第71話 戦場の絆?
――三十分後。
レジカウンターへ覆い被さるようにして、絶命した二人の若きコンビニ店員の姿がそこにはあった――。
――ということは無く、ちゃんと生きている。
……かろうじてだが。
一時的にお客様の居なくなった店内で、俺は呟くように言った。
「な、なんとか乗り切ったな……」
別に返事を期待していた訳ではないが、藤野がこれに答える。
「私達の……勝ちですね……」
「ああ、そうだな……」
この時、俺は藤野に特別な感情を抱いていた。
まるで、戦友のような……いや、それ以上か。
深い絆。
その芽生えを感じたのだ。
藤野だって、俺と同じような感情を覚えたはず。
一瞬ではあったが、心の深い部分で繋がったからこそわかる。
なのに――。
藤野はこちらにジトリとした視線を向けると、こう不快そうに言った。
「……なんですか、その『俺はわかってるぞ』みたいな顔。そういう目で見てくるの止めてくれます? とてもキモいので……」
「キモッ!?」
「キンッッッモいです」
「……」
そんな酷いこと言われたら、ブレイブハートも深く傷付いちゃう……。
そんな俺の気を知ってか知らずか、藤野は淡々と告げる。
「レジ点検したいんで、こっち閉めますからよろしくお願いします。青砥さんは下金庫でも数えといて下さい」
「あ、はい……」
……さっきの絆の話。
あれ、やっぱり無かったことにして下さい。
俺の勘違いでした……。
そのまま時計の針は進み、二十一時二十九分。
遅刻寸前で、夜勤の五味がやって来た。
それも、わけのわからないハイテンションで――。
「おあざーっすぅーっ! メリクリーッ! メリクリメリクリーッ! Fuuuuuッ!! お!? ふじのんサンタ可愛いね! でもウチとチェーンジ!」
「おはようございます。じゃあ私は上がりますね、お先に失礼します。お疲れさまでした」
藤野はいつも通り素っ気ない態度で、さっさと帰ってしまう。
後に残された俺と五味。
すっかり人気の無くなった店内には、寂寥感だけが漂っていた。




