エピローグ
年末を無事乗り切り、新たな年を迎えた俺の姿は元旦から早くもコンビニ店内にあった。
「おはようございまーす」という俺の挨拶には返事もせずに、クズ店長が事務机のコンピューター画面に向かったままでこちらに一瞥もくれずに告げる。
「そういえば今日の夕勤から、新しい子来るから」
「はい!?」
毎度毎度このクズ店長は……。
また初耳だぞ……。
それにしても元旦から初バイトに入らなきゃいけないとか、誰だか知らないけど可哀想に……。
半ば諦めながらも、俺は一応クズ店長にこう言ってやった。
「そういうことは先に言って下さい」
しかし、聞こえていないかのようにクズ店長が続ける。
「ちなみにメチャクチャ可愛いロリ系美少女だけど青砥……絶対に手は出すなよ? バイト同士でのいざこざは面倒だからな。特に情事は御免被る。辞める原因になるからな」
「だからなんで毎回俺が手を出すこと前提で話してるんですか!? そんなことしませんよ!」
失礼な奴め!
――とは言ったものの、そんなに可愛いロリ系とか気になっちゃうよなぁ。
「もうすぐ来る頃合いだな」
そのクズ店長の言葉通り「コンコンコン」と事務所入り口の扉をノックする音が響いた。
「失礼する」
そう言って現れたのは、可愛らしくあどけない、よく知る顔の少女。
んんんんんっ――!?
「雨宮だ。よろしく」
――そうなのだ。
事務所に現れたのはまさかまさかの、よりにもよって鈴だった。
俺は光の速さを超えたスピードで突っ込む。
「何してんだよお前ー!?」
「何ってバイトだが? それに常日頃から働けニートと言っていたのはお前だろう? 歩」
「いやそうだけども!? なんでよりにもよってここなんだよっ!?」
しばし考えた末、鈴は端的に答えた。
「……近いから?」
「安易ッ!!」
そんなやり取りを見ていた店長が気軽に言う。
「お? 二人は知り合いだったのか? なら好都合だな。青砥、雨宮の教育係頼むわ」
「マジかよぉぉぉっ!?」
「頼むぞ歩」
そんな時だ。
再び事務所の扉が開いたのは――。
「おはようございまーす!」
そう元気な挨拶で現れたのは、今一番会いたくなかった人物。
そう、藤野花枝だ。
彼女は入ってくるなりその表情をひきつらせ、強張った声でこう訊ねる。
「……なんで雨宮さんがここに居るんですか?」
……どうしてこうなった。
俺が黙っていると、藤野は追い討ち攻撃でもかけるようにこう続けた。
「青砥さん、説明して下さいよ。クリパした仲でしょ?」
クリパという単語に、鈴が反応する。
「……歩。今その女の口からクリパと聞こえたが? イブは夜勤だったのだろう? だから私との約束を破ったのだろう?」
あちゃー。
……最悪だ。
クソややこしいことになりやがった……。
「はあ!? 青砥さん!? まさか雨宮さんとイブを過ごすつもりだったんですか!? どういうことなんですか?」
「歩、詳しくイブのことを説明して貰おうか……?」
ああもう面倒臭いッ!
「いっそもう、一思いに誰か俺を殺してくれぃーッ!!」
俺を目で殺すとでもいわんばかりに、殺気のこもった目で見詰め続けている藤野と鈴。
……まったく。
このコンビニにはなぜか問題のあるクズばかりが集まる。
やれやれ、まともなのは俺ただ一人だけじゃないかっ!
……ここ、ツッコむところですよー?




