娯楽の方向性
娯楽性についてはいくつかの方向性があるように思う。
まずざっくりと2種類に分類できる。
続きが楽しみなものと、読んでいて楽しいもの。
続きが楽しみなものに関しては、とにかく期待を煽ることが上手い。悪者が倒される期待だったり、恋愛で相手に口説かれる期待だったり、謎がさっぱり綺麗に解決されることへの期待だったり。
いずれにしろ、読者の需要をしっかり理解し、相手の欲しがるものを提示する技量が高い作者こそ優秀だと言えるだろう。
読んでいて楽しいものは、読者とある程度波長が合っている必要がある。ある人にとってはとても楽しい小説であっても、ある人にはとても退屈なものである可能性が高く、万人に受けるものというのはそうそう存在しない。
その上で、日常をいかに劇的に描けるか、美しく描けるか、残酷に描けるか、などの描写力が問われる。
読んでいる間楽しめるタイプがいいか、常に先を期待できるものがいいか、この2つのいずれの方向性を目指すかは悩ましいところだ。
演出力の美しさはやはり期待を引っ張る方。しかし全体のまとまりや長編における魅力は、読んでいて楽しい方が勝っているように思う。
期待を引っ張るタイプと、全体で盛り上げるタイプでは話の構成に違いが出る。両方同時にレベルが高い作品もあることにはあるが、それ自体がひとつの作風になるというか……両方を同じだけ高いレベルに押し上げることが最良とは思い難い。
一度、両方に挑戦してみて、どちらが向いているかを確かめてみるのもいい経験になりそうな気がする。