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漆黒の風  作者: ST
一章 旅立ち
30/123

29話 強くなる為に……

いよいよ第一章も終わりに近づいてきました。

翌朝、ヤマトは目を覚ました。

辺りはまだ静かで…いや、ザックがいびきを掻いているがそれ以外は静かであった。

サイは既に起きているらしくベットにはいない。

部屋にも居ないところを見ると、おそらく風呂にでも入っているのだろうか。


ヤマトはベットから出て、顔を洗う。

冷たい水が自らの顔にかかり眠気が次第に覚めてきた。

冷たい水を浴びながら、ふとヤマトは夜中のことを思い出した。



(――まさかあんな事になっていたなんてな…)



それはヤマトがアルとカーラの二人を付けていた所から始まる…。





     ★★★





=====夜中=====





アルとカーラは寝静まった夜中に宿屋を出てどこかに向かっている。

それを後ろから尾行しているのはヤマト。

二人を尾行していると、どうやら大通りを出て人気の無い裏道に入って行った。



(何で裏通りなんだ?)



内心疑問に思いながらも二人についていく。

街の騒動もあってか裏通りも荒れていて、人の気はゼロ。

そんな裏通りを歩いていく二人。



(何かあるのか…?)



そうして忍び足を緩めず背中を追うが不意に二人は止まった。



「――ヤマト。こんな夜中にこんなところに居るのは感心せんのう」


「…やっぱ気づかれてたか~」



見事に尾行が失敗していた事を悟った。

ヤマトはそのまま肩をすくめながら二人に姿を見せる。

どうやらカーラにも気づかれていたようで少しばかり苦笑している。



「もう少し上手く気配を隠さないとな」


「へ~い」



カーラの忠告に若干不貞腐れる。

自分としては上手く隠していたつもりだったのだが、この二人には意味を成さなかったようであった。



「さて、ヤマト。悪いがお前さんは帰りなさい」



アルはこの場にヤマトを置いておきたく無いらしく、宿に戻るように促す。

しかしヤマトは動かない。



「俺にも聞かせてくれよ。今日の事が深く関わってるんだろ?」



どうにも足を動かさないヤマトにアルは溜め息をついた。

それを見て好機と取ったヤマトはさらに駄目押しを仕掛けた。



「それに今日のあの男、シードが気になる事も言ってたし俺も聞きたいんだ」



決意を秘めた目でアルとカーラを見つめる。

この様子にアルは二回目の溜め息をついて観念した。



「仕方ないのぅ。他言無用じゃぞ?」


「いいんですか?」


「仕方ないじゃろうて…」



アルはヤマトに近寄るように呼びかける。

ヤマトは自分にも教えてくれることに顔を輝かせながらアルに寄っていった。


三人の聞く準備が整ったのを確認したアルは深刻な顔で語り始めた。



「今回の事件なんじゃが…実は奴ら、シードと名乗る男が画策したと思われるのじゃ」


「は…?」



ヤマトはアルの急な言葉に呆気に取られた。



「あいつが…やっぱり金目的かな…?」



そうは見えないと思いつつもそれ以外が考えられないのでとりあえず口に出してみる。

その答えとしてアルが出した言葉は予想外のモノであった。



「いや、奴らの目的はわしじゃろう」


「な…!?」



ヤマトはそこで驚くがカーラはやはりと云った顔をしている。

その様子を気にしないようにアルはさらに言葉を繋げた。



「わしと言ってもわし自身では無いぞい?」


「…どういう事だよ」


「奴らの目的は“これ”じゃ」



アルはローブの下から“あるもの”を取り出した。

それは神秘的な銀色を帯びた水晶であった。



「これは…?」



確かに見た目は神秘的だが、それだけである。

金目的でないのならこれにどんな価値があるのかが分からなかった。

しかしアルの表情はとても険しいものに変わっていく。


「これはな、八年前に“ある奴”から渡されたものでのう。“古代兵器”の鍵の一つじゃ」


「“古代兵器”!!?」



“古代兵器”、何百年も昔に邪神が復活したときに一人の英雄が邪神を封印したときに用いた人類が使用する最強の兵器と呼ばれるものである。

形や詳細などは全く不明ではあるがその力は邪神に匹敵する程のものであると伝えられている。

よってあまりに危険な力とみなされ邪神と共に封印されしものであった。



「なんであいつは…」


「あいつ…というよりは“奴ら”と言った方がいいだろう」



カーラが深刻な顔付きで呟く。

その言葉にヤマトは嫌な考えが浮かんでくる。



「まさか、集団で狙っているのか!?」


「そのとおりじゃ」



アルは表情を変えずに頷く。

あんな奴らがまだ他にも居るとなるとヤマトは身震いを覚えた。

シードはマストを発動させた状態でも動きを追うだけで精一杯であった相手なのだ。

マストが無ければ瞬殺であるのは間違いない。

そんな輩が他にもいるかもしれないとなると若干の恐怖がきてもおかしくは無いだろう。



「でもなんで急に?」



今まででも狙うチャンスはあった筈である。

なのに今日に初めて襲われた事に疑問を持つ。



「実は二年前も襲われたんじゃぞ?」


「え…?」



アルが苦笑いしながらさらりと発言した。

ヤマトは二年前を必死に辿ってみる。

そして答えを見つけた。



「――まさか…!」


「そうじゃ。村が盗賊に襲われた時じゃ」



それは二年前にヤマトが魔力覚醒を起こした時のことであった。

あの時、確かにシードと同じ黒のローブを羽織った男が家の裏に現れたのだ。



「あの男も“奴ら”だってことか…」



確かにそれならあの男があそこに現れた事にも説明がつく。


アルは魔道士としても冒険者としても最強の部類に入るのは間違いない。

そんなアルと真正面からぶつかるのを避ける為に、おそらくは盗賊を用いて隙を作り、銀の水晶を盗もうとしたのだろう。

最も、それは思わぬイレギュラーであったヤマトに阻止されてしまったのだが…。



「実を言うと、わしが場所を移しながら冒険者のように生活しているのはお前さん達を鍛える以外にも“奴ら”に居場所を特定されない為でもあるのじゃ」


「…だから盗賊が現れてからはすぐに旅立つと言ったんだな」


「そういうことじゃのう」



アルはそこで言葉を切る。

そして少しばかりの沈黙が起こるがすぐにヤマトが口を開く。



「でも、それとここに居る事って繋がらないけど」



今までの話を聞く限り事は大きいのだろうが、ここに来た事と繋がりは無いはず。

こんな大きな街では逆に居場所を特定されやすい筈だからである。

現にここにいる事を特定されてしまった。


それでもここに来たということは、つまりはここで何かをするのだろうとヤマトは考えた。

そしてそれは正しかった。



「ふむ…。実はこれをカーラに渡すのじゃ」


「な…!? でもそれじゃあカーラさんが狙われるんじゃ…」



アルの言葉に戸惑いを隠しきれないヤマトはカーラにチラッと視線を向ける。

しかしカーラは臆すどころかニヤリと笑っていた。



「安心しろ。私はこれをある人に届けるだけだ。それに――」



カーラは言葉を一旦区切り、口を吊り上げて自信に満ちた表情で高らかに宣言した。



「私は…強いぞ?」



それを聞いて何故か根拠も無く安心してしまった。

確かにカーラは身のこなし、隙、気配の消し方から見て超一流の冒険者である事はヤマトでもわかる。



「まあ大丈夫じゃろ。カーラはわしと同じくらい強いからのう」


「マジで!!?」



唖然と口をだらしなく開けて、化け物でも見るような目でカーラを見る。



「いえいえ。まだまだ師匠には勝利することはできませんよ」


「それは負けもしないと取れるのじゃが?」



二人の会話に縮こまるヤマト。

しかし、それを気にすること無く二人は昔話を始めていった。



「そういえば“ハザンの息子”は元気かのう」


「分かりません…。なにせあの後から音沙汰が無いものですから…」


「わしが聞く限りではどこかで生きてはいるようじゃ」


「そうですか…! あの頃はいろいろ大変でしたよ」


「そういえばあの後にのう………」



話はどうやらヒートアップする様子。

そんなこんなで昔話を一時間程聞かされて、ヤマトは宿に帰ることとなった。





     ★★★





そんな夜中のことを思い返しながら、ヤマトは一つの覚悟を決めていた。



(“奴ら”は俺の事を知っている…。ならやることは決まっているよな!)



それはあの後からずっと考えていた事。

これからどうするか…ということである。

そして昨晩の内に答えを出した。


ヤマトはアルを訪ねる為に部屋を後にする。

その顔は決意に満ちていたものであった。






     ★★★





「あうぅ…。サイ君………やり過ぎです…」


「さあてな」



街の大通りにて武器屋の店主をフルボッコにして爽やかな顔で店を出るサイ。

それを見て身体をガチガチと震わすフィーネはこれから一生サイを怒らせないことを誓った。



「さてフィーネ。魔法の事について教えてくれ」



サイがフィーネを連れているのはこの為である。

前回魔法の力を思い知ったサイは自分が強くなる為に必要なことを二つ程考えた。

一つは剣の腕を上げる事である。

単純に剣が上達すれば強く成れるからである。

そしてもう一つは魔法である。



「魔法を使えるようになれば俺は強くなれる」


「そうですか…。でも私は剣を使いながらの魔法は出来ませんし…」


「ならば私が見てみようか?」



二人は突然の声に振り返る。

其処には金髪美女最強魔法剣士、カーラがいた。



「私の本職も魔法剣士。ならば見てやる事ぐらいは出来るはずだ」


「なるほどな…」


「すごい! 確かにカーラさんなら申し分無いでしょうね」


「ふふ。決まりだな」



カーラは微笑みながらサイに付いて来る様に促す。



「私もこうしちゃ居られません!」



フィーネもサイの姿に闘志を燃やしたのか魔法の修業を始める。

その内容は無詠唱。

昨日は小さい火の玉だったがそれが出来た。

ならばアルのように様々な魔法を無詠唱できるようにすることがフィーネの目指すものであった。



「私はみんなを助けたいんです!」



今までは自分は守られるだけの存在であった。

しかし、今度は自らが皆を守りたい、フィーネはその思いを今までで強く育てていたのだ。

その為の一歩として、フィーネはどこか広いところを見つける為に駆け出した。





     ★★★





「俺はあの時無力だった…」



宿屋の寝室でベットに座って、いつに無く元気の無い声で呟くのはザック。

昨日のヤマトとシードの戦いで何も出来ない自分に嫌気がさしていたのである。



「ザック君…」



そんな彼を心配そうに見つめるロイ。

ロイも昨日の盗賊の男との戦闘で己の弱さを知ることとなったのでザックの気持ちが良く分かった。



「ザック君。それなら強く成れば良いと思うよ」



ロイはザックの肩に手を当てる。

その言葉はロイ自身も自分に言い聞かせた言葉であった。

実際にロイは今からひたすらに剣を振りに行こうとしていたのだ。

今の自分に必要なのは双剣を振る速さであると考えたからである。



「強く…か…」



そんなロイの言葉に顔を上げる。

そうだ、無力なら強くなればいい。

ポジティブなザックはすぐに立ち直った。



「そうだよな! 強くなればいいんだ! 俺は自分の肉体を鍛えまくればいい! あと身体強化もできれば!」


「いや、身体強化魔法は無理でしょ…。強化魔法ならともかく」


「なら強化魔法だ!!」



勢い良く立ち上がるザックに苦笑しながらも安堵するロイ。

これでこそザック君。

そう思ったロイはすぐに後悔することとなった。



「じゃあまずは街で美人な姉ちゃんでも探すぜ!!!」


「結局そうなるの~~~~~~~~!!!」



ロイを抱えて勢い良く部屋を出るザック。

ロイは抵抗するが虚しく成すがままに連れて行かれる。

そうして二人は部屋を後にした。





     ★★★





ここはミドルとダニルの墓がある、街の外れの草原のような場所。

其処にはセラとソラとラーシアが墓参りに来ていた。



「私達三人はこの街で出会ったの」



二人の墓の前に立つラーシアは不意に語りだす。



「私達は全員孤児でした…。この街では他よりも暮らし易かったから小さい頃にいろいろな事をして生きていたの。時には盗みもしました。そんな時に私達は出会った」



ラーシアはだんだんと声が掠れる。

それを背後でセラとソラは黙って聞いていた。



「私達は三人で生きてきた。孤児が生きるためには協力するしかなかったから…、でもいつしか家族みたいに思えてきたんです。そうして大人になって冒険者になった」



ラーシアの頬からは涙が伝っていく。

ラーシアの脳裏には二人との記憶が過ぎっていく。

そしてラーシアは二人に振り返った。



「私は二人が大好きでした」



涙を流しながら悲しそうな表情で無理に微笑もうとする。

しかし、それは涙で歪む顔にしかならなかった。



「二人とも」



二人はラーシアを見つめる。

ラーシアは二人に今一番伝えたいであろう事を二人に言った…。



「大切な人を守れるように二人は強くならないといけませんよ?」



その言葉に二人は悲しみを表情に出しつつ頷く。

セラもソラもラーシアの気持ちが分かるから。

特にセラは、ヤマトに庇われたことでヤマトが傷ついたのだ。



(私は…強くなる! あいつを…ヤマトを守れるくらいに…!)



セラは強く決意する。

自分の闇を払ってくれたヤマトを支える為に。

自分に誓った決意をやり遂げる決意を…。





     ★★★





「じっちゃん」



ヤマトはアルの泊まる部屋に入った。

部屋の中ではアルはベットの上に座ってヤマトの顔を窺っている。



「どうしたのじゃ? ヤマト?」



アルは決意に満ちた瞳で見つめるヤマトに首を傾げる。

そんなアルにヤマトは語り始めた。



「昨日の戦いでさ、俺はシードに手も足も出なかった。ただ攻撃を避けることしか出来なかったんだ…」


「ふむ…。まあ、それだけでも大したもんじゃがのう」



アルとしてはあの加速魔法を用いた動きで攻撃されながらも避ける事が出来た事で既に十分だと思えたが、ヤマトは勿論そうは思わない。



「いや、あの時アルが来てくれなかったらみんな死んでたかもしれなかった。俺がもっと強ければそんな事にはならないと思うんだ……」



ヤマトはそこで言葉を詰まらせ下を向く。

アルはそんなヤマトの考えを見抜いた。



「ふむ…。つまり強くなりたいと?」


「――――うん」



ヤマトは顔を上げてアルを見つめる。

アルもヤマトを見つめ返した。

それから数秒間ほどお互いがお互いの瞳を探るように見つめ、不意にアルが溜め息をついた。



「ヤマト…。お前さん、“奴ら”を追う気か?」


「――“奴ら”は俺の事を知っている。それにほっといても俺達にとって危険なようだし、俺は“奴ら”を探し出すだけだね」


「――お前さん死ぬぞい」



アルは少なからず“奴ら”の事を知っている。

だからこそ、その危険性を理解しているからこそアルはヤマトに脅すように厳しい表情を向けた。

だが…ヤマトの決意は変わらない。



「だから強くなるんだ!」



その黒の瞳からはとても強い覚悟が伝わってくる。

どうやらどうあっても引かないらしいヤマトに肩を竦めるアルは遂に折れた。



「分かったのう…」



アルは諦めたように溜め息を吐いて、これから強くなるのに必要なことを述べていった。



「一人で旅をするんなら系統魔法の全般は覚えた方がいいじゃろう」


「ちなみにどのくらい…?」



驚きながらヤマトは恐る恐る訊ねてみる。

そんなヤマトにアルはニヤリと笑った。



「わしが覚え取るもの、要するに妨害、感知などから治癒までじゃな」


「そんなにぃぃぃぃぃぃぃ!!!?」



ヤマトは絶叫する。

何せ系統魔法の身体強化と加速の二つで一年程かかったのである。

アルほどに系統魔法を覚える事に一体どれほど長く掛かるか、想像に難くない。

そんなに待てないと迫るヤマト、だがアルは「大丈夫」と云った表情を浮かべた。



「安心せい。実は短期間で系統魔法を覚える方法がある。しかもお前さんだけのな」


「え………?」



ここでヤマトに僅かな希望が見えた。

しかし、自分だけしか出来ないと言うのはどういうことなのだろうか…。



「ヤマト、超感覚能力マストじゃ。超感覚能力マストを使うのじゃよ」



アルは笑顔でそういうがヤマトには意味がわからなかった。



超感覚能力マストを!? でもなんで…」


超感覚能力マストは感覚能力全般を大きく高めるのじゃろう? ならば超感覚能力マストを使って魔力操作の質を上げれば良いのじゃ。直感でどのように操作すれば魔法が発動するのかが分かれば、それを学んで簡単に系統魔法の魔力操作を覚えられる筈じゃ」


「確かに!」



この修業には超感覚能力マストを使い、魔力操作の扱い方の感覚を大きく向上して直感で覚えた後に、その通りに魔力を操作すると言うものである。


本来魔法の操作を覚える為には感覚で少しずつ覚えていくしかない。

つまりは独自で何かを組み立てるようなものである。

これではだめだ、ならばこうか? と自らが考え、少しずつ修正していって初めて魔法を覚える事が出来るようになるのだ。


しかし、この修業は超感覚能力マストを用いる事により自らが修正する時間を大幅に減らす事が出来る。

直感で予めどのように操作すればいいかが分かり、向上した感覚能力で魔力操作を底上げする。

これはすなわち手先が器用になった状態で、説明書を見ながら何かを組み立てるようなものであるのだ。


さらに言うと、実際はそれだけでは無い。

マストの使用を慣らすことで、マストの発動するまでの時間を短縮することも含まれているのだ。



「後は刀の腕を上げるだけかのう…」



しかし刀の上達だけはアル自身が魔法専門なので専門外。

こればっかりは自力で少しずつ磨くしかなかったが、ヤマトには実は考えがあった。



「じっちゃん。シードと戦ってた時、セラを庇ったのは知ってるよな?」


「ふむ…。確かにそう聞いたが…」


「実はその時、俺は自分に加速をかけたんだ」



考えてみればシードの加速を施した動きにヤマトはセラの近くまで行き、“間に合った”。

普通に動けば間に合う筈もないのだ。

だが、あの時はマストが発動していたので何とかかける事に成功したのである。



「良くお前さんの身体が持ったのう」



体の成長が途中のヤマトが加速を自らの身体にかけるという負担に耐えた事にアルは驚く。

だが、ヤマトはニヤリと笑った。



「俺には身体強化魔法があるからな」


「お前さん…まさか…」



アルは心底驚いたように目を見開いた。

まさか“そんな事”が出来る人間がいようとは。

それがアルの本音であった。



「“これ”が成功すれば、俺はもっと強くなる!」



ヤマトは自身に満ちた表情で拳を掲げた。

そんなヤマトにアルは微笑んだ。



(もしかしたら、わしよりも強くなるかもしれんのう…)



アルはそんな事を予感する。

勿論確信がある訳ではない。

しかし、なぜかそう思えた。

そして数年後にはその予感が的中することになる。




……これが、後に“漆黒の風”と呼ばれる少年の本当の始まりの瞬間であった…。





次回は最終話「そして旅立ち」です。

読了ありがとうございました。

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