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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第六章 おでん襲来~招かれざる客達~
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第60話 担当カラーはオレンジ!

 いつしか店長も帰り、客足も落ち着いた頃、レンジの上に置かれた二つの防犯用に備えられたオレンジ色のカラーボールに、藤野が釘付けとなっていることに気付く。

「それがどうかしたか? 藤野」

「前から思ってたんですけど」

「うん?」

「このボールって結構固いですよね」

「ああ」

 確かに彼女の言う通り、それは触るとかなり固かった。

 藤野は続ける。

「こんなに固いと、いざという時に犯人へ投げつけても、割れなさそうですよね」

「そうだな。だからこれを投げる時は犯人と言うより、その足元の地面に叩きつけるといいらしいぞ。ボールが直接当たらずとも、中の塗料さえ当たればいいんだから」

「なるほどー。でも足元を狙うのって、それはそれで難しそうですよね。練習とかしておかないと」

「まあそうだな」

 ここでおもむろに、藤野はカラーボールを一つ手に取った。

「それにこれ、このお店が出来た四年前からここにあるんですよね?」

「そういうことになるな」

「中が劣化して、塗料が固まってたりしません?」

「……大丈夫だとは思うが、無いとは言い切れないなぁ」

「ですよね。本当にまだちゃんと使えるんですかね、これ……」

「うーん、どうだろう……」

 そう俺が考える素振りを見せたその時――!

「ていっ!」

「ていっ!?」

 何をトチ狂ったのか、藤野がこちらへ持っていた防犯カラーボールを放ってきたのだ。

――ば、バカッ!?

 何が「ていっ!」だよ!?

 それは緩やかな放物線を描き、こちらへと向かってくる。

 藤野も本気でぶつける気など無く、冗談半分でやったことのようだ。

 だが、だからと言ってもしも俺がこれを取り損なえば、大惨事となることは明白。

 マジで洒落にならない。

 スローモーションで流れる光景。

 一瞬の内にそんな様々なことを考え、焦りながらも俺は見事、ボールを両手でキャッチした。

 キャッチ……したのだが――。


  ベチャッ!


「あっ」

 キャッチした俺の手の中ではぜるボール。

 この瞬間もちろん、俺は蛍光塗料まみれとなった。

 俺よりも驚き、唖然としている藤野に言ってやる。

「なぜ投げた」

「え、いや……」

「なぜ投げた」

「その……ノリで……?」

「なぜ投げたーっ!? この塗料は洗っても最低一週間は落ちないキツいやつなんだぞーっ!? これじゃあ大学に行けねぇじゃねーか!?」

「やったね! 休みですよ先輩!?」

「別に休みたくないよ!? むしろ講義には出ておきたいんだよ俺は!?」

「じゃあ……そうだ! オレンジマンとして生きていく道もアリっちゃアリ――」

「ねぇよッ!! そんな選択肢あるかっ!? 大学生活メチャメチャになるわ!」

……この後、さすがの藤野もメチャクチャ反省した。

 大学は一週間自主休講した。

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