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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第四章 夜勤者の日常~あるいは異常~
36/77

第35話 この話はフィクションです?

 これがブラック企業に就職してしまった、ホンモノの社畜という生物なのだろう。

 アンデッド系モンスターや、ゾンビ映画から覚えるような恐怖しか感じない。

 本当にいつ見ても、聖なる光の魔法で即死しそうだなこの人……。

 でもそれにしたって、なんでこんな夜中に?

 いくらなんでもこれは、限度を超えているとしか……。

 っていうか完全に過労死ライン超えてるよなぁ。

 エリアマネージャー……ブラック過ぎるだろ……。

 そんな本音は隠し、俺はアンデッド黒野へ当然の疑問を訊ねる。

「あのー、黒野さん。こんな時間にどうしたんですか?」

「どうしたもこうしたも、仕事に決まってんだろザコが」

 相変わらず口悪いなぁ……。

「こんな夜中なのに、仕事……ですか?」

「……何かおかしいか?」

 ギロリと、餓えきった野性動物が獲物を見付けた時のような目がこちらを向けられた。

 おかしいだろどう考えても!?

……とは、口が裂けても言える状況ではない。

「……いえ、別に」

 そうお茶を濁すと、黒野は「フン」と鼻で返事をした。

 俺の横を通り抜け、事務机に置かれた発注や廃棄などを行う専用の小型端末を手に取るゾンビ黒野。

 彼はあろうことか、そのまま「ピッピッ」と何やら端末の操作を始めた。

……えっ。

 それはいくらエリアマネージャーといえども、勝手に操作するのは……。

 見かねて、俺は注意する。

「く、黒野さん!? 何をやってるんですか!?」

「何って、見りゃわかんだろ発注かけてんだよ?」

「そ、そんなことを本部の人が勝手にやっていいんですか!?」

 いいわけがない。

 しかしリビングデッド黒野は、物凄い剣幕で怒鳴った。

「やらなきゃ本部に儲けが出ねぇんだよ!? そしたらこっちもおまんまの食い上げだろうがぁっ!? 餓死しろって言うのか!? この俺とその家族によぉ!? ああ!?」

「いえ……。そういうことを言ってる訳じゃなくて……もう少し当たり前のことというか……」

「お前が世の当たり前なのか!? グローバルスタンダードなのかぁ!? 学生風情がよぉ!?」

 狂ってる……。

 どう見ても正気じゃない……だけど……。

 もはや、俺には何も言い返せない。

 なんでこの人はそんなにギリギリで生きてるんだろう。

 ウォーカー黒野が念押しする。

「……今見たことは黙っとけよ?」

「……はい」

 それからも、彼は発注を気でも狂ったかのように掛け続けた。

「ヒッヒッヒ……売り場に置ける限界以上の発注をしてくれるわ……。近所の小学校で運動会があった時のレベルでなぁ? ヒッヒッヒ……」

 うわあ、やばいなんてもんじゃない……。

 コンビニ業界の闇を垣間見てしまった……。

 さすがサイコパス率が多い業界だ。

 真夜中でも燦然と道路沿いで、光を放つコンビニ。

 しかしこの業界の闇は、夜以上に深いのかもしれない――。

 この時、五味はどうしていたのかというと、よく見る光景なのだろう。

 我関せずと言った風に、ゲーム雑誌をパラパラと捲っていた。

 どうやら深夜この店に現れるキョンシーには、こう対応するのが正しいのだということを知る。

 いや、正しくないからこそ、五味の時給が上がったことは一度もない。

 こういう勤務態度も、ばっちり報告されているに決まっている。

 俺はこうはなるまい……。

 この二人の、どちらにも……。

 そう心に誓うのだった。

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