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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
最終章 最凶イベント~クリスマスが今年もやって来る~
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第74話 二人きり(事務所)のクリスマスイブ

「お疲れ様です」と頭を下げた彼女に、俺は訊ねる。

「どうしたんだよお前。ダメだろ? 未成年が夜十時以降に一人で出歩いちゃ。補導されるぞ?」

「買っておいたケーキ、バックの冷蔵庫に忘れちゃってたんで取りに来ました。親の車で」

「ああ、なるほど」

 それにあれだけの忙しさを経験した後なら、忘れ物もするよなぁ。

 一人納得していると、今度は藤野がこんな質問をしてきた。

「それよりも青砥さん」

「なんだ?」

「なんでまだ働いてるんですか? 時計の見方もわからない程の馬鹿だったんですか? 退勤時間過ぎてますよ」

「わかるっての!……実は今日の夜勤が一人バックレてな。俺はこのまま朝までコースって訳なんだよ」

「うわあ。私なら無理です」

「俺だって無理だし!?……でも、無理しなきゃいけないんだよ」

「ざまあ」

「お前は俺をイラつかせに来たのか!? 違うだろ? もうさっさとケーキ持って帰れよ」

「言われなくてもそうしますけど」

 可愛くねぇ……。

 ツンと踵を返し、バックヤードの冷蔵庫へと向かった藤野がホールケーキの入った箱を手に戻ってくる。

 そして言った。

「五味さん、少し青砥さんお借りしていいですか?」

「いいよー、貸すんじゃなくてあげちゃう! のし付けてふじのんにあげちゃう!」

「すみません、五味さん。ありがとうございます」

 いや、俺は五味のモノじゃないんだが?

 勝手にのしまでつけてんじゃねぇよ!

「ほら、青砥さん。さっさと事務所に入って下さい」

 そう言って、先に藤野は事務所の中へ入っていく。

……なんで俺は藤野に指図されてるんだ?

 そうは思ったが、一応言う通り俺も事務所へと入った。

「なんだ? なんか俺に用か?」

「いいから座って下さい」

 俺と藤野はテーブルを挟み、向かい合って椅子に腰掛ける。

……面接でも始める気か?

 そんな風に訝しく思っていた俺の目の前で、なんと彼女は取りにきたはずのケーキの箱をおもむろに開き出した。

「はあ!? え、何やってんの!? 持って帰るんだろ!? それ!」

「そうですけど、ちょっとここで食べるんです」

「いやいや、だから帰って食べるんじゃないの!? 家族とさ!」

「今食べたくなったから食べるんです! 私の勝手じゃないですか!」

 意味わかんねぇ……。

「……親御さんだって、駐車場で待ってるんだろ? いいのかよ……」

「中で少しバイト仲間と話すからと、ちゃんと言ってあります」

「そうなの?」

「だからほら、青砥さんも一切れどうぞ」

「え、いいの?」

「嫌なら無理にとは言いませんけど。……食べますか? 食べませんか? どっちですか?」

「じゃあまあ……食べます」

 俺もケーキは買ってあるんだけど……まあいいか。

 俺の返事を聞いた藤野は仏頂面のままケーキを切り分け、その内の一切れを取り皿に乗せてこちらに差し出す。

「はい、どうぞ」

「あ、ども……」

「メリークリスマス」

「あ、メリークリスマス」

「いただきます」

「い、いただきます!」

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