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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
最終章 最凶イベント~クリスマスが今年もやって来る~
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第67話 嵐の前

  そういうわけで、俺はクリスマスイブのバイトを押し付けられた挙げ句、クリスマスケーキまでホールで一つ押し付けられてしまったのだった。

「はあ」と、俺はついついレジに立っていることも忘れ、大きな溜め息を吐いてしまう。

……おっと、いかんいかん。

 だが、そんな俺よりも大きな溜め息がこの直後隣から届いた。

「はーあぁぁぁぁ……」

――藤野だ。

 彼女が残念そうに、特別大きな溜め息をついたのだ。

 俺は強いられているかのような義務感から、訊ねる。

「……ええと、どうしたのかな? 何かあった?」

「……はあ。私、イブにバイト入れられちゃいましたよぉ……」

「俺もだよ」

「青砥さんは別に用事無いからいいじゃないですか」

「決めつけるなよ!?」

 アリオンの予定があるもん!?

 藤野は俺の言葉など無視し、なおも続けた。

「ずーっとクリパ、楽しみにしてたのになぁ……。クリボッチとか……」

 気の毒になる程、ガチで落ち込む藤野。

 そんな彼女の顔を見ていた俺の口を、こんな言葉が突いて出る。

「……ざまあ」

 やばっ!?

 つい心の声が漏れてしまった!

 ギロリと、藤野の目がこちらを下から睨み付けた。

「今なんか言いました?」

「べ、別に? 何も?」

「……ふぅん?」

 しつこく疑いの眼差しを向け続ける藤野から逃げるよう「廃棄見てくるわー」と俺は逃げるのだった。

 そんなやりとりもいつしか忘れ、時は流れてついにその日がやって来てしまう。

 楽しかった出来事を消し去るように――。



  クリスマスイブ当日。

 バイトが始まる前、事務所で勤務が始まるまでを待機している現時点で、既に不機嫌そうな藤野。

 俺だって嫌なのにコイツめ、自分ばかり被害者面しやがって……。

 それもそのはず。

 俺達は望んでいないバイトを入れられたばかりか、コスプレすらもクズ店長の命令によってさせられていたのだ。

 藤野はサンタ。

 そして俺はトナカイ。

……でもまあ、ミニスカサンタ似合ってるなコイツ。

 だが、それを言うのはなんだか負けた気がするので、黙っておくことにした。

……まあ、褒めて機嫌がよくなるならそうするが、まず無いしな。

 さ、仕事を始めようか。

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