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季(とき)を過ぎた夏虫は  作者: 終夜烏


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<<おはようございます。今日は6月13日、水曜日です>>

テレビの中で、女性アナウンサーがそう言った。それを僕は、何の感慨もなく聞く。テレビの情報が正しくて、僕が狂っていないのならば、今日は6月13日、水曜日であるらしい。部屋にある時計は、朝の6時を指していた。

窓の外は曇りに近い晴天だった。それを僕は凪いだ心地で眺める。窓に映る、海沿いの自然豊かでのどかな景色は、日本のどこかにある、実際の風景から作り出した、とても精巧なCG映像なのだという。特定の地点――東京都という事だったが、に天気と日照時間、海の満潮干潮などを合わせているのだそうだ。

ただ、僕はそれが本当の事なのか嘘なのかを知らないし、知るすべもなければ興味もない。この部屋が実際はどこに存在しているのかも知らない。もしかしたら無機質な高層ビルのどれかなのかもしれないし、秘密組織らしく地下深くに存在しているのかもしれない。本当に東京都のどこかにこんな景色の部屋があるかもしれないし――とまで考えて、僕は小さく自嘲した。本当に東京都内のどこかにこんな風景の場所があったとしても、この部屋は「自然光の入らない部屋」でなければならない。その時点でこの景色は少なくとも「本物」ではない。そして、場所の真偽などは、もはやどうでも良い事象だった、と思った。外界から隔絶されて、危機もなく、安穏と暮らせる。それだけで充分なのだ。僕はそれ以上の事を望まない。友人も、恋人も、将来も、家族や仲間も。

だって、実際の家族がこの事を知ってしまったら、きっと彼らを悲しませて、苦しませてしまうだろうし、かつての友人たちにはこの事を知られたくない。そもそも外には「あの人たち」がいる。うっかり見つかれば、何をされるか分かったものではない。

彼らはまだ、あの街にいるのだろうか。夜になると、息を吹き返すかのように輝くあの街に、彼らと「ミヤ」は。

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