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漆黒の風  作者: ST
二章 災厄の予言
33/123

プロローグ

二章公開。

時代はヤマトの旅立ちから十一年前です。


「ハール…。王宮内では走ってはいけませんよ?」


「は~~い」



 とある王宮内の装飾されたなんとも華美な廊下を走り回る一人の幼い子どもを高貴な服装の女性が注意する。

注意をされた少年はしぶしぶと云った様子で返事した。



「ハール。元気がいい事はとても良い事だけれども、廊下で走れば他の人の迷惑になるでしょう?」



 女性は少年の頭を撫でながら、天使の様な優しい表情を浮かべる。

少年はそれに気持ち良さそうに目を細めて一回頷く。


 この女性の名はサン。

薄く綺麗な赤色の瞳を携え、赤みがかった金髪をウェーブさせて青と白色が主体のドレスを着ている。

そしてその女性に頭を撫でられている少年はハール。

青色の髪に瞳はサンと同じ薄い赤色。

蝶ネクタイをして白いシャツを着て黒のズボンについている紐のようなものを肩に通している。


この二人は何を隠そう王宮の王子の妃とその子どもである。

故に廊下で子どもが走りまわっても、その近くを通るもので叱るものはほとんどいない。

むしろ微笑ましい光景に頬を緩めていた。



「さて、ご飯を食べに行きましょうね」


「は~い」



時間は既に夕方過ぎ。

二人は食事を取る為に王宮の王家の使用する食堂へ赴いた。


 その表情はとても幸せそうなものである。





     ★★★





二人は食堂に着くとそれぞれ席につき、食事を始めた。

食堂の中は大きなテーブルに白い布が被せられ、壁にはいくつもの絵画が飾ってある。

壁の色は赤と茶色が主体のいかにも王宮という感じを醸し出していた。

しかし、現在その部屋に居るのは二人だけである。


この国には王と二人の王子がいる。

その内の一人、長男のハザンがハールの父であるのだが、どうやらここには居ない様子。

ハザンは王子でありながら有名な剣士でもあり、この王宮でも一番の実力者であった。

しかも人徳もあり、次代の王の最有力候補である。


その父、現国王のノーツは温厚な人柄で民の事を優先的に考える王である。

現国王がついてからこの国は安定してきて、戦争、内乱なども今だ起こっていなかった。

しかし、ハザンの弟、第二王子のバベルはいささか過激であった。

バベルは自らの父が甘いと主張する。

さらには軍事強化を施すべきだとも主張した。


しかし、ノーツはかたくなにこれを拒否していて、バベルはしぶしぶではあるが主張こそすれ自らの考えを実行に移そうとはしていなかった。

そんな二人はおそらく会議室の方にでもいるのではないだろうか。



「おかーさん。食べ終わったよ~!」



ハールが元気良く全部食べたことを母親にアピール。

それに気づいたサンはハールの頭を撫でる。

そしてハールは気持ち良さそうにそれに目を細める。

そんな光景はハールが物心ついた時からのものであった。



「さて、今日は寝なさい。明日からまたお勉強よ」


「え~~~~」


「え~、じゃない!」



そんないつもと変わらない他愛もない話を繰り広げて、二人は寝室に向かう。


……そんな微笑ましい光景が最後である事など夢にも思わずに…。





     ★★★





「おやすみなさ~い」



ハールはサンと一緒に寝室に入り、二つあるベットの内の一つに潜り込み、すぐに寝息を立てる。

今夜はいつも静かな夜の筈なのに、風がビュウビュウと音を立て、窓を激しく揺らしている。

王宮内が寝静まり、風の音だけが聞こえるその部屋でサンは胸騒ぎがしてならなかった。



「お休みなさい…。ハール」



それが杞憂であって欲しいと思いながら、サンもハールの寝顔を見てからベットに入ろうとした。

しかし、そんな時不意に部屋の窓が割れて盛大な音が鳴った。



「…! 何者!!」



サンは窓の方に振り向く。

すると窓の傍に一人の人物が立っていた。



「ここに“例のモノ”がある筈だ…。それを渡せ…」



その人物の姿は影に隠れて良く見えなかったが、声からして男と思われる人物がサンに向かい、何かを差し出すように促し、そして手を伸ばす。

しかし、サンには男の言っている“例のモノ”という言葉の意味がが分からなかった。



「“例のモノ”…? それにあなたはいったい…」


「………。第一王子の妃でも知らんか…。まあいい。人質には使えるだろう」



男がゆっくりと歩いてくる。

どうやらこの男は自分や国に害をなす者であるらしい事がその言葉から分かる。

サンはハザンに持たされた護身用のナイフを後ろから取り出し、男の隙を窺った。

そんな時、窓の割れる音を聞きつけたのか誰かが此方に駆けて来る足音が聞こえてきたた。



「ほう…。動きが速いものだな。さすがは三大国といったところか。ここで正体をバラすのはいささかまずい」



男はこれ以上ここに居る事を良しとしないようである。

そう吐き捨てた男は急いで窓に駆け寄ろうとしていた。

そこで出た隙をサンは逃さなかった…。



(この男はもしかするとこの国にあだ名す存在となるかもしれない)



ならばここでやるしかないと勢い良く男に駆け寄り、サンはナイフを突き出した…。





     ★★★





「う~ん……」



自らの寝室で、多くの人の声がしていることでハールは目を覚ます。

起き上がって見ると何人もの人が窓の傍で群がっていた。

そしてその中心には少年の父ハザンが居た。



「おとーさん、どうしたの?」



ハールはまだ眠そうに目を擦りながらも、訓練用の身軽な服を着ているハザンに近寄っていく。

するとハザンの下には、血溜まりを作り、横たわっているサンの姿があった。



「おかーさん…?」



ハールは幼い為すぐには状況が理解できないで居た。

現に最初は寝ているだけだと思っていたのである。



「ハール………」



そんな少年、ハールに父であるハザンはたくましいその顔を歪ませハールを抱き寄せる。

ハールも何時までも起きない母親を不振に思ったのか母親を凝視する。

様子がおかしいと悟ったハールは父から離れ、サンの下に寄る。

何度もサンを揺す振るがまるで微動だにしない。



「王子…。サン様は一体誰に……」


「………。これを見てくれ…」



ハザンは顔を覆いたい衝動をやっとの思いで押さえて、サンの手の辺りを指差す。

其処には文字が書かれていた。



「“例のモノ”…。一体何のことでしょう…」


「………………………」



一人の文官の疑問に心辺りがあるのか、ハザンは顔を顰める。

その傍ではハールが何度も母の名を呼んでいる姿が見えた。

王宮内ではサンが何者かに殺された事で、騒がしくなっているにも関わらず、少年の叫ぶ母親の名は王宮に響いていた。


……何度も、何度も響いていた…。





二章は一組の親子が旅をする話です。

駄文ですが何卒ご容赦を。

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