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眠らないミッドナイトを泳いで

道化となって夜と踊る

作者: 小泉 上沙
掲載日:2025/09/01

道化師と猛獣の話。


※クラウン……道化師全般を表す言葉

道化師「やぁライオン君!今日も来たよ!」


猛獣「よおクラウン。肉は持ってきてくれたか?」


道化師「そんなの持ち込めないよ。団員が無許可で飼

    育小屋に入るだけでもマズいんだから。まし

    てやこんな真夜中になんて……首がとぶよ」


猛獣「このサーカス団、無駄に規則が厳しいからなぁ

   肉ぐらい満足に食わせろってんだ」


道化師「まあ仕方ないよ。ミラのやつ、お前の言葉を

    理解できないんだろ? もし分かるなら少し

    は餌が増えたかもね」


猛獣「チッ――、猛獣使いなんだから俺達の言葉ぐ

   らい分かれってんだ」


道化師「無茶言うなよ。人間は普通、君たちの言葉な

    んて分からないし話せないんだよ」


猛獣「お前は話せてるじゃねえか」


道化師「そ、それは……僕だって意味分かんないよ。急

    に理解できるようになったし……」


猛獣「へぇ……。あ、そうだ! お前が猛獣使いになっ

   たらいいじゃねえか」


道化師「何言ってるんだよ、僕は……クラウンだよ?」


猛獣「クラウンだからなんだってんだ。手品師のアレ

   ンだって元ピエロだろ」


道化師「あいつは特別さ……、アレンは主役を張れる実

    力も運もあった。……僕には無いよ」


猛獣「そんなことねえよ。お前の曲芸はすごいと俺は

   思うぜ。俺だけじゃない団員皆そう思ってる」


道化師「皆のほうがよっぽどすごいよ。僕なんか足元

    にも及ばない」


猛獣「謙虚になるなって!」


道化師「……本音だよ」


猛獣「嘘つけ、お前はもっと自分を評価していい」


道化師「――しつこいな! 曲芸がすごい? だから

    なんだってんだ!!」


猛獣「はぁ?」


道化師「いくら観客を盛り上げられようと、脇役は脇

    役! 主役には絶対なれない。そこが僕の限

    界なんだよ!」


猛獣「落ち着けよ。他の団員が目覚めちまう」


道化師「っ……大声だしてごめん」


猛獣「まぁ、お前の言うことも分かれるけどな」


道化師「え? 猛獣ショーはウチの目玉じゃないか」


猛獣「俺を操るのはあくまで猛獣使いだろ? 俺には

   ショーにおいて自由がないんだよ」


道化師「で、でも……」


猛獣「目玉と言ったら聞こえはいいが、俺のショーで

   起こる拍手は全部猛獣使いにむけてなんだぜ。

   実際すごいのは、猛獣使いだからな」


道化師「そんなの……悲しくないの?」


猛獣「そりゃあ悲しいさ」


道化師「君は、それでいいの? 満足してるの?」


猛獣「満足というより……納得してる」


道化師「納得?」


猛獣「おう。ライオンに生まれちまって、このサーカ

   スに買われたんだから仕方ねえじゃねえかって

   な」


道化師「……納得。僕もしようとしたよ? けど、羨ま

    しいじゃないか。僕だって、主役に……」 


猛獣「お前はなんで主役になりたいんだ?」


道化師「だって、主役がいないとショーはできないし

    主役は誰よりも歓声がもらえるじゃない」


猛獣「それは違うぞ。ショーは主役だけでできてるわ

   けじゃねえ」


道化師「そうは言っても、主役は必須だろ?」


猛獣「脇役だって必須の役割だ。特に猛獣ショーなん

   て準備に時間がかかるからな、そんな時に隙間

   時間を埋めるのは誰だ?」


道化師「クラウンたち……」


猛獣「そうだろ、お前らがいないとショーが成り立た

   ないんだ」


道化師「僕たちが……必須」 


猛獣「歓声が欲しいなら俺達団員が飽きるほど送って

   やる。脇役だろうが主役だろうがショーの一部

   には変わらねえよ」


道化師「ハハ……、そのライオンの手で拍手してくれる

    のかい?」


猛獣「いい話してるとこなんだから揚げ足取るなよ」


道化師「いい話してるって自覚はあるんだね」


猛獣「深い話だろ?――ってなんで泣いてんだ!?」


道化師「いや何でもないよ。何でも。ちょっと嬉しく

    なっちゃっただけ……」


猛獣「嬉しいのに泣くのか? 人間はよく分からん」


道化師「……明日も朝からリハーサルがあるしもう寝る

    ね」


猛獣「もうこんな時間か。おやすみ、『クラウン』」


道化師「おやすみ。そしてありがとう……ライオン君」

 

   

 ――彼は夜から、抜け出していく。

あなたの夜に光が灯りますように。

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