第41話 伝統芸能「また俺何かやっちゃいました?」
「そういえば先週は、夜勤も入っていたそうじゃないですか。友達とか居ないんですか?」
お前もそれを言うか!?
藤野はワザとらしい演技で続ける。
「あ、すみません私ったら」
知ってるぞ、この流れは……。
「訊くまでもなく居るわけ無いですもんね」
なんだよこの鬼畜JKは……。
次のクズ店長候補かよ!?
そっくりな思考回路しやがって!
「それで、夜勤の仕事はどうだったんですか?」
そう訊ねてきた藤野に、俺はここぞとばかりに言った。
「ん? ああ、友達が遊びに来たよ?」
「えっ!? 友達がですか!?」
いや驚き過ぎだろう!?
さては信じてないな!?
俺はなおも、自慢気に言う。
「雨宮が遊びに来て、帰るのが寂しかったのか二時間も立ち読みしていったんだよ」
この瞬間、藤野の目から一気に光が失せた。
彼女はまったく感情のこもっていない声で呟く。
「……ふーん。また来たんだあの子……。それも、真夜中に……」
……あれ?
俺、なんか地雷踏んだかな?
「……」
「……」
その後は何の無駄口も叩かず、不自然な程静かに勤務時間を過ごした。
いや息が詰まるわっ!
ちょうどいい塩梅とか無いのかよ!?
藤野……よくわからないヤツだ。
不意の一言で機嫌を損ねてしまう。
JKは気分の生き物なのだと、俺は新たに思い知るのだった。




