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漆黒の風  作者: ST
一章 旅立ち
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9話 魔法修業開始

いくつかの説明があります。

どこか納得のいかない人も居るかもしれませんがご容赦ください。

 あれからしばらく歩くと演習場に着いた。

 演習場に着き、皆はそれぞれ準備運動を開始した。

 ザックは素手、セラとサイとロイは剣術、ソラは弓と、それぞれウォーミングアップを開始していく。

 そんな中でヤマトはフィーネと共に魔法についてアルから話を聞いていた。



「まず、魔法について基礎から話そうかのう」



 魔力に目覚めたヤマトに魔法を教える為に、まずは基礎から説明する事になった。

 そういう訳でアルは魔法について語り始める。



「まずは『属性魔法』から説明しようかのう」



 『属性魔法』、それは炎、水、風、雷、光、闇の六種類からなるもので、魔力を変化させ、それらを形作り放つ、主に攻撃に多様される魔法である。


 しかし、これには適正がある。


 その適正のある属性しか使えず、適正が無ければ使えない、要するに才能が関係してくる分野である。

 大体の魔道士は1~2個ほどの適性しか持たず、六個全ての適正がある者は過去に大陸を救った英雄しかいなく、現状では未だ大陸には確認されていないというほどだ。

 ちなみにアルとフィーネは適正が四個もあり魔道士としては最上級の適正の持ち主だと言える。



「次に『系統魔法』じゃ」



 そして『系統魔法』とは、今まで出てきた妨害魔法、加速魔法、感知魔法、干渉魔法などがそれに当たり、『属性魔法』のように自らの魔力を属性に変化させずにそのまま放つ、主に補助に使われる魔法である。

 そして、この『系統魔法』の利点は適正が要らず、訓練を詰めば魔力を持つものならば誰でも使えるようになることだ。


 しかし、魔力を属性に変化させて“放つだけ”の『属性魔法』とは異なり、『系統魔法』は自らの魔力を自在に操作する技術を要する。(最も、『属性魔法』も中級者あたりから変化させた後で形作り、放つのが基本になってくるが、それでも『系統魔法』は、加速魔法にするならかけたものが加速するように魔力を流さないといけないし、妨害魔法にするならモノの進行を妨害するように魔法をかけないといけないため、『系統魔法』の方が操作が難しい)


 また、『系統魔法』は他にも、物の硬度を上げる硬化魔法、傷を癒す治癒魔法、身体の一点を瞬間的に強くするまたは物を丈夫にする(硬化ではないので硬度は上がらない)強化魔法“など”がある。

 など・・と言ったのはこのほかにも『系統魔法』が存在しており、また効率が悪かったり、大量の魔力を有するためなどで現在では存在が知られてないような古代魔法ロストスペルなどもあるため種類の全てを知っているものはいないからである。



「まあ基本はこんなもんかのう」



 アルは一通り説明を終えて、ヤマトの方をチラリと見る。

 するとヤマトはアルの長い説明にぐた~としていた。




「ヤマトや……。話はちゃんと聞かんといかんぞい……」



 そんなヤマトに溜め息をつくアル。

 隣ではフィーネがクスクスと笑っていた。



「難しい~……」


「私も最初聞いたときは多くて困りました」



 気の抜けるような声を上げるヤマトに同情するフィーネ。

 その昔にフィーネも同じような長話を聞かされ目を回した記憶があったのだ。



「要は『属性魔法』と『系統魔法』とがあるってことです。今からするのは『属性魔法』でのヤマトさんの使える魔法を今からおじーちゃんが調べるんですよ」


「なるほど~!」



 フィーネの恐ろしいまでに簡略された説明に納得するように頷くヤマト。

 しかし、当のアルは膝をついていた。



「ど~せ年寄りの台詞はながいですよ~じゃ……」



 そう言っていじけるアル。

 アルがいないと適正が計れないので、二人はなんとかアルを奮い立たせる。

 愚痴を飛ばしながらもようやく立ち直ったアルは魔法の適性を計るための準備をする。


「……今からお前さんに感知魔法をかける。目を閉じてリラックスするのじゃ」



 そう言ってアルはヤマトの頭に手を置く。

 ヤマトは目を閉じた。

 すると暖かいものが自分の中に流れていく。

 そして自分の中にある何かをそれが包み、そして戻っていった。



「なんて魔法量じゃ……。そしてなんともったいない……」



 目を開けるヤマトに苦笑したアルは言った。



「なになに? どうだった? じっちゃん?」



 アルの言葉に結果が気になり、急かすように問い詰めるヤマト。

 そんな彼にアルから答えが返ってきた。



「ふむ。悪くはないかのう」


「――というと?」



 ヤマトは悪くないと言われ、首を傾ける。

 悪くないという事は使えるが良くもないと言う事か……?



「おぬしはやはり凄まじい魔力を持っておった。しかし、使える属性は風だけじゃ。使える『属性魔法』の数の方は平凡中の平凡じゃな」



 アルの言葉に喜ぶべきなのか悲しむべきなのかわからないヤマトはフィーネを見る。

 フィーネもアル同様に苦笑している。



「あれほどの魔力を放っていたから属性もかなり持っているかと思いましたけど。まあ全く使えないよりはいいですね」


 フィーネからまあまあです、と言われたヤマトはどこか嬉しそうにどこか悲しげに呟いた。



「――――つまり微妙って事だな」



 はあ、と溜め息をつくヤマトだが「まあ使えるからいいか」と前向きに考えることにした。



「さて、次は昨日におぬしが使った魔法を調べさせてもらおうかのう」


「え……どういうことですか?」



 アルの言葉にフィーネは首を傾ける。

 魔法とは基本、身に着けなければ使えない。

 ヤマトは今魔法の説明を受けて、まだ何も魔法を行使していない筈だ。

 それなのに昨日に使った魔法を調べるとアルは言った。



「実は昨日のあの場所からは魔法の痕跡が残っていてのう。おそらくヤマトは無意識で魔法を使ったと考えられる」


「――本当にヤマトさんはすごいです!」



 無意識の内に魔法を使えるという事はそれだけ高い潜在能力を秘めている事を裏付ける。

 フィーネはますますヤマトを尊敬した。

 ヤマトはそれに頭をかいて照れていると、アルが頭に再度手を置いた。



「さて、早速調べてみようかのう」


「ああ、お願い」



 そういった瞬間にさっきと同じように目を閉じる。

 そうして、また頭の中に何かが入り、引いていく。



「ふむ……? ――なんと!!?」


「ん? どうしたんだ? じっちゃん」


 

 突然に声を荒げたアルにヤマトとフィーネは首を傾けた。

 見るとアルは身体を僅かに震わせている。

 そして、アルはヤマトに訪ねる。



「お前さん、昨日使った魔法を覚えとるかのう……?」


「ん~……」



 アルに聞かれて昨日のことを懸命に思い出そうとヤマトは試みる。

 そしておもむろに口を開けた。



「えっと……、加速と風と……身体強化とか言ったっけ?」


「――? 身体強化? 強化ではなくてですか?」



 ヤマトは昨夜自分が口走った詠唱を僅かに思い出した。

 そして自分が昨夜に詠唱したであろう言葉を言ったのだが、最後の詠唱はフィーネも聞いたことが無いらしい。

 言い間違えたかな、とヤマトは思ったがアルはそれで正しいとヤマトに言った。



「やはり……。お前さんは身体強化魔法が使えるのか」



 アルはかなり驚いたような表情をしている。

 ヤマトとフィーネは訝しげにアルを見つめ、説明を待った。



「――身体強化魔法とは、体の一部を一瞬だけ強化する強化魔法とは違い、自分の魔力を消費し続けて自らの身体能力及び反射神経を魔力が尽きるまで強化させられる魔法じゃ」



 アルの言葉に「おおー!」と感心するヤマトだが隣のフィーネは目を仰天させていた。



「で……でもそれって、大量の魔力を使うんじゃないんですか……?」



 そもそも強化魔法は継続的に使うものではなく、一撃の威力を高めたり、敵の大技及び致命傷に至る技を防御または回避の為に使われる。

 一方、身体強化魔法は強化ほど能力が上がる訳ではないが、自らの身体能力の全般を向上させる。


 しかし、上昇値は強化の劣化版ではあるがそれが身体能力の全般に魔法がかけられ、戦闘中ずっと発動し続けるのならばそれは大量の魔力を要する。

 フィーネが驚いたのも無理は無く、むしろ普通の反応だった。



「そうじゃ。この魔法はあまりに魔力を使う。わしですら戦闘中ずっとは堪える程にな…。しかしフィーネ、昨日のヤマトの魔力ならそれも可能ではないかのう?」



 アルにそう言われたフィーネは確かにあれなら、と納得する。

 あれほどの魔力ならば、大量の魔力を消費し続けても確かにもつだろう。

 いや、むしろ魔力が尽きる事が無いのではないか…そう思わせられる程の魔力量だったのだ。



「さて……。ヤマトの使う魔法の方向性も見えたことじゃし。魔法の使い方をおぬしに教えるかのう」


「よしきた!」



 待ってましたと言わんばかりに張り切るヤマト。

 ヤマト自身も何故かは知らないが、魔法という言葉を聞いただけでウズウズしてくる。

 そんなヤマトに少し張り切り過ぎないか、と苦笑するアル。

 同じように隣で座っているフィーネも苦笑いを浮かべていた。



「……まあそんなに嬉しいんならわしも教える甲斐があるのう」



 そんなヤマトにアルは魔法の使い方について説明する。



「まず、かけたい魔法を頭でイメージする。そしてイメージが整ったら自分の中にある魔力をイメージしたように形作る。そして自分のイメージした魔法を自分の考えた言葉で表す、要は詠唱じゃ」



 アルの説明に「お~」と相槌を打つ。

 それからさらに説明は続く。



「詠唱とは魔力を放つのと同じじゃ。最初のうちは詠唱で魔力を放たなければ使えん。まあ、慣れて感覚を掴めば魔力を詠唱なしで放つことが出来るがのう。これを『無言詠唱』や『無詠唱』と言うがのう」



 アルがさらに次々と説明していった。

 そんなアルに、今言われたことを確認するようにヤマトが聞き返す。



「まず頭で使いたい魔法をイメージ。次にイメージした魔法を魔力を操作して形作る。そして最後に詠唱……。こんな感じかな……?」



 ヤマトの確認にアルとフィーネが頷く。



「大体わかったようじゃのう。――さてヤマト、質問するが、この中で何が一番難しいと思う?」


「……魔力を操って形作ることかな?」



 アルの突然の質問に少し考えてヤマトは答える。

 それにほう、と感心したようにアルが頷く。



「そうじゃ。イメージも詠唱もさして難しくない。魔道士の最初の壁はこの魔力を操ることなのじゃ」



 アルの言葉に感慨深く頷くフィーネ。

 話を聞けば、フィーネも昔はこれにかなり苦戦したらしい。

 それを聞きヤマトは顔を引きつらせた。



「フィーネでも苦戦するのか……」



 七人の中でも最も魔法の才があるフィーネでもそうなのだ。

 ならばフィーネほどに才能の無い自分はどうか…。

 今からする魔法の訓練が自分の想像よりも難しそうなことを知り、若干溜め息が漏れるヤマト。



「まあ何事も努力が必要だと言うことじゃのう。さて、早速魔力の操作の訓練をするぞい」



 アルの言葉にそれもそうか、と頷く。

 ヤマト自身なぜこんなに魔法に執着するのかわからないが、記憶を失う前に魔法に魅了されたように感じた。

 魔法を覚えることは記憶を取り戻す手がかりとなるかもしれないと考えたヤマトは、多少苦労するだけで音を上げて止める訳にはいかなかった。



「よし……!」



 ヤマトはそう言って気合を入れる。

 辺りには少しばかり強い風が吹き、決意を持った少年の漆黒の髪を靡かせた。





読了ありがとうございます。

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