイホイついてくる。


 ゴブリンは素早いとはいえ、プレイヤーの全速力よりかは少しばかり遅いから追い付かれる心配はしなくていい。


 さて、このゴブリン達を極めて安全に、そして迅速に纏めて倒す方法、それは実に単純だ。


「グググ」


 グングンとサイクロプスとの距離が縮まっていく、サイクロプスは俺が向かってくるのに合わせて腕を真上に振り上げていく。

 そうだ、あと少し、もう少し先まで走ったら……!


「ガァァアアアア!!!」

「ほいっと!」


 振り下ろされる柱の影が濃くなった瞬間、右へローリング!

 

「「ギッ……!?」」


 どうやらゴブリン共も状況が掴めたみたいだが、もう遅い!


 ゴシャア!!! と柱と地面が激突する轟音が俺の耳を打つ。

 そしてその間には血だまりが二つ、ゴブリンだったものはぺっちゃんこである。


「いてて……。よし、とりあえずゴブリン駆除は成功、っと」


 瓦礫の上を転がったから、背中がちょっと痛い。……凄いリアルだな、以前はダメージを受けない限り痛みは無かったんだけど。

 まあ、先に言ったとおり。ゴブリン諸共サイクロプスは攻撃してくるんで、上手いこと動けば簡単に攻撃に巻き込まれてくれるというわけだ。

 しかも、サイクロプスが開幕からダッシュしてこないおかげでこの方法も随分楽になってしまったしな。ゴブリンには気の毒だけど。


「ガァッ!」

「っ!」


 ゴブリンを処理して一呼吸、と思っていたがそうはいかないらしい。

 サイクロプスは近くまで来た俺を踏み潰そうと左足を大きくあげている、騎士の鎧を身につけていない俺の防御力なら即死確実、というかほぼ全ての攻撃で死にかけるかもしれない。


「よっと!」


 ドスン! と音を立てて地面が揺れた。間一髪、股の下をローリングでくぐり抜けてなんとか回避する。

 少しばかり驚きはしたが、やはりサイクロプス。攻撃範囲が広いだけで動きはトロいままだ。

 ローリングで背後にも回れたし、チャンスだ。


「このまんま事故らずにパターン入れば……!」


 俺はサイクロプスに振り向かれないように横歩きで背後に張り付く。

 隙だらけのサイクロプスに攻撃を打ち込まないのは、先程のダッシュとローリングで失ったスタミナを回復するためだ。


 説明すると、フリフロではプレイヤーは回避、攻撃、スキル技を使うと一定量のスタミナを消費してしまう。

 スタミナが切れてしまうと、攻撃や回避はもちろん出来なくなり、盾で攻撃を受け止めようとしても弾かれて隙だらけになってしまう、スタミナが回復するまで走れない等、事故発生の元になるのだ。

 VRゲームだからスタミナゲージというものは無いが、スタミナが少なくなると現実と同じように息が切れかかってくるので、それを目安に小休止をすれば全く問題は無い。


「ガァ! オォオッ!」

「そんな大ぶりな踏みつけじゃ、当たらん当たらん」


 鬱陶しそうに左右の足で踏みつけを連発してくるが、見てから通常移動で充分回避できる。

 当たり判定が前方に広い分、後ろは足に密着しても踏まれることは無いからだ。


 さて……そろそろスタミナも回復したことだし、こっちも攻めに入るとしようか。


「ーーーっはぁ……!」


 頭上に落ちてくる左足をこんどは通常移動ではなくダッシュで早めに躱し、まだ地面についている奴の右足へそのまま向かう。

 走りながらも両拳を硬く握り締めて、殴る準備は万全。


「ッォらぁ!!!」


 一撃、二撃、三撃、四撃、五撃、六撃!

 右足に辿り着いた途端、それまでの勢いを殺して肘を伸ばせば拳が当たる距離で止まり、右足が上がるまで殴り続ける!

 サイクロプスの黒々とした皮膚は見た目通りに硬く、まるで巨大なタイヤを殴ってるような感触だ。


 足なんかじゃなくて別の所狙って殴ったほうがダメージあるんじゃないかとか、ダッシュの勢いを殺したら殴っても大したことないだろとか、意見はあるだろうが「そんなことは関係ない」。


「ぁああっ!」


 拳の連打の(しま)いに、思いっきりサイクロプスの足を蹴りつけてやる。

 攻撃のためではない、今度は左足へダッシュするための勢いづけというやつだ。


 蹴った勢いでスピードを出しながら、右足が上がり切る前に左足の元へたどり着くことができた。


「らぁあああっ!!!」


 一発、二発、三発、四発、五発、六発、七発、八発、さっきよりも多く殴れた。


 もう一回、もう二回と同じ事を繰り返す。何度も何度も、何度でも、素人の殴り方でもいい、兎に角はやく、出来るだけ多くの拳を奴に届かせるのだ。


「グウウッ」

「っち! 前に出過ぎたか……しかも場所が不味い」


 右足の側面を殴っていたのだが、どうやら立つ位置がまずかったらしく、サイクロプスは踏みつけ攻撃をせず俺が正面に来るように方向転換をしてきた。

 それだけならまた背後へローリングすれば問題無かったのだが、都合の悪いことにサイクロプスは教会の壁を背に向き直している、戦っている内に広場から教会まで動いてしまっていたらしい。

俺としたことが、攻撃に夢中になりすぎて状況確認を怠ってしまった。


「とおりゃっ!」


 振り下ろされる柱のタイミングをよく見て、サイクロプスから離れるようにローリングを行う。

 仕切り直しだ、今度は再び背後をとれるように奴を誘導しないといけない。


「グルルルル……!」

「ふぅ、次は気を付けないといけないなぁ。なんせ『先はまだまだ長いんだ』」


 切れかかったスタミナを安全に回復するため、サイクロプスを壁から離れさせるために距離を歩きながら離していく。


 そう、先はまだまだ長いのだ。

 俺はこのサイクロプスとあと3時間は戦い続けることになるだろう。いや、もしかしたらそれ以上かかるかもしれないという覚悟でこの場に立っている。


 このボスだけではない、恐らくこの先で戦う全ての敵に、それだけの時間をかけて戦い続けることになる。これはそういう縛りプレイなのだ。


「一応、どんだけ殴ったか確認するか……」


 サイクロプスをじっと見つめる、こうやって敵の顔を2秒間ほど見ていると、そいつの残り体力がみえるようになっている。

 そして、サイクロプスの頭上に浮かび上がる数字は……。


 1970/2000


 1970、この左の数字が奴の残り体力。

 そしてこの数字から導き出せる、今まで俺が殴った回数は『30』だ。

 ここまで言えばもう理解できるだろう、なぜジョブじいさんがあれだけ武器を持つように言ったのか、そしてなぜ俺が行う縛りプレイを誰もやったことがないのか。


 そう、『1』なのだ。


 どんな殴り方をしても、例え空手家だろうと、ボクサーだろうと、中国拳法家だろうと、このゲームにおいて『武器を持たないあらゆる攻撃』は、全て補正がかかりダメージは『1』となる。

 何処を狙おうが、相手がどれだけ小さかろうが、意味など無い。

 足を殴るのも頭を殴るのも、サイクロプスを殴るのもネズミを殴るのも、等しく『1』。


 数多のフリフロユーザーは、この超長時間戦闘の前に集中力が切れ、心が折れていった。

 まあ、普通にロングソードでも持てば二十数発で倒せてしまうのだが、それじゃあ面白くない。


「あと1970! かかってこいやぁ!」

「ガァアアァア!!!」


 全く弱る気配が無いサイクロプスの咆哮を合図に、俺達は再びぶつかり合う。

 俺の集中力が先に切れるか、奴が果てるのが先か、まだまだ勝負はこれからだ!

 




「ぬあ〜! あいつめ本当に行ってしまったわ!?」


 その頃、地下迷宮の入り口ではジョブじいさんことジェイムズが頭を抱えて叫んでいた。

 原因は言うまでもない、武器すら持たずにサイクロプスの元へ飛び出して行ってしまったトシアキの事である。


 確かにトシアキとは初対面で、全くの赤の他人ではある。しかし、いくら他人とは言ってもわざわざ死にに行く人間を止めようとしない人間がどれだけいるだろうか。

 ジェイムズは少なくとも止める人間だ、しかも息子と同じ位の年齢の青年なので尚更である。


「さりげなく息子の装備をつけていけと言うとったのに、無視していきおったし……! まさか本気で素手で倒すつもりか!?」


 ジェイムズが見た限りでは、トシアキは何か武器になりそうな物など持っていなかった。

 この世界で武器を持たない人間は何よりも無力な存在なのだ、小さな子供でさえ護身用にタガーを持たせることが常識である。どう考えてもトシアキに勝ち目があるとは思えない。


「上がまだ騒がしいから、まだ一応生きて戦っとるようじゃがいつまでもつか。うちのバカ息子よりよっぽどバカなやつめ……!」


 行ってしまった以上、トシアキをここに連れ戻すことは結界が邪魔をしていて不可能である。

 どうしようもない状況に頭を悩ましていると、ふと記憶が蘇ってきた。嫌な記憶だ。



『もう十分じゃ! 村のみんなの大半はもう迷宮から脱出した! おまえも一緒に行くぞ!!!』

『まだ大半なんだろ!? 『全員』じゃなきゃダメだ!! それに今俺が引いたらモンスター達が迷宮に押し寄せてくる、隠し通路がバレたら全滅だ。俺は良いからオヤジは逃げてくれって!』


 燃える村、大量に湧き出るモンスター。

 そしてたった一人でそれらを切り捌いていく騎士。


『お前みたいなひよっこを残して行けるものか! わしゃ死んでもお前と一緒に行くぞ!』

『あいっかわらず頭が固いオヤジだぜまったく! 俺はもう立派な騎士だっつーの! ちょっと命令違反してこの村に駆けつけちゃったから危ないかもだけど……』


 この村に魔物が向かっているという噂が流れた時点で、彼は騎士団の本拠地である王都を飛び出して一人で来たのだ。

 噂程度で騎士団を動かすわけにはいかない、特に戦争下にあるこの国では。それが騎士団長の判断であった。つまり、援軍はこない。


『俺は大丈夫だ! なんせオヤジが鍛えてくれたこの武具は超頑丈だからな! あのスパルタ女団長の剣で何回切られても壊れねーし! ――――ぜってぇ後から追いつく、だから今だけは逃げてくれ! バカ息子からの最後の我儘だっ!』

『――――っ! 最後とか言うなバカ息子! ふんっ、お前さんはいつもいつも最後と言いつつ我儘を通してきたんじゃからな! 今回だってどうせ最後じゃないにきまっとるわ!』

『ああ最後じゃねぇ! そんで今回も我儘通してもらうぜオヤジ!』

『わかっとるわい!』


 力強く答える息子を信じて、自分は一人迷宮へと足を踏み入れる。

 息子が一人戦うというのなら、ならばせめて自分は一人でも多くの村人を脱出できるよう手伝おう、そして最後に息子と共に脱出するのだ。


『後から来るんじゃぞ! わしは待っとるからな!』

『待たなくってもいいっつーの! 待たせる前にこいつらぶったおしてやるぜ!』



 ――――しかし、約束は果たされることなく、無情にも潰えることとなった。

 息子と、トシアキの姿が重なる。


『ああもう! 俺は別に息子さんの仇を取るわけじゃない! だからこいつは装備しない! この甲冑と剣を持つのにふさわしいのはじいさん、アンタだ!』


「――――っ!」


 あの言葉が、ジェイムズの耳から離れない。

 もう一度だけ、ジェイムズは息子に渡した武具を見る。


 本当に……本当に自分は何もできないのだろうか……?

 本当に、どうしようもない状況なのか?




「百九十六! 百九十七! 百九十八! 百九十九! 二百ッ!!!」

「ググゴゴォォォ!!!」


 二百回目のパンチをサイクロプスの足にぶちかまし、背後へ回る。最早数えるのも飽きるぐらいにワンパターンな戦法を繰り返していた俺は、肩で息をしながら少しだけ飽き始めていた。


「ふぅ、はぁ、よーやく200回か。……こっちは一撃もらったらほぼ即死だし、スリルはあるんだけどなぁ」


 うーむ、いかんせんさっきから同じことばっかりしてるので、面倒だ。

 このままずっと同じパターンだと時間がかかるだけで簡単に倒せてしまうかもしれない。

 俺がやりたかったのは作業ゲーじゃなくて無理ゲーなんだけどなー。


「ヌググググググ……!」


 気のせいかサイクロプスも苛立っているように見える、モンスターの細かな感情なんて判別できなかったのだが、やはりDLCのおかげというやつだろう。さっきから攻撃が全然当たらないから、ストレスがたまっているらしい。

 まあ怒りに任せて地団駄ふんでも、通常移動で普通に躱せるし注意さえしていれば……?



「ギ ガ ア ア ア ア ア !!!」

「んなっ!? 急に、暴れっ!!?」


 サイクロプスが大きく息を吸った後に、今まで聞いたこともないような怒りの咆哮を轟かせ、無差別に暴れ回り始めた!

 俺の位置など考えもせず滅茶苦茶に足を踏み鳴らし、手に持っている柱を地面や建物の壁に打ちつけ、まさしく憂さ晴らしといった感じの暴れ様。

 ど、どうなってるんだ! こんな行動パターンは今まで見たことが無かったぞ!?


「くっ、だがこれくらい、躱せ……っ!」


 打ち崩れる壁は瓦礫となって辺りに降り注いでくる、俺はサイクロプスの動きに巻き込まれないようにそれらを避ける。

 俺とて伊達に廃人を名乗っているわけじゃない、いくら予想外のパターンとはいえ先へ進めばこれよりも避けづらい攻撃なんてごまんとあるのだ。




「はっ、はっ、はぁ……! どうだ、全部躱して――――


 瓦礫も収まり、サイクロプスが暴れ終わって、致命的なミスに気付いた。


 奴の暴れようは凄まじかった、そう、協会だったこの場所が、最早元は建物であったという事に気付けないぐらい破壊されてしまうぐらいに。


 なら、瓦礫と化した残骸はどこにいった?

 答えは実に簡単。


「コイツっ……瓦礫で足元を滅茶苦茶にしやがった……!」

「グルルルルル……!」

 

 サイクロプスが狙い通り、といった表情で嗤う。

 協会だった場所の全てが、大小さまざまな大きさの瓦礫で埋もれてしまっていた。

 走れば瓦礫に足を取られるかもしれない、ましてやローリングすることなんてできないぐらいに凹凸の激しい地形となっていたのだ。


 コイツが暴れだしたときに俺がすべきことは、攻撃することをいったん諦めて広場へ避難することだったのだ。

 だが、そうする事はできなかった。何故かって?

 『以前はモンスターの攻撃で建物が崩れるなんて現象は起きなかったからだ』


「ググググ……」


 ズズン、ズズン、と一歩一歩サイクロプスはゆっくり俺の方へ歩いてくる。

 コイツがこれを狙ってやったのか、そこまでの知性があるかは知らないがその作戦は見事に成功したと言ってもいいだろう。

 なんせ、奴の柱による攻撃は通常移動では回避不可能だからだ。


「……まじかよ……。は、ははは……まさか最初で……」


 このままでは確実に叩き潰されるだろう、まさか、こんな最初のチュートリアルというべき場所で躓いてしまうとは、廃人の名前も返上すべきかもしれない。俺は場違いにもそんなことを考えていた。

 そんなことをしている間にもサイクロプスはどんどんと近づいてきて、俺の目の前に立ち、右足を大きく後ろへ振って……。


「グオオッ!」

「ッぐあ!?」


 思い切り蹴っ飛ばされた、車に撥ねられたような衝撃が腹に伝わる、内臓が口から飛び出てしまうのではないかと思える痛み、そして軽々と宙を舞う体。

 ほんの一瞬だけ空中を飛んだ俺は、瓦礫の中に突っ込む形で地面に着陸する。……ご丁寧に、教会だった建物の更に奥、迷宮の入り口まで押し込まれていた。


「〜〜つぅ、逃がす気は無いってか……ウォェ」


 痛い、あまりにも強い衝撃に吐き気まで込み上げてくる、しかし吐く物といっても血ぐらいしかない。日常生活では決してあり得ないレベルの負傷に、頭が回らなかった。


 ズズン、とサイクロプスがトドメを刺そうと近づいてくるのが音で分かる。

 ……早く、動かないと不味い。


「っぐふ。けほっ、けほっ。は、はは……くくく」


 あと一撃で終わる。

 こっちはあと1800発。

 瓦礫だらけの足場では回避は難しい。

 向こうは瓦礫などお構い無しに歩く。

 全身が砕けてしまうくらい痛い。

 アイツは今迄のダメージなんて屁でもない。


 こんな、こんな状況だと言うのに、俺は、俺は……!


「くくっ、くふふふっ、はは、あははは! あひゃはははははっ!!!」


 なんて、なんて楽しいのだろう!


 自分の何倍もの大きさの怪物! そしてそいつを倒さなければ先に進めないという難関!

 向こうの攻撃はほぼ即死級の威力! 一方こちらが与えれるダメージは全て1という理不尽!

 終いには、ボロボロになった体と、最悪の足場で戦わなければいけないというこの状況!


「この絶望感! 決して現実じゃあ味わえない困難! この無理ゲーを、俺は待っていたっ!!!」


 身体の痛みなんて気にせず、昂揚感に任せて叫ぶ!

 そうだ、この感覚だ。この絶対に覆せないような、達成することが不可能な、これを待ち望んでいたんだ!


「グ……!?」


 突拍子も無く叫ぶ俺にサイクロプスは怯んだのか、動きが止まった。

 どうしたよ、気圧されたか? 自分よりはるかに小さい人間、それも虫の息の奴に?


「そんなんじゃ、足下掬われるぞォ!!!」

「!?」


 自分に発破をかけるつもりで叫ぶ、同時にサイクロプスの所へ一直線に走り出す。

 瓦礫に足を取られないように気を付けているからか速度は出ない、しかしサイクロプスを多少は動揺させられるだろう。なんせ、逃げだすと思ってた人間が向かってくるんだから。


「ギ、グァァア!」


 ほうら、武器を振り上げた。

 どうせ俺が近づいた所で大した痛手は負わないのだから無視すればいいものを。

 まあ、コイツは正面から一定距離まで近づけば柱による攻撃を誘発できるというだけの話だが。


 そして俺もヤケクソになって特攻しているわけじゃない。というかこの状況を求めていたのに諦めるなんて選択肢はあり得ない。

 こっから勝つまでが縛りプレイの醍醐味なのだ。


「なーんちゃってな、誰が真正面から殴りに行くかよ!」


 サイクロプスが柱を振り上げたのを確認して、一気に方向転換。

 くるりと背を向けて、逃げ出すようにサイクロプスから距離を離していく。


「ガァ!?」


 俺の意味が分からない行動に困惑しているサイクロプス、しかし逃げる俺を追いかけることはしない、いや、できないのだ。なぜならもう奴は『柱を振り下ろす』攻撃のモーションに入ってしまってるんだから、あとはもう柱を振り下ろすことしかできない。

 その場所はあくまで『俺が近寄っていた位置』、ということはである。


(これで、俺が最初にいた場所まで攻撃判定は届かない! ……はず!)


 そう、俺の狙いはサイクロプスの攻撃タイミングをずらすこと。

 あのままあそこに留まってしまえば間違いなく叩き潰されてしまう、かといって逃げようとしても瓦礫まみれの地面では追いつかれてしまう、その両方を回避するための策だ。


「あとは運次第かっ……!」


 しかしこれも苦肉の策でしかない。いくらサイクロプスが早く攻撃をしたところで、俺が攻撃の届かない位置まで逃げ切れなかったらゲームオーバーだ。

 その上足場は依然として悪いまま、いつ転ぶかもしれない状態。

 もしかしたら攻撃範囲がしっかり届いちゃって逃げても無駄でした、なんてこともあるかもしれない。


 だが、それでも十分だ。

 ここで死んでしまうぐらいならばそれは俺に運が無かっただけ。或いは、最初のボスだからと高を括った当然の報いとも言える。


「とど、けっ!」


 柱の影が間近に迫ってきた、俺は最後の足掻きで元いた地点へ飛び込む。頼む、間に合えっ!



 ズガアン! という轟音が鳴り響く。その中に、わずかな金属音を聞いた気がした。



「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ……」


 スタミナが切れて、肩を大きく上下させながら息を整える。

 痛みはない、ということは上手くかわすことが出来たのか。

 サイクロプスを見ようと後ろを振り向いて、気付いた。


「本当に無茶ばかりする奴じゃの、お前さんは」

「んなっ、な、なな……!? なんで……!?」


 俺の目の前に人がいた。サイクロプスの攻撃から俺を守るように、俺と奴の間に立っている。

 その人は血まみれの甲冑をまとっていた。柱の軌道をそらしてくれていたのか、盾を構えている。

 その声は聞き覚えがあるなんてもんじゃ無い、ついさっきまで耳にタコができるほど俺に戦うなと警告してきた声。



「ジョブじいさん!? なんでここにっ!?」

「なんでとは何じゃ、ワシが来とらんかったらお前さん潰されとったぞ多分」


 それは、迷宮の入り口に置いてきた筈のジョブじいさんだった。

 俺は、ジョブじいさんが居なければ柱に潰されていたかもしれないという事実に感謝するなんて余裕は無い。完全に予想外の事態だったもんだから思わす指さして驚くしかできなかった。

 サイクロプスといいジョブじいさんといい、一体全体どうなっているんだ!?


「え、NPCがボス戦に乱入するなんて、ていうか結界は!? あれあるから入れないんじゃ!?」

「えぬぴーしー? 何をいっとるんじゃ、とうとう恐怖でイカれてしもうたか。それにあのもやみたいなものなら簡単に通れたぞ、出られはせんみたいじゃがな」


 なんてこったい、あの結界は中にいる人間を逃がさないために張られてあるだけだったのか。つまり、入る分には問題ないと。

 いやいや問題はそんなことじゃない、今までフリフロをプレイし続けること数年、NPCが一緒に戦うことは数あれど、それはパーティとして仲間に入れなければできないことだったのだ。

 勿論俺はジョブじいさんを仲間にした覚えはない、ジョブじいさんは仲間になるNPCでもない、しかしそれじゃあ目の前の光景に説明がつかない。


「本当になんでここにいるんだ……!? しかもその鎧は息子さんの」

「ふん、自分の言ったことをもう忘れたのか? 元はと言えばお前さんの所為みたいなもんじゃぞ」


 そう言われて、俺はジョブじいさんを置いてくる直前の自分の言葉を思い出した。

 あ、ああ〜。アレか、あの言葉か!? あれがフラグでこうなっちゃったのか!?


「いやちが……。あっ、ちょっと待ってジョブじいさん。俺は別に助けて貰わなくてもいいから……」


 これはマズイ、本当にマズイ。だってこのままジョブじいさんと一緒に戦うとサイクロプスに簡単に勝ってしまう、せっかくの無理ゲー化が水の泡だ。


「……別にワシは助けにきたわけじゃないわい。たった一人の息子を亡くした、父親としての敵討ちに来たんじゃよ」

「いやだからあの言葉は発破をかける為に言った訳じゃないんですけどね!?」


 駄目だ、ジョブじいさんめっちゃいい顔してる!

 なんかもう迷いを吹っ切った主人公みたいな雰囲気出してるよ!? 止めるに止められねえ!?


「ガァアァアア!!」

「こやつが倅を……。覚悟せいよ、ワシの鍛えた武器はそんじょそこらのなまくらとは訳が違うぞっ!」

「だから待って!? じいさぁぁあああん!!!」


 うわああ行っちゃったー!? やめて俺のサイクロプスを取らないでー!

 しかし無情にもまだスタミナが回復しきっていない所為で追いかけることもできない。

 俺はジョブじいさんがサイクロプスに向かって行くのを見送るしかなかった。



「トシアキは下がっとれ!」


 走るジョブじいさんだが、俺と同じく瓦礫まみれの足元に移動が制限され、サイクロプスのもとへ行くのも遅れてしまう。

 だが、一方のサイクロプスは突然の乱入者に動揺したのか、或いはどちらから殺すつもりか算段しているのか、俺とジョブじいさんを交互に見ながら振り下ろした柱を再び構え直す。


「あーあ……そんなに余裕ぶっこいてると……」


 サイクロプスのこの行動は、致命的な隙を生み出してしまった。すなわち、ジョブじいさんがサイクロプスの所へ着いてしまうという隙を。

 まあ敵のうち一人は無手、もう一人は老いぼれ、更には足場は瓦礫という絶対的な優位にあるから油断もしてしまうのだろう。


「そりゃぁ!」


 サイクロプスの正面に立ったジョブじいさんが、奴の右足脛首辺りを切りつける。

 鈍い鋼色の切っ先は、黒々とした肌に吸い込まれるように差し込まれていき……。


 ズパァッ! と血飛沫をあげて切り裂かれた。

 奴の体力が、一気に150程消し飛ぶ。


「ッグガ!?」


 軽々と切られた事と、その痛みによって叫び声を上げるサイクロプス。

 俺の拳よりも遥かに高い殺傷能力、これが武器、フリーダムフロンティアでは必ず装備しなくてはならない物の力である、決してただのロングソードだと侮ってはならない。


 まあ、あのロングソードは『騎士団のロングソード』と言って通常のロングソードより性能が良い武器というのもある、それもこの時にしか入手不可能なユニーク武器だ。

 その使いやすさと能力は、普通にこれ一本でもクリアできる程、序盤から終盤まで多くのフリフロユーザーがお世話になることも多いだろう。


「グギ、ギガァッ!」

「まだまだこんなものでは済まさんぞ!」


 サイクロプスの落ち度はジョブじいさんの危険度を見誤ったことにある、本来なら真っ先にジョブじいさんを狙うべきだった。

 動揺した隙に続けて2撃、3撃と足を切られ、さらに舞う血飛沫。

 さっきと違いゴリゴリと減っていく体力、下手をしなくてもこのままジョブじいさんが倒してしまいそうだ。


「ーーーーッグガァ!」


 しかしそう簡単にはいかない、既に敵をジョブじいさんのみと絞ったらしいサイクロプスは、柱をよこに大きく振りかぶる。

 まずい! あの動作は一番回避が難しい攻撃が……!


「じいさんっ! 防げっ!!!」


「っ!? ぬぅ!」


 咄嗟に口を出したが、果たして間に合ったかどうか。


「ぬあぁあぁあああっ!!?」


 凄まじい風切り音と共に振るわれた柱はサイクロプスの前方をなぎ払い、ジョブじいさん諸共吹き飛ばしていく。

 動作としては単純な『なぎ払い』だが、奴の巨体、得物である柱と合わさって広範囲を攻撃する凶悪な技だ。

 あの技はサイクロプスの体力が減ってきた時、尚且つこっちが前方にいないと使ってはこない技なのだがそれをジョブじいさんが知っているわけがない。


「じいさん!?」


 NPCと分かっていても、堪らずに呼びかけてしまう。あの技は威力も高い、今まで戦っている所を見たことがないジョブじいさんが耐えられるとは思えないぞ……!?


 サイクロプスが巻き上げた砂ぼこりが徐々に収まっていくと、ジョブじいさんを見つけることができた。


「っぐぅ……、ま、まだまだぁ……!」


 いた、教会からかなりの距離を吹っ飛ばされていたらしく、外の広場で膝をついている。

 良かった、間一髪盾で受け止めることが出来たようだ。鎧を着ていたことも大きな要因だろうか。

 しかし、ジョブじいさんの状態はよろしくない、強がってはいるものの確実にダメージが入っているな。


「グゥゥウウ」


 弱っているジョブじいさんを見て、サイクロプスが笑うように口を歪める。

 最早俺は眼中になかった。ズン、ズンとジョブじいさんに向かって歩みを進めていく。


「っくそ! まて、待ちやがれっ!」


 ようやくスタミナが回復して、足元の瓦礫に何度も躓きながらも必死に後を追う。

 しかし追いつけない、当たり前だ。こんな瓦礫は奴にとって石ころにしかならないし、歩幅が違う。

 あっという間にサイクロプスはジョブじいさんのもとへたどり着いてしまった。


 だが、これはジョブじいさんにとってはある意味チャンスでもある。

 今ジョブじいさんがいるのは瓦礫が無い広場だ、つまりその分早く動くことが可能である、なら……!


「ジョブじいさんっ! 背中だ、奴の背中に回るんだ!」


 俺と同じ戦法が使える筈だ、頼む、持ち堪えてくれ!


「う……おおおっ!」


 俺の声が届いたのか、ジョブじいさんはサイクロプスへ向かって再び走る。

 広場で戦っている分、確かに先ほどよりも速い。

 しかし……。


「攻撃がくるぞ! 回避をっ……!」

「ぐあぁっ!」


 再び振り下ろされる柱、そして巨大な足、ジョブじいさんはそれらを躱さずに盾と鎧で受け止めていた。

 いや、躱さないのではない、あれはきっと『躱し方が分からないのだ』。


 俺たちプレイヤーは、何度もやられたってコンテニューが出来る。だからこそ、こいつの倒し方だってやられながら覚えることが出来た。

 俺も初見でコイツと戦った時はかなり苦戦した、しかし、何度も何度も挑戦すればいつどのタイミングで攻撃が来るのか、どういう立ち回りをすれば一方的に攻撃が出来るのか、それが頭で、体の感覚で理解できていく。


 しかし、『この世界こそが現実』であるNPCにはそれが出来ない、出来る訳がない。

 彼らはいつだって初見プレイで、やり直しが許されない。ましてやジョブじいさんの本職は鍛冶師なのだ、もしかすると魔物と戦うのだって初めてなのかもしれない。


 だから躱せない、攻撃のタイミングが分からない、背後に回るまでに敵の攻撃を受けてしまう。

 そして防御に回りつづければ、必然的に動くためのスタミナもなくなってしまうわけで……。


「ぐっ、ぜぇ……はぁ……」

「ガアァァアァァァ!!!」


 ついに膝が折れ、その場に手をついてかがみ込んでしまう。

 やはり、ジョブじいさん一人では倒せなかったか……だが!


「サンキュージョブじいさん! 瓦礫地帯から抜け出せた!」


 ジョブじいさんが時間を稼いでくれたお陰で、俺も広場へ抜け出すことができた。

 漸く自由に動くことが出来る、後は俺に任せろ!


「おりゃあっ! 俺が、相手だッ!」


 ジョブじいさんの方を向くサイクロプスは俺から見れば背を向けているのと同じ、だから簡単に背後まで走って行けた。

 こうなってしまえば後は簡単、またさっきと同じ様に拳でハメ殺してやる!


「一ッ、二ッ、三ッ、四ッ、五ォ!」


 殴る、殴る、殴る。

 今までとは違い一撃一撃に力を込めて殴っていく、与えるダメージは同じ1でも拳に伝わる感触は同じではない。

 一見無駄な事をしてるように見えるが、こうやって大振りに何度も攻撃することで敵の注意をこちらに向けることが出来るのだ。

 

「ジョブじいさんに手出しはさせないッ!」


 そう、こうすることでサイクロプスにジョブじいさんへの攻撃を中断させる、それが俺の目的だった。


 実際に助けてもらっておいて言うのもすごく失礼なのだが、絶対に達成不可能な困難を求める俺にとって、ジョブじいさんによる手助けは正直に言うと余計なお世話だった。

 しかし、ジョブじいさんが助けに来てくれなかったら、あの時攻撃が足にでも当たって死んでいたかもしれない。

 だから、その恩を返すためにサイクロプスの注意を俺に向けさせる。奴の攻撃の全てを俺に向かわせる。


 例えゲームの中の登場人物でも恩義というものは忘れてはいけない、それが俺の不文律でもあるからだ。



「ッググ……」


 自分の足に違和感を覚えたのか、サイクロプスは首を動かして俺の方を向いた。

 よし、目があった。これでターゲットは俺に回る。


 そう思っていた。

 

「ヴグゥ」


 俺を見る目が、サイクロプスの表情が、何故だか嗤っているように見えた。

 そしてサイクロプスは右手の柱を振り上げ、そのまま――――


「――――んなっ……ぐあぁぁぁあぁぁあ!!?」


 ――――『ジョブじいさんに』向けて、振り下ろした。



「じいさんっ!!?」


 そんな、バカな。これでアイツは俺にしか攻撃しない筈なのに、なんで。

 ……いや、バカは俺だ。

 そもそも予兆はあったじゃないか、怒りに狂ったサイクロプスがステージそのものを破壊しつくしたり、俺の言葉に感化されたジョブじいさんが戦闘に乱入してきたり、既に俺の想定外の事は起きていたのだ。

 だから、サイクロプスが俺を無視してでも危険度の高いジョブじいさんを狙うように考えるのも、なんらおかしくない。


「ぜぇ、はぁ、っぐううぅっ!!?」

「ガアアァア!!!」


 ジョブじいさんにとどめを刺すべく、サイクロプスは更に攻撃を加える。

 もう既にジョブじいさんの体力は一桁になろうかという状態、あと一撃でも食らってしまえば一巻の終わりだ。


「させるかぁぁあああ!」


 もう攻撃なんてしてる場合じゃない! サイクロプスを無視してジョブじいさんの元へ走り抜けて行く。

 無我夢中で走り、ジョブじいさんにタックルをするような形で押し出す。救う側と救われる側が逆転した、さっきと同じ展開だ。


「大丈夫かっ、じいさんっ!」

「ばか、ものめ……なぜ逃げんかった……! ワシが、戦っとるうちが……絶好のチャンスだったろうに……」

「なっ!? まさか、じいさんアンタ初めから……」


 ズガァン! と背後で轟音が鳴り、上手く躱したことに安堵しかけるが、ジョブじいさんの言葉に驚いてしまった。

 ジョブじいさんは、勝つつもりなんて無くて……最初から俺が逃げる時間稼ぎの為に、サイクロプスに戦いを挑んでいたと言うのか。

 こんな、ついさっき会ったばかりの見ず知らずの男に、命をかけていたのか。



「勘違いするなよ……ワシとて死ぬつもりはない。じゃが、お前さんに感謝しとるのは……事実なんじゃ」


 息も絶え絶えになりながらも、ジョブじいさんは言葉を繋ぐ。


「お前さんが、発破をかけてくれんかったら……ワシは、自分の息子の仇を取ろうとしないばかりか、あまつさえ他人に任せるような、父親として最低の人間のままじゃった……」


「あの言葉で、ワシは変われた。トシアキ、お前さんはワシの恩人みたいなものじゃ。じゃからお前さんには死んで欲しくはない……」



 ジョブじいさんの独白。

 それは、何千、何万回とフリーダムフロンティアをプレイした俺でさえ初めて聞いた彼の本心だった。

 新しく冒険を始めるたびに一人でサイクロプスを舜殺していたあの時では、決して知ることができなかった本音、それは現実の人間と変わらない、実に人間味にあふれた心だ。


「そっか」


 ジョブじいさんのお陰で、ようやく自覚することができた。

 わかった、認めようじゃないか。

 既にこの世界は、俺の知っているフリーダムフロンティアの世界では無い。

 現実世界と同じ思考回路を持った人間と魔物、それらの要素によってこのゲームはもう遊戯ゲームの域を大きく逸脱し、まさしく別世界に変わってしまったのだ。



 既存の攻略法は、おそらくもう通用しないのだろう。

 縛りプレイをしなくたって、ゲームクリアに手こずるくらい難しくなっているに違いない。

 出会う人々も同じ言葉を一度として繰り返すことはなく、話すたびに会話が変わり、感情を変えていく筈だ。


「なぁジョブじいさん、奇遇だな。俺もあんたの言葉で自分を変えれる気がするよ」


 なら、俺も変わらなければならない。

 人と魔物が争うこの世界を変革するために、この困難を乗り越えるために、自分自身の考え方から変えなければ。

 


「死人に鞭打つようで悪いが協力してくれ、俺もあんたを死なせたくない! 二人でこいつを倒すぞ!」


 もう、この世界をゲームと思うのも、人をキャラクターと思うのも止めだ!

 思いつく限りの手段をもって、攻略法を見つけ出してやる!



「少しまってろっ! 何とか隙をつくる!」


 倒れこんでいた体を跳ね起こし、サイクロプスの方へ向きながら突進する。

 幸いにも、奴は武器の柱を地面に叩きつけたままの姿勢だった。


 よし、これなら最初に試してみたかった事が実行できる!


 その為には兎に角急いであそこまで辿り着かないといけない、間に合えっ!


「っととおっ! よし、ここら辺で大丈夫かな」


 スタミナが切れかかるも、お構い無しに走ったお陰で『その位置』に立つことができた。


「とっ、トシアキ!? 何を考えとるんじゃ!? 『そこ』は奴の真正面じゃぞ!」


 俺が立ち止まった位置を見たジョブじいさんが思わず叫んだ。

 その通り、今俺が立っている位置はサイクロプスの真正面。



 ただし、正確に言うなら真正面を狙って立っている訳じゃあない。

 俺が立っている場所は……。


「グォオオン!!」


 サイクロプスが地面に落とした柱を振り上げようとする。

 それと同時に、俺は『上から押さえつけられる様な』感覚に陥った。そう、まるで上昇しているエレベーターに乗ってるようなあの感覚だ。


「きたきたきたきたぁぁ!」


 上へと登っていく視界に、狙いが当たったことを確信した。

 そう、俺は『サイクロプスが振り下ろした柱の上』に立っていたのである。


 初めにサイクロプスが俺を追い詰めた時、俺は一体どうやってあの瓦礫地帯から抜け出そうとしていたのか、その答えがコレだ。

 空振りして地面に叩きつけられた柱に乗っかって、奴が柱を振り上げる力を利用して上へ飛び、広場まで脱出する、初めはジョブじいさんが助けに来てくれたお陰で出来なかったが、今度は実行できたぞ。

 ……ちなみにこの方法、サイクロプスが持ってる柱がオブジェクトの類だからできる芸当である、奴の武器が棍棒とかだったら、振りあげた瞬間から攻撃判定が発生してしまうので出来ない。


「そしてお次はこうだっ! とうっ!」


 頃合いを見計らい、思いっきりジャンプする。

 流石にここまでは現実と一緒ではないのか、柱の振り上がりの勢いと合わさってサイクロプスの背丈を軽々超える大ジャンプが出来た。


 そして今回は、この場から脱出するのが目的じゃあない。あくまで、奴に隙を作らせるのが俺の目的だ、故に着地場所は……!



「オラァ! その一つ目閉じろや!!!」

「グギャ!!?」


 お前の顔面じゃあああああ!!!

 サイクロプスの顔に覆い被さるような位置に腹から着地(?)、俺の体と同じ位の大きさがある瞳、その瞼にひっ捕まって奴の視界を塞いでやる。


 殴っても、派手に動いても奴の注意は俺に逸れなかった。

 だが、より現実に近づいた今ならこんな風に『現実的な方法』で目を塞いでしまえば、きっといける筈だ!


「グギッ、ギャァ!?」


 突然視界が塞がったのと、目に感じる異物感からか、先ほどと比べて明らかに動揺するサイクロプス。

 奴の足元がおぼつかなくなりぐらぐらと体が揺れ、俺は振り落とされそうになってしまうが両手にしっかり力を込めて踏ん張る。


「ジョブじいさんっ! はやく、トドメを!」

「な、なんて無茶をする奴じゃ……!?」


 ここで落ちるわけにはいかない、サイクロプスにトドメを刺すまで何が何でも持ち堪えなければ!

 ジョブじいさんに呼び掛けて、トドメを刺すように叫んだ。


 その声で、呆然としていたジョブじいさんは我に返り、剣を構えて走る。


「!? グ、オオッ!」

「ぬおっ!?」

「なぁっ!? こ、コイツ見えてないからって、がむしゃらに……っわわ!?」


 だがサイクロプスもまた、諦めてはいなかった。

 顔面に引っ付いている俺を御構い無しに、ジョブじいさんを攻撃しようと当てずっぽうに暴れまくる。


 正確な攻撃ではなかったが、奴は図体のデカさがある。近づくだけでも、柱に掠ってしまえばジョブじいさんはやられてしまう。

 だが、この行動はおそらくサイクロプスはあと少しで倒せるというサインだ。

 こいつは俺を振り払う間にジョブじいさんにやられかねないほど体力が少ないから、見えなくとも攻撃を続けているのだ。


「まずいぞトシアキ! こやつ、ワシの方へだんだん近づいておる!」

「くっそ……! このっ! おらぁ!」


 このままだと最悪ジョブじいさんがやられる!

 俺はサイクロプスの瞼を掴んでいた腕を右だけ離して、ぶら下がったままの体制で拳で殴りつける。


 どむ! どむっ! と柔らかく湿っぽい感触が右こぶしに伝わる、サイクロプスの巨大な一つ目を何度も、何度も殴る、しかし……。


「流石にっ、(ダメージ1)じゃあ痛みは与えられないのか……!?」


 一見して凄まじい痛みを与えれそうに見えたが、サイクロプスの動きに一切の変化は見られない。

 ここにきて、素手という縛り要素が足を引っ張ってしまった。


 フリーダムフロンティアでは、大きなダメージを相手に与えることにより相手の体に傷を透けることが出来る、通称『ダメージエフェクトの法則』というルールがある。

 要するに大ダメージを与えれれば相手が痛がったり、体に傷を残してその後の戦闘に支障をきたせるというものだ。

 裏を返せば『大ダメージでなければ相手の体に傷一つつけることは出来ない』。

 つまり俺には、敵を傷つける手段がない。 



「ガァァアアア!!!」

「やめろっ! とまれっ! こっのおおおおおおお!!!」


 フラフラと歩みを進めるサイクロプス、無駄だとわかっていても俺は無我夢中で拳を振るう。


 いや、無駄じゃない! 無駄にしてたまるか!

 あと少しの体力なら、拳だけでも削り殺せるかもしれない。

 なにがなんでもこの困難を、ジョブじいさんと一緒に乗り越えてみせるのだ。

 

「くっ、こうなればワシが玉砕覚悟で突っ込むしかないか……!」


 止まれ、止まれ、止まれ!

 以前よりもよりリアルに変わったんだろう! 現実に近づいたんだろう!

 なら、この拳で敵を倒すことだって不可能じゃあない筈だろ!

 変わるなら、徹底して現実的に変わってみせろよぉぉぉ!


「う お お お お お お っ !!!」


 どむっ! どむっ! どむっ!


 何度拳を打ちつけたか、それすらも分からなくなるほど必死で殴り続ける中――――――


 どむっ! どむっ! どむっ!


 ――――唐突に、グニャリと自分の中の『何か』が、ねじ曲がったような気がした。



 グチャアッ!!!


「――――ぇ?」 


 その瞬間、右手に伝わる感触が変わった。

 ゴムに弾かれるような感触が消え失せて、やけに手ごたえがなくなって、そして生温かくて………赤い?


 「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!?」


 絶叫、雷が傍に落ちてもここまでの音は出せないだろう、そう思えるほどの轟音がよりによって俺の目の前から発せられた。

 咄嗟に耳を塞ごうとして、俺の右手がサイクロプスの目玉をずぶりと貫通してしまっていることにようやく気付いた。


 え、なにこれ。

 なんで俺の腕、普通に攻撃できて……ていうか痛い痛い痛い!?

 耳が!? なんかうるさい通り越して痛いんだけど!? 塞ぎたくても右手は抜けないし左手は掴まってるから使えないしオマケにサイクロプスの目からドクドク血が吹き上げて気持ち悪い!!?


「ギャアアァァアァ!!!」

「うるっ……さ……、ぃ」


 あ、駄目だ、耐えられない。

 聴覚的にも、視覚的にも、これはきつ過ぎて……意識が……。


「ぬぉぉおおお!」


 意識を手放す瞬間、ジョブじいさんの雄叫びと、ザシュッという肉を切り裂く音が聞こえた気がした。


「アアアアアア―――――ァ?」

「ぜぇ、はぁ……! これで、終い……じゃ」




――――チュートリアル『門番サイクロプス』クリア。








 本当にチュートリアルなのか疑う程難しかったサイクロプスとの死闘から丸々一日がたった。

 というものの俺には丸一日過ごした記憶はない、サイクロプスとの戦闘、主にに断末魔のせいでその後一日中気絶していたからだ。


 ちなみにゲーム内で気絶した場合、プレイヤーは近くにいるNPCに保護され、NPCの自宅のベッドに寝かされる事になる。

 例え丸一日寝込んでいたとしても、ベッドに寝かされると時間がスキップされて一瞬で体力が回復するような仕様だ、だから現実では24時間経っているわけではない、まあ多少は時間が経つけど。


 トドメを刺したジョブじいさんが言うには、体のあちこちが骨折打撲まみれ、鼓膜は完全に破けて耳から血が流れてたとかなんとか。それでも、廃墟になった村にたまたま残ってた回復薬ポーションをぶっかけたら治った。

 …………現実世界寄りになってるとはいってもまさかここまで現実的に重傷になるとは思わなかった。よく生きてたな俺、そしてポーションすげぇ。


「ありがとうな、ジョブじいさんも怪我してるのに」

「ワシは鎧を着とったからな、大した傷は負っとらん。それより、もう行ってしまうのか?」


 怪我も全治した俺は、出来るだけ早くフラーロクス村を出発しようと考えていた。

 理由としては、当分の間はこの村でイベントは起こらないから、さっさと別の場所へ進もうという意思が半分。

 そしてもう半分は……。


「ああ、早いとこ他の村に逃げてった此処の人達に『フラーロクス村は安全ですよ』って伝えときたいし。後から魔物が来ても大丈夫なように騎士団に守ってもらわないといけないからな」


 そういうことである、ちなみにこれはサブクエストというやつで村の人達が帰ってくる度にフラーロクス村は復興してゆき、お礼のアイテムを貰えたりするのだ。

 まあアイテムがあろうとなかろうと、ジョブじいさんが住んでいるこの村を復興させてあげたいし、以前と違って本当に魔物が再び来るかもしれないから対策くらい立てておきたい。


「というか、こっちこそごめん。復興の手伝いあんまり出来なかったし……」

「たかが若造一人の労力に期待なぞしとらんわ。ワシの家を片付けてもらっただけで十分生活できるわい、大分荒らされてしもうたが畑もいくつか残っとるしの」


 村の出口である高台から、フラーロクス村を見渡す。民家の大半は焼け崩れていたり瓦礫の山になっているが、それでも2、3件ほどの建物は殆ど無傷だった。

 そのうちの一つが、ジョブじいさんの家であり鍛冶屋の工房でもある、どうやら魔物たちは自分たちにとって『使える』施設は壊さないように残しておいたらしい。中も多少は荒らされていたが、少し片付ければ再び鍛冶屋として再開できるそうだ。


「まあ、鍛冶仕事を始めたところで当分は商売も出来んじゃろうがのう……なんせ村人はワシ一人じゃしなぁ~」

「もしかしてジョブじいさん、俺に残ってほしかったりすんの?」 

「そんなわけあるかい、おまえさんが残ってもなんの稼ぎにもならん。旅をしとると聞いた割に金をもっとらんとはな……。さっさと村の連中を呼び戻しに行けと言うとるんじゃ」

「へいへい。最初の瓦礫の件と言い、まったく人使いの荒いじいさんだ」


 せっかくサイクロプスを一緒に倒したというのに、相変わらずの憎まれ口である。

 だがまあ、これもジョブじいさんなりに俺を応援してくれているという事なのだろう、近くの村にたどり着くだけの食料や回復薬をきっちりくれた辺りじいさんがツンデレという可能性もある。


「ところでトシアキ。村を出ていくというなら『コイツ』を持って行け」


 そう言ってジョブじいさんは自分が着ている鎧と武器をコツンと指で突ついた。

 流石はジョブじいさんだ、まさかサイクロプスを倒した後でもまだ勧めてくるか。


「この村は暫く安全とはいえ、今は戦時中じゃ。旅をするにも備えが必要じゃろう」

「すまないじいさん……俺、正直加齢臭が漂う武具はちょっと……」

「加齢臭いうなっ! どこまでもぶれんなお前さんは! そこまで装備したくないのか!?」

「だってさ、ソレ、息子さんの形見だろ。村を散策しても息子さんは見つからなかった訳だし、そんな大事な物をもらう訳にはいかないよ」

「むぅ……」


 半分以上本心で俺はジョブじいさんの提案を断る。

 まあこの世界が現実世界寄りになったって、俺はこの縛りプレイをやめるつもりはないけれど。


「それにジョブじいさんも見ただろ? 俺の拳がサイクロプスの目玉を潰したの。アレがあるからこの先俺に武器もいらないって」

「それもそうじゃが。……というかアレは一体どうやったんじゃ? 素手で相手を傷つけるなんてワシは初めて見たわい」


 最後の最後、サイクロプスに決定的な隙を生み出すことのできたあの一撃、それについては俺もよく理解することが出来なかった。

 ダメージが1である俺の拳が、なぜ傷を生み出すことが出来たのか……今まで何時間もプレイしてきたがこんな現象は初めてである、これについても後々検証していかないといけないな。

 まあ、今は上手い事ジョブじいさんからの提案を断らせてもらう材料にしておくとしよう。


「さてね、俺もよくわかってない。――――っと、もうすぐ日が明けるな。それじゃあ、行ってくるよ」


 そうやって話していると、東側の空が明るくなっていた。

 夜明けとともに村を出発する予定だったから、そろそろ行かなくては。

 とりあえず、目指す場所はフリーダムフロンティア最大の都市、フィアレス王国の首都へ行ってみよう。

 あそこへ向かう道中にはイベントも結構多いし、より現実的になったフリフロを十分に堪能できるはずだ。


「お、おい待たんか!? 鎧と剣ホントにいいのか!? タダじゃぞ! ワシがくれてやると言っておるんじゃから受け取れ! というか着けていけ頼むから!」

「だからいらないって! ホント職務に忠実だなジョブじいさん!?」

「何が職務か! ワシは鍛冶屋じゃ! そしていい加減ワシの名前を覚えろ!」

「悪い悪い――――『ジェイムズじいさん』! また来るよ!」


 怒鳴るジェイムズじいさんを背に、俺は走って村を飛び出す。

 嗚呼、抑えきれない。これから先、どんな困難が待ち受けているんだろうか!

 チュートリアルですらあの難易度だ、きっと、きっと勝ち目すら見えない戦いが、冒険があるに違いない!


 俺はこの縛りプレイでとことんフリーダムフロンティアを楽しんでやる――――






「ほ、本当に、いってしまった……。トシアキの奴、最初から最後まで、武器どころか服すら着ないで行ってしまったぞ……!?」


 ――――前代未聞の『武器防具装備禁止縛り』でな!!!

ここまで全てふんどし一丁。

次の投稿で、あらすじを変更します。

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