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漆黒の風  作者: ST
二章 災厄の予言
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最終話 約束を果たす為に

遂に第二章も最終話です。

これにてハール編は終了。

ハールがミレーヌを訪れから五日が経った。

今、ハールとソールとルーナはスクムト王国内をミレーヌの示した道から抜け、パドン国への街道を歩いている。

街道は風は静かに吹き、草は僅かながらに揺れ、土の匂いがする。

その道中、ハールは父から貰った手紙を眺めていた。

その内容は次のようなものであった










<ハールへ>


お前がこの手紙を読んでいるのならば、俺はおそらく何らかの理由で使命が果たせなくなったという事だろう。


もし俺がお前の傍に居なく、何処に行けばいいか、何をすればいいか分からなくなったのならばスクムトの端にあるロームの街を訪れなさい。


其処には俺の昔からの知人であるミレーヌという女性が住んでいる筈だ。


彼女ならきっと力になってくれる。


さて、俺はここに今までの俺の秘密を記そうと思う。


まず、なぜ俺がスクムトを出て旅をしていたか。


それは俺の父である国王ノーツが俺に頼んだ事なんだ。


“例のモノ”……古代兵器の鍵と思われる銀水晶。


それが何とスクムト王国の隠し部屋で発見されたんだ。


勿論、最初は厳重に保管してあったのだが、ある時……事件が起きた。


それは、第一王子の妃……サンの殺害だ。


犯人の目星はついているが、何分証拠とその消息が探し出せ無くてな……。


おそらくサンをその銀水晶との交渉条件にしようと考えたんだろう。


しかし、サンは抵抗したのか結果的に殺されてしまった。


国王である父は二度とこのような事を起こすべきではないと、俺に銀水晶を持って逃走するように命じたのだ。


最初はその通りに動いていたのだが、“奴ら”の動きと情報収集も迅速でこのままでは銀水晶を持っての逃亡が見つかるのも時間の問題だった。


そこで俺は銀水晶を思い切ってある人にまかせる事にしたんだ。


ある人が誰かはこの手紙が第三者に渡る恐れがある為に詳しくは言えない。


だがハール、お前ならもう分かるんじゃないか?


そして、もう一つ伝えたい事がある。


それは、おそらく“奴ら”は古代兵器を狙っているという事だ。


もし“奴ら”にそれが渡ればこのユスターヌ大陸は終わりだ。


だから俺は保険をかける事にした。


さっきも書いたが、この手紙が他の者に渡る可能性もあるので詳しく記せない事は本当にすまない。


しかし、ここで書かれている事をハールが見たのなら、俺のかけた保険が存在することは心に留めておいてくれ。


万が一の場合はそれをお前が見つけ出して、俺が渡したもう一つの物、黒魔晶石を使ってくれ。


これは、俺のかけた保険を起動する鍵のようなものだ。


実際はこれを使う事の無い事を願うがな。


俺の伝えたい事は以上だ。


長くなったが、最後に言う事がある。


お前は一人じゃない……それを忘れるな。


行き詰った時は自分の胸にある思い出を思い出してみろ。


俺はお前を信じているぞ、ハール。


<お前の父、ハザンより>










ハールはこれを何度も読み返す。



(最後に付け足した言葉……。あの時と一緒の言葉を言ってるね)



ハザンが“ノア”に切り捨てられ、ハールに力を振り絞って声をかけた中でも一番最後の言葉はハールの中では今でも鮮明に残っている。

そして、それは手紙の最後の言葉と全く一緒だったのだ。



(……参ったね)



漆黒の髪と瞳の青年に邪神を復活させられるだけでなく、“奴ら”も古代兵器を狙っていると言うのだ。

正直八方ふさがりである。

ハールはハザンから送られたもう一つの物、黒魔晶石に目をやる。

その石は魔石で出来た水晶の様な、真っ黒な石。

それを見ながら、ハザンとサンに意志を継ぐと誓った事を思い出す。

ハールは絶対にやり遂げる事を心に決めた。



「ソール、ルーナ」



不意にハールに話しかけられた二人は一瞬だけ驚き、すぐに「はい」と返事を返す。

そんな二人に多少躊躇しながらも言葉を続けた。



「これから先は、もしかしたら絶望的な旅になるかも知れない。だから、二人は僕と離れてもいいんだよ?」



ハールはこれ以上幼い二人を巻き込みたくなかった。

故にハールは二人に自分と離れるように言ったのだが、二人の取った行動は真逆。

二人は後ろからハールに抱きついたのだ。



「ハール様……。そんな事は言わないで下さい」


「私達は何処までもハール様に付いて行くから」


「二人とも……」



涙ぐみながら語る二人にハールは危うく涙腺が決壊するところであった。

それを寸前で補強して、ハールは二人に笑顔を向けた。



「二人ともありがとう」



二人はこれに顔を赤面させながらさらに強くハールを抱きしめる。

それに苦笑しながら二人の気の済むまでその状態を許す。

そして、二人が大分落ち着いたのか、身を離してハールに頷く。



「よし!」



ハールはここで自らのふんどしを締めなおす。

今まではハザンの旅についていく様な感じだったが、今度は違う。

今度はハールが行き先を決め、旅をする番であった。



「二人とも。いこうか」


「「はい!」」



そして、三人は歩き出す。

古代兵器が“奴ら”の手に渡らぬように、謎の青年が行うであろう邪神復活を止める為に……。

そして……。



(……必ず仇を討つ! 待っていろ!! “ノア”!!)





……そして三人は街道の果てに姿を消したのであった……。

  









   二章 災厄の予言   ===完===





第二章「災厄の予言」も終了。

この後のハール達は裏に潜り情報を探っていきます。


さて、二章も終わり次は三章に突入します。

予告をしますと三章は時間軸も一章の終わりに戻ります。

第三章「黒風の通る道」、成長した彼がフィーリア王国へと入国し途中貴族の陰謀や武道大会に出くわし、フィーリア王国の騒動へと巻き込まれていきます。

そしてその先に見る光景は……。


読了ありがとうございました。

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