第69話 ベリー苦シミマス
いつまで経っても減らない店内のお客様。
レジ待ちの列。
そんな中俺はふと、爆弾を抱えたお客様を発見してしまう。
それも、藤野のレジに並ぶ列の中に――。
ここでいう爆弾とは、店内の端末から印刷されるチケット引換券。
では、なぜそれが爆弾なのか?
答えは簡単。
圧倒的にレジでの処理に時間が掛かるからだ。
チケットの出力は印刷機が一台しかない都合で、一口ずつしか行えない。
しかもこのチケットの清算はいっぺんには行えず、お客様が二枚のチケット引換券をお持ちしたならば、面倒なことにお会計を分け、別々に一回ずつ清算しなくてはならなかった。
そもそも一枚印刷するのにも、かなりの時間が掛かるというのに――だ。
こんなものを、混雑時に持ってこられれば一気に大ピンチ。
それもよりによって、五口分も持って来られた日には――。
その爆弾を抱えたお客様のお会計が回ってきた瞬間、案の定藤野は情けない声で俺の名を呼んだ。
「あ、青砥しゃぁぁん……」
「わかってる! 代われっ!」
「ありあとごじゃますっ!」
……藤野!
お前、もう人語すらまともに話せなくなって――!?
そんなになるまで……ッ!!
――などとふざけている場合ではない。
俺はレジが反応するギリギリ最速のスピードで、スキャンやお会計をしながらも、同時にお客様へこんな説明をする。
「チケットが印刷されるまではお時間が掛かり、その間は新たなチケットのお会計は出来ませんので、よろしければその間は後ろでお待ちのお客様のお会計を優先してもよろしいでしょうか?」
「あ、大丈夫ですよ」
――よしっ!
お客様からの了承を頂いた俺は、早速チケットの印刷中に新たなお客様のお会計をこなした。
チケット代のお会計、その印刷中には新たなお客様のお会計。
チケット、新たなお客様、チケット、新たなお客様――。
それを最速のローテーションで繰り返し、俺はなんとかこの危機を逃れたのだった。
……ふう。
シビアな戦いだったぜ……!
だがこれで安心は出来ない。
なぜならまだまだ店内のお客様は、まったく減っていないのだから――。




