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漆黒の風  作者: ST
三章 黒風の通る道 王宮襲撃編
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4話 残酷な口封じ

「何者!?」



 斧を持った男は突然の攻撃に吹き飛び気絶する。

 その様子に一気に警戒のレベルを上げた三人は構え、一人がそう大声で叫ぶ。


 セレーナはここで自分が助かった事を確信した。

 先ほどまでは恐怖で気付かなかったが、今自分の後ろに魔力を感じている。

 それも強大な魔力である。



「なんかピンチそうだな」


「……はい」



 そう、後ろに立っているのは黒髪黒目に紺のロングコートを着たヤマトであった。

 突然の新手の出現に襲撃者の三人は警戒している。


 ヤマトはそのままセリーナの前に盾になるように出て、三人を凝視。

 するとヤマトは微笑んだ。



「なあ……シードは元気か?」


「「「!!?」」」



 ヤマトの言葉に一気に三人は固まる。

 それが数秒続き、不意に一人の男がわめきだした。



「な……その名をどこで!?」


「さ~てな」



 ヤマトは男の尋ねに惚けてみせる。

 そんなヤマトと三人の様子にセリーナは何が何だか分からないで居た。



「ともかく、貴様は生かしておけん」



 その言葉を最後に三人は一気にヤマトに突撃してきた。



「とっ捕まえてあいつの居場所を吐かしてやる」



 ヤマトも自らに二重身体強化デュアルチャージングを施し、三人を迎え撃った。


 一人は手に持ったナイフをいくつか投げるが、ヤマトはそれを自らの周りに風の竜巻を纏わせて弾く。

 すると、双剣の男がヤマトに乱舞を繰り広げようと腕を振るう…前にヤマトがその両腕の手首を掴んだ。



「何!?」


「そら!」



 ヤマトはそのまま男の腹に蹴りを入れて、男をぶっ飛ばす。

 その様子に驚くような悲鳴を上げる棍棒を持った男に近寄りヤマトはそのまま足払いをする。



「くそ!」



 だがその男はそれを辛うじて避けてみせる。

 するといつの間にか最初にナイフを投げた男がヤマトの後ろに回りこんでいた。

 そして、残った二人がそのまま挟み撃ちでヤマトに襲いかかる。


 それに多少驚いてみせるヤマトはふっと笑って身体を逆立ちさせてそのまま回転する。

 俗に言うカポエラー、ヤマトは逆立ちの状態から回転蹴りを二人の顔面に放った。


 ナイフを持った男は咄嗟に身を引いて逃れるが、棍棒を持った男は間に合わずモロに喰らってしまう。

 そのまま顔面で蹴りを受け止めた男は沈んだ。

 これで残るはこのナイフ男だけである。



「いい加減諦めてもらえれば嬉しいんだけどな」


「うるさい!」



 ヤマトとしてはこのまま勝負を続けたところで結果は目に見えている。

 だから降伏を勧めてみたつもりだったのだが、男はそれを挑発と受け取ったようだ。



「はあ……。仕方ない」



 ヤマトはそのまま風の塊をいくつか男に向かい打った。

 それを中々俊敏な速さで避けていくがヤマトのスピードの方が勝ったのか、男の懐にすぐにヤマトは潜り込む。



「ほら」



 ヤマトはそのまま男に向かい手に留めた風の塊をぶつけて、弾けさせる。

 男は他の者のようにこれまた盛大に吹き飛び気絶した。



「すごいわね……」



 そんな戦いっぷりにセリーナは言葉を漏らした。

 確かに武道大会を制したヤマトならば当たり前のことかも知れないが、あの熟練者を思わせる四人に刀さえ抜く事の無かったヤマトの実力を改めてセリーナは思い知った。



「姫さん。大丈夫だった?」



 セレーナがポカンとしているとヤマトが声をかけてきた。

 そうこうしている間にヤマトは四人を縛り上げているようでその対処をどうするか相談したいと言う。



「王都に連行したいのだけど…馬車に乗せられるかしら」



 運良く馬車は傷ついてないようで、まだ動けそうだ。

 セレーナは自らのせいで兵の大半が殺された事に心を痛めているのか顔を顰めて兵の死体に黙祷していた。



「――悪いな。もう少し早く来れれば良かったんだけど」


「……仕方ありません。それにヤマトには助けられたし礼を言わないといけないわ」



 目に涙を溜めながらありがとうと言ってくる王女にヤマトは自らの評価を改めた。

 最初はセリーナの事を立場ゆえに面倒そうだと思っていたのだが、どうやら人としての礼儀は備えているようである。



「いいって。それより姫さん、こいつらはやっぱ王都に――」



 ヤマトが言葉を言いかけたとき、セリーナがハッと振り返る。

 そしてヤマトも遅れてだが魔力を感じ取った。

 その魔力の中心地には先ほど縛った四人がいる。



「まさか!」



 ヤマトはすぐさま駆けつけようとするが、遅かった。

 何と四人の下から土の槍がいくつも現れ、様々な角度から四人を貫いたのだ。



「何て事を……」



 セリーナはあまりの残酷さに絶句する。

 だが、ヤマトは別の部分で絶句している。



(今のは干渉魔法、それもかなりの魔力操作だった。俺の耳に詠唱は届いてないし無詠唱か……)



 ヤマトはすぐに感知魔法で敵の居場所を探すが既に逃げたようである。

 ヤマトは小さく舌打ちして、セリーナに振り返った。



「悪い。逃がしたみたいだ」



 セリーナは目を開いたまま呆然としている。

 自らの兵が全滅し、襲撃者に襲われ、助けられたはいいが、襲撃者達は目の前で残酷に殺されたのだ、無理はないかもしれない。



「あの人達は一体…」



 セリーナからすれば分からないだらけだろう。

 ヤマトですら何が狙いなのか分かっていないのだから。


 だが、“奴ら”がセリーナを攫おうとしていることは分かった。



「とりあえず王都を目指そう。俺が今から姫さんの護衛になるからさ」



 まずは王都に戻って情報を集めよう。

 ヤマトはそう思い、セリーナと共に王都を目指す事となった。





読了ありがとうございました。

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