第70話 最強種族ドラゴン出現
次から次へと、ひっきりなしにやって来るお客様の群れ。
……思い出すぜ。
アリオンで魔王軍と死闘を繰り返したあの日々を!
燃えてきたぁぁぁぁっ!
「藤野! チキン揚がってる! フライヤーから外しといて!」
「はい!」
「ヤバイ! 外のゴミがパンパンだ!」
「私やっときます!」
「頼んだ!」
「青砥さん、レジからも下金庫からも五千円が切れちゃいました!」
「二万円寄越せ! こっちのレジから分けてやるから!」
忙しくも、なんとか俺達は二人でイブのコンビニを回し続ける。
もうカップルとかリア充だとか、そんなものもどうでもよくなっていた。
今はただ、目の前のお客様の応対に全ての力を注ぐのみ!
そうやってがむしゃらに働いている内に、いつしかお客様方の数が減り始めいることに気付く。
イブは二十時くらいまでは混むが、それ以降の時間帯に関してはそこまで忙しくない。
ようやく、波が落ち着いてきたのだ。
皆それぞれ自宅にラブホに、思い思いの相手と思い思いにイブを楽しんでいるのだろう。
そう考えるとなんだか腹が立ってきたな……。
こっちはいつも以上にきついバイトをこなしてるっていうのに……。
まあいい。
ジュースの補充とか品出しとかフェイスアップとか、もう少しお客様が減ったらやらないとな……。
そんなことを考えているところへ、そうはさせるかと新たな客が現れる。
手には新たな、爆弾を持って――。
「お願いします」
そう言いながらこのお客様が差し出したのは、料金支払用紙。
その枚数を数え、俺は気が遠退いた。
代行収納が……二十件……だと……!?
それだけじゃない。
小脇に抱えていた荷物を降ろし、お客様は言う。
「これ、宅配便で」
なぜ今日なんだよぉぉぉ!?
その上更に――。
「それと、コンビニ受け取りの荷物もあるはずなんでお願いします。あ、あとインクジェットの年賀状を七十四枚下さい。ついでにコロッケとあんまんと、おでんもいいっすか?」
Nooooooッ!?
嫌がらせですか!?
なぜよりにもよってそんなにバリエーション豊かに注文してくるの!?
様々な状態異常魔法を使ってくる、実質魔王よりも厄介なRPGの中ボスかよ!?
これで状況は一変。
こちら側のレジが当分は開けられなくなってしまった。
一度は消えかけたお客様の列が、再び店内に現れる。
それもほぼ機能を停止しているこちらのレジではなく、藤野のレジの方にだ。
その様はまさに蛇……いや、ドラゴン!
やはりドラゴンこそが最強生物なのか!?
……すまない藤野。
今はもう少し、耐えてくれッ!
お前がドラゴンを食い止めてくれている間に、俺はこの状態異常魔法でネチネチと攻撃してくる魔王の配下みたいなお客様をやっつけるから!
そうしたらすぐに加勢するから、それまでなんとか耐えてくれぇぇぇッ!!




