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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第六章 おでん襲来~招かれざる客達~
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第56話 強敵! オーディン現る!

 初秋といえども、厳しい残暑が続く九月の第一週。

 クズ店長から、出来れば聞きたくなかったこんな指示が飛ぶ。

「青砥」

「はい?」

「今日からおでん始めるぞ。用意しろ」

「……はい」

 そう、おでん開始の指示だ。

……クソ。

 なんで二人しか居ない夕勤にこんな面倒なことやらせるんだよ……。

 やるんなら人手の多い昼の内に用意しとけっての!?

 俺は不貞腐れながらもバックヤードからおでんの保温器やら容器やら、具材やら出汁やらを引っ張り出し、言われた通り販売の支度を始めた。

 あーあ、まだこんなに暑いのに、どうせおでんなんか売れねぇよ!

……ところがどっこい、これが売れるのだ。

 季節の変わり目を知らせる、秋のコンビニの風物詩とも言えるおでんは割引キャンペーンの効果だけでは説明がつかないくらいに売れた。

 むしろ店員の体感的には、真冬よりも秋の方が売れているようにさえ感じる。

……謎だ。

 そしてこのおでんの販売開始が、コンビニバイトにとっては地味ぃーに面倒臭い。

 テーヘンも最近では比較的楽だと言われるセルフサービスでのおでん販売となっているが、これはこれで問題もある。

 店員が自分でおでんを入れるわけでは無いので、数のミスが発生しやすいのだ。

 例えばお客様がおでんを容器にギュウギュウ詰めしてしまうと、しっかりチェックしたはずが、底に隠れていた商品に気づけず、実際よりも少なく数え間違えていたりするため、棚卸しの際に数が合わないことも多々あった。

 このパターンならば、まだよい。

 だがもし、こちらが誤っておでんの数を多く打ってしまえば、それは即クレームに繋がる。

 それを防ぐためにも、容器に入れたものの確認をお客様にしたりと努力もした。

 しかし、ここにも落とし穴があったのだ。

 お客様が一度は容器に入れたおでんを戻した時、こちらがそれに気付けず、またその申告が無ければレジでの数は多いまま。

 そういった具合の、もはや誰に責任があるのかあやふやなミスも、店員側に責任転嫁されることも無くはない。

 それらのリスクから結局――。

「お取りしましょうか?」と、こちらから声を掛けてセルフサービスによるミスを防ぐようになり、仕事は増え、振り出しに戻る。

 それに売れたら売れた分だけ、補充もせねばならないのも地味に面倒臭い。

 その上面倒なことに、そのまま保温器に補充していいおでんは少なく、その種類ごとに油抜きなどの下処理をしなければならなかったりもする。

 同時に減った分の出汁も足さねばならないのだが、そのまま出汁を入れてしまうと保温器の温度が下がってしまうため、一々水をレンジで沸騰させねばならず、これまた面倒だ。

 もちろん、減った容器やその蓋だって切らしてはいけないし、箸の減りも早まり、補充回数が増える。

 とまあこのように、本当に地味ぃーに面倒なのだ、おでんは……。

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