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漆黒の風  作者: ST
一章 旅立ち
19/123

18話 魔物大討伐3

戦闘開始。

だけど自分的にイマイチのような気がしてならない…。

だけどこれ以上は難しい。

何とも言えない気持ちです。

「全然見つからないな……」



あれからヤマト達四人が森を歩いて、すでに三十分近くが経過していた。

しかし、他の者は愚か魔物すら姿を見せない。

ヤマトには嫌な予感がしてならなかった。



「ヤマト、やっぱり何か変よね……?」



セラも何かを感じ取ったのか、おもむろに口を開いては不安そうの表情をしている。

それにはザックも同感のようであった。



「魔物もでないってどういうことだ!?」



ザックも疑問を持たざるを得ない。

魔物が出ないということは、魔物が駆逐されていったのか、はたまたは近付けない理由があるのか…。


どちらにしても魔物が出ないという事は今の状況的に悪い事では無いはずである。

それなのに四人には嫌な予感が胸に渦巻いていた。



「ラーシアさん。感知魔法は使えない?」


「ごめんなさい。感知魔法は会得してないです……」



アルも持っている感知魔法はこんな時にこそ最大に効果を発揮するのだ。

それなのに今の四人の内には誰も使えない。

感知魔法が使えるのであれば探すのにも苦労しないのに、と溜め息をつくヤマト。

だが、彼は肝心な事を忘れていた。



(あれ……。アレを使えばいいんじゃね……?)



急にぴんと来たヤマトはアレの存在を思い出した。

今まで忘れていた自分の不甲斐無さをモロに痛感しながらも、それを提案するため三人に振り返った。

その時、ヤマトは白き獣の姿を視線に捉えた。



「ヤマト? どうしたの?」


「後ろだ!」



目を見開き、驚愕しているヤマトに訝しげな表情を見せるセラはヤマトの言葉に振り返る。

その先には白い狼が四人に飛びかかろうと身構えているところであった。



「な……! あれはキラーウルフ!!」


ラーシアが顔を歪ませ叫ぶ。

今四人の目の前に居るのは危険度Bランクのキラーウルフであった。

その姿は白い毛皮で身を包み、牙は普通の狼よりも何倍も大きく口から飛び出しており、その赤い眼光は四人を見据えている。

全長二メートル程のその狼が此方に向かい襲い掛かってきた。



「全員横に跳ぶんだ!」



四人は横に跳んでキラーウルフの奇襲は免れた。

そのまま全員武器を取り出し、戦闘準備に入る。



「キラーウルフか……。危険度Bランクは手ごわいけど、こいつ一匹なら何とかなるかも」


「油断は禁物です。敵はかなり強いですよ……」


「了解! それじゃあ行きますか!」



短いやり取りの後にヤマトはキラーウルフに向かい走り出した。






     ★★★





「我が身の身体を向上せよ。身体強化チャージング



ヤマトは詠唱と共に相手に近づき、刀を縦に振るう。

しかし、獣は俊敏な動きで横にかわし、ヤマトに体当たり。

それを何とか刀で防いだが、衝撃で後ろに飛ばされる。

そんなヤマトにキラーウルフが飛び掛ろうとしてきた。



「ヤマト!」



しかし、セラが横からキラーウルフを斬りつける事により注意を逸らした。

キラーウルフは素早く其処から回避し四人と距離をとる。



「速い……」



誰かが息をのんだ。

それが多少の隙となり、野生の勘でもあるのか…キラーウルフがその瞬間に動いた。

キラーウルフは恐ろしいほどの俊敏さでジグザグに動きながら四人に突進してきた。



「! 水の槍を。水槍弾ウォータランス



ラーシアが慌てて詠唱し、水の槍をキラーウルフに向かい真っ直ぐ放つ。

しかし、白い狼の俊敏な動きを捉えるには適わず、そのままかわされた。



「ザック!」


「おう!」



そんなキラーウルフにヤマトとザックが二人がかりで突撃する。

左からザックが拳を、右からはヤマトが刀を振り下ろす。

それを後ろに跳んでかわしたキラーウルフにザックがさらに前足を足払いするが、容易に避けられてしまった。

そして、ザックに攻撃を仕掛けようとするキラーウルフにヤマトがナイフを投擲した。



「ナイフの動きを加速せよ。加速アクセル



加速したナイフがキラーウルフを襲う。

それを身を捻ってかわすキラーウルフだが、僅かにかすり傷が出来た。



「これだけやってかすり傷一つか…」



加速魔法付きのナイフを避けられるとは思ってなかったヤマトはさすがに呆気に取られた。

そんなヤマトにキラーウルフが畳み掛けてきた。



「くっ……!」



右前足でのなぎ払いを咄嗟にヤマトはかわすが、ニ撃目、三撃目、と立て続けに襲ってくるキラーウルフにヤマトは遂に一撃喰らった。



「ヤマト!」



そのまま吹き飛ばされて木に激突するヤマト。

僅かな時間呻いてすぐに立ち上がるが、キラーウルフは僅かな時間さえも待ってくれなかった。

その瞬間がヤマトにはかなりゆっくりに感じられる。

ゆっくりとキラーウルフがヤマトに近づいてくる。

そのままキラーウルフはヤマトに牙を剥ける……が横からザックの跳び蹴りが入った。



「大丈夫か!?」


「何とか……。助かったよ」



実際ザックの助けが入らなければヤマトは今頃三途の川を渡っている。

まだ渡りたくないな~と重いながらもヤマトはキラーウルフを見据える。

だが、ザックの蹴りをまともに喰らってもなんとも無かったように起き上がっていた。



「これはまずくないか……?」


「だよな…」



二人の表情に焦りが見え始める。

そんな二人にセラとラーシアが近寄って来た。

二人共かなり疲れたような表情だ。



「どうしましょう……」


「かなり強いわよ、あいつ……!」



セラとラーシアもキラーウルフの動きに参っているのか表情を歪ませる。

だが、キラーウルフがそれを見ているだけな筈が無く、今にも飛び掛ろうと身を構えた。



「一瞬……、一瞬だけ隙を作れないか……?」



そんな白い猛獣の姿を目に捉えた瞬間に覚悟を決めてヤマトが三人に隙を作るように頼む。

今の状況ではこのまま四人とも殺されてしまう末路が目に見えている。

ならばとヤマトの提案に頷き、三人はそのままキラーウルフを見据えた。



「――やってみましょうか」



そうして三人が地を蹴った。



「集う水よ。中水弾エルウォータ



人がすっぽりと入りそうな程の大きさを持つ水弾ウォータがキラーウルフに向かい飛んだ。

しかし、それはあっさりかわされる。



「まだまだ!」



其処にザックが拳を、セラが短剣を振るう。

それは牽制にはなったらしく、キラーウルフの注意がそちらに向かった。



「水の隕石よ。水弾落下ウォータメテオ



その一瞬を見逃さなかったラーシアが遂に魔法を当てた。

致命傷まではいかなくともキラーウルフの足元がふらつく程にはなった。

その時、ヤマトが動いた。



「風の刃よ刀より放て! 風刃ウインドカッター!」



刀を振るいヤマトが放つ風の刃は足元の覚束無いキラーウルフに向かい……右前足を切り落とした。

遠吠えのような悲鳴をあげるキラーウルフはそのまま地面に倒れる。


三人が突撃している間にヤマトはひたすらに魔力を刀に集めていた。

そしてその集めた魔力を一瞬の隙が生まれた瞬間にキラーウルフに放ったのだ。

その風魔法、風刃ウインドカッターはヤマトが今まで放った魔法の中でも一番鋭利な風の刃となり、キラーウルフの足を切り落とすまでとなったのだ。


本来ならばこれはありえない。

何故ならヤマトの放った風刃ウインドカッターは下級魔法なのだから。

しかし、ヤマトの膨大な魔力を溜めて生み出されたこの風魔法は上級魔法にも匹敵するほどの威力になった。


「すごい威力ね……」


「今まで魔力を溜めてたからな、……一応ね」


「それでも凄すぎますね……」



三人がその魔法の威力に呆気に取られた。

だが、キラーウルフは足を切られているが今だ死に至ってはいない。

だが、足を切断された為に歩く事が出来ずにもがいていた。

そんなキラーウルフにヤマトがとどめの一撃を放った。


 

「風の刃よ刀より放て。風刃ウインドカッター



そして放った風の刃がキラーウルフの頭に直撃。

頭を斬られた白い狼はそのまま力無く横たわった。

そうして激闘が終わった。





     ★★★





「ふう~~~……。何とかなったな~」


今まで戦っていた白い獣の死体を見て、ヤマトがヘタヘタと座り込んだ。

正直に犠牲無しで勝てたのは奇跡である。

何度かあの世に逝きかけた事を思い出して、ヤマトはブルッと震えた。

だが、それと同時に安堵もある。

ヤマトはもう一息を遣り切った感じで吹いた。

それに合わせて他のものも安心したのかヤマトに近づいては背中を叩く。



「お疲れ」



そしてセラが一言。

その言葉でヤマトは改めて脅威が過ぎ去った事に安堵しつつ、「そういえば」とヤマトが切り出した。



「あのさ……。俺、超感覚能力マスト使って他の人探せばよかったんじゃないかな?」


「「……………………」」


「え? え?」



その言葉に突如二人が黙り込む。

その様子に意味がわからないとラーシアは目をキョロキョロさせた。



「ヤマト! そういうことはもっと早く言えよ!」


「今回ばかりはザックと同感ね……!」


「いや~、すっかり忘れてた。あはははは……」


「あのぅ……。マストとは何なんでしょう?」



口々に話を進める三人にラーシアが訊ねる。

そう簡単に話を進めてもらっては困るのだ、差別なのだ。

そのラーシアの様子にあ、そうかとザックがマストについて簡単に説明していった。



「それはまた……。身体強化魔法に超感覚能力マスト……。ヤマトは一体何者なのですか?」


「その辺も込みで俺は記憶喪失なんだ……」


「そうですか……。ではそれで探せば……!!?」



喋っている途中でラーシアが固まった。

ワナワナと振るわせる手を挙げ、ヤマトら三人の後方を指差す。

たった今脅威は取り除いたのに何を恐れているのか…。

ヤマト達は振り返った。


……其処には一匹の魔物が二本の足で立っていた。

大きさは大人の身長より少し高い程度。

肌は黒く、オレンジ色の瞳には四人の獲物が映っていることだろう。

背中には黒く大きな翼があり、腹には赤い鱗が……。



「――――デーモン……」



ヤマト達の目の前には、幼少期とは比べ物にならないほどの殺気を放つ危険度Sランクの悪魔が、長い爪を擦り合わせて、獲物にゆっくり近づく姿があった。





     ★★★





(どうする? どうする……!?)



ヤマト達の目の前にいる悪魔がゆっくりと近づいてくる。

ゆっくりと…確実に距離が縮まっていく。

しかし、四人は恐怖で立ちすくみ、動けないでいた。



「――――ヤマト! 超感覚能力マストは!?」


「無理だ! 魔力を溜める時間が足りない……!」


「くっそ! このままじゃやばいぞ!」


「わかってるわよ!!」



この場をどうにかしようと考えるヤマトだが打開案が一向に思いつかない。

ヤマトは額から冷や汗が伝うのを感じた。



(せめて超感覚能力マストが自然発生してくれれば……)



しかし、その願いも虚しくヤマトの身体には何も変化がない。

そんな思考に明け暮れていた時、悪魔が奇声をあげた。

ヤマトは奇声の発生源であるデーモンに目をやる。



「――――いつの間に……」



…前方にはさっきまで無かった巨大な炎の塊がデーモンの空に振り上げた両手の先にあった。



「あれは!? 大炎弾ギガファイア!!?」



ラーシアが恐怖心に覆われたように叫ぶ。

燃える業火の炎は当たりし者を焼き尽くす事だろう。

そして……ついにその巨大な炎の塊をデーモンが投げつけた。



「伏せろ!」



ザックがその場に伏せる。

ラーシアも同じように伏せたが、セラは一瞬反応が遅れていた。



「セラ!」



それを見ていたヤマトがセラを庇うように飛びつき、二人が地面に伏した。

そして迫り来る業火の炎。

それは四人を死へと誘うものであった。

ヤマトはこのとき死を覚悟した。


そして、そのまま地面に激突して業火の炎が辺り一面を焼き尽くし四人を焼いていった……。


……という事にはならなかった。

その巨大な炎の塊よりも大きな水の塊がそれを相殺したからである。



「ふむ……。まさかデーモンがこの辺りに居るとはのう」



そこに現れたのはヤマトのロングコートと同じ紺色をしたローブを身に纏った白髪の老人であった。

その姿にラーシアの目が見開く。



「さっきのおじいさん!?」



ラーシアからすれば先ほどにヤマト達と一緒に居ただけの老人だ。

だが、纏っている魔力は常人のそれを遥に逸している事が分かる。



「あれほどの魔力を何故……。ま、まさか……、“魔道王”!!?」



そして白髪の老人がにやっと笑った。





     ★★★





「ヤマトさん、セラちゃん! 無事ですか!?」



突如茂みから出てきたフィーネがヤマトとセラに向かい駆けて来る。

それに合わせてソラも近寄ってくるが、二人の動きがピタっと止まった。



「ヤマト。セラに何で抱きついてるの?」


「へ?」



何言ってるの、この人?

ヤマトとしては意味のわからない発言だった。

自分が抱きつく……? 誰に? そんなことしてみろ、俺死ぬよ?

ハハハハと心の中で乾いた笑いを浮かべる。

しかし、ソラの指差す方……ヤマトと抱き合うように倒れるセラを見たとき、身体が硬直した。



(――――……マジっすか?)



ヤマトの下で横になっているセラの顔はその赤髪と同じ位に赤くなっており、沸点を超えたセラはもう何が何だかわからなくなっていた。

ヤマトは不味いと思った。

こうなったセラは歯止めが効かないのだ。


ヤマトはすぐさま飛びのいて逃げようと考える。

……だが、間に合わなかった。

ヤマトに振るわれる容赦ないパンチは彼の顔面にめり込む。

見事、ヤマトはその場から吹き飛んだ。


そしてそのままひょいっと顔を出した金髪の美少年の傍で倒れ伏した。



「ヤ、ヤマト君! ヤマト君が殺られてる! 誰か手当てを!」



ひょいっと顔を出したのはロイであった。

ロイが突然に此方へと吹っ飛んできたヤマトを見て慌てふためく。

当然だろう、ヤマトの身体は先ほどのキラーウルフ戦で傷を多く負っている。

そんな姿でいきなりに吹っ飛んでくるのだ、ロイはヤマトを助ける為にあらん声で誰か! と叫んだ。



「お……俺……善意で庇ったのに……」



この仕打ちはあんまりだ……。

そう言おうと持てる力を振り絞り口を開こうとするヤマトだが、「もう喋らないで!」と本気で心配した金髪碧眼の美少年に窘められ、口を噤んだ。



「ヤマト。お前も災難だな」



そんなヤマトに一部始終見ていたサイが同情の言葉を告げる。

しかし、そんな言葉を貰ったところでヤマトは何も嬉しくは無い。

後は頼む……とヤマトはロイに告げてがくっと気絶した。



「ヤマトくぅぅぅぅぅぅぅん!!!」



ロイが涙をいっぱいに流して泣き叫んだ。

その泣き声は天にも届くような悲痛な叫び。

これを見ていたならば、誰もがこのかわいそうな少年達に涙するだろう。


だが、このサイだけは違った。

サイはそんな茶番に飽きたとばかりにロイをどかして、ヤマトの頭を殴って強制的にヤマトを現世へと帰還させたのだ。

サイ……全く持って恐ろしい男だった。



「「ラーシア!!」」



一方のラーシアもミドルとダニルに再会していた。

なんでもこの二人はロイとソラとフィーネと行動していたらしい。

サイに無理やりに起こされたヤマトはそのことを聞いて、さらに続けて状況の説明をされる。


五人が魔物から逃げてきた後、サイクロプスが五人の目の前に現れたらしい。

一匹なら何とかなるだろうと討伐に動いたが、五人には厳しく振り回される棍棒を避けることが精一杯だったそうだ。


このままでは……そう思った矢先に現れたのが、ちょっと前に合流したサイを連れるアルだった。

そのままサイクロプスを討伐して、感知魔法で探していると大きな魔力が近くに居ることがわかったらしい。

そのまま駆けつければ、まさに絶対絶命の危機に瀕している四人の姿がいたとのことだ。



「――なるほどな。まあアルが来たからにはもう大丈夫だろ」


「だよね」



ヤマトは黒き悪魔と対峙しているアルを見据えた。

その姿に不安の要素は欠片もなかった。

何せあのアルなのだから。


すると両者が魔力を溜め始めた。

その魔力量は膨大で、お互いの手に集まっている。

そして両者が片手を振りかぶった。

それに空気が振動するのが周りに伝わる。

全員がその対峙する二人に目を取られる。


…そして双方は魔力を放った。





読了ありがとうございました。

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