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漆黒の風  作者: ST
三章 黒風の通る道 王宮襲撃編
105/123

13話 二つの戦闘

一日遅れました。

 時は少し前に遡る。

 ジャマールの首尾を確かめようと、一人の人物が姿を隠しながら視察していた。


 彼は“組織”の幹部の一人だ。

 その人物が、同じく幹部であるシードの策略が順調に進んでいるかを確かめる為にジャマールの行動を監視していた。

 しかし、どうやらこちらの行動は読まれていたらしく、ジャマールの暴動も鎮圧されつつある。


 計画の不都合にその男は舌打ちしてそのままローブを翻して元来た林の中に入ろうとした。


 するとその人物の前に三人の人物が立ちふさがった。



「何処に行くのかな?」



 男は面を被り、自分達と同じように漆黒のローブを身に着けている。

 その手にはバスタードソードが握られており、男を注意深く観察していた。


 その後ろには二人の従者と思われる黒のローブにフードを被った者が立っている。

 男はさっさとこの三人を始末して立ち去ろうとした。



「悪いが通さないよ」



 だが、この面の男は想像していたよりもずっと実力者だったようだ。

 油断、というのもあったかもしれない。

 しかし、面の男が実力者だと“組織”の男に悟らせるのに行ったそれは些細な事だった。


 プレッシャーの解放。

 ただのそれだけで、この面の男は自分よりも上の存在であると感じ取れた。

 それほどにこの男が発するプレッシャーは凄まじかった。



(これはまずい……!)



 男はここで覚悟を決めた。

 無論、倒す為の覚悟ではない。

 この面の男はおそらくSSランクホルダー並みの実力を持っている。

 プレッシャーを間近で体感した男なら分かる、勝てる可能性はかなり低いと。


 ならばどうするか。

 逃げ一択である。


 男は覚悟を決めて干渉魔法を発動させた。

 その瞬間、凄まじい、それこそシードと同等以上の速度で迫ってくる面の男に恐怖してしまった。



(さて、どうなる……)



 その瞬間二人は激突した。





     ★★★





 王城の地下水路では二人の女性が激しく戦闘を行っていた。

 一人は長い金髪を翻し、地、空中で舞うようにレイピアを振っている。

 もう一人はショートカットのこげ茶色の髪を揺らし、長いナイフを神速の速度で振るう。



「さすが! SSランクホルダーは違う!」


「そちらもかなりのものだぞ? まあ私を打ち負かした一人の青年には遠く敵わんが」


「へ~、その人そんなにつよいのっ!」



 二人はそのままいくつも金属の音を奏でる。

 その数は何百何千と凄まじい速度で増えていく。

 それはすなわち二人の打ち合う速度が凄まじく速いことを意味する。


 そして二人は同時に後ろに下がった。



「ああ、私でも傷を付ける事が敵わなかった」


「……どんな化け物!?」



 言いながらにヘッジはカーラにナイフを突き出す。

 カーラはそれを身を捻ってかわし、レイピアを横に振った。

 それはかわされるがフェイントで本命の雷を纏った蹴りを放つ。


 ヘッジはすぐさま反応してバックステップ。

 しかし、カーラの雷速で振るわれる蹴りを完璧にかわす事が出来ず、纏わせている雷がヘッジの体を襲った。



「くうっ!」



 だが、ヘッジは構わずバックステップを続け、カーラと距離を取る。

 しかし、カーラは一瞬でヘッジとの間合いを詰めて蹴りをもう一発打つ。

 だが、ヘッジは屈んで避けて大きく跳躍。

 そのまま距離を取った。



「まだまだいくぞ」



 だが、カーラは休む暇を全く与えない。

 すぐにレイピアを振るい、電撃をいくつも放つ。

 それを一つ一つヘッジは避けていくが、その間にカーラに雷速の動きで後ろに回り込まれた。



(どんだけ速くて強いの……!)


「歯を食いしばれ!」



 そのままカーラは電撃を帯びたレイピアを振るう。

 それにさすがというべきか、ヘッジはすぐに前に飛んでかわそうとする。

 しかし、カーラのレイピアには電撃を帯びているのだ。

 その電撃がレイピアから流れ出て、ヘッジを襲った。



「電撃って、これはまずいかも……!」



 流れでる電撃に襲われながら、ヘッジは長いナイフを一振りした。

 するとそのナイフからは炎の渦が飛び出し、電撃を打ち消した。



「魔法が使えるのか!?」



 カーラは驚いたような表情でヘッジを見やる。

 ヘッジはカーラの電撃によりかなりのダメージを負っているようだが、今だ倒れる様子はない。



「私は加速魔法でナイフの振る速度を加速させる事しか出来ないよ。この炎は炎波動ファイヤバーストの魔方陣が刻み込まれた魔道具」


「波動系の魔道具か……」



 魔道具は基本刻み込まれた一つの魔法しか使えない。

 しかし、波動系の魔道具はその属性の魔法の形を変えられる。

 それはすなわち威力は変わらないが多種の造形を生み出す魔法を使えるということである。



「反撃開始」



 ヘッジはナイフを振る。

 するとナイフから炎の斬撃がカーラに向かう。

 カーラはそれをレイピアでかき消した。



「上!」



 するとヘッジは既にカーラの頭上にいた。

 そこから放たれるのは火炎放射。

 燃え盛る火炎がカーラに迫る……その瞬間にカーラは僅かに目を見開いた。

 頭で理解するよりも早くカーラの身体は反する。

 カーラはそれを間一髪で後ろに跳んでかわした。


 だが、ヘッジは追撃の手を休めない。

 この好機を逃がす物かと、そのまま地面に降りて、カーラに再び火炎放射を放った。


 その威力は当たればカーラですら危険なもの。

 もちろんそれは当たりさえすればという話だが……。



「はあ!」



 カーラはレイピアから上級魔法、破壊雷サンダークラッシュを発動。

 雷と炎が衝突する。

 しかし、単純な魔法での実力ならば魔道具を使用するヘッジより、自らで魔法が発動できるカーラの方が上手だ。

 カーラの前に広がっていく雷は火炎放射を見事に防いだ。



「これはまずいんじゃないの」


「まだまだこれからだろう!」



 カーラの身体がぶれる。

 するとヘッジの間合いに既にカーラが入っていた。

 ヘッジはギリギリで振るわれるレイピアを受け止めた。



 ヘッジはここまでの戦いの最中に思った事がある。

 そして、ヘッジはそれが正しいと何故か確信した。


 ――この人、絶対に戦闘狂バトルマニアだ……。





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