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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第三章 再会~でも初めまして~
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第28話 混乱のサラダ

「歩退いて、そいつ殺せない」

「殺さなくていい!?」

 なんと俺を尾行した鈴が、バイト先であるテーヘンマートへと来てしまったのだ。

 それは別にいい。

 だが、そのタイミングが悪かった。

 たまたま店に来ていた魔王幼女こと、真緒とバッティングしてしまったのだ。

 頭はいいが精神年齢がクソガキ並みの鈴と、悪知恵の働くリアルクソガキな真緒。

「なんだこのちんちくりんの色白ガリガリ貧乳女は? 勇者の仲間は小学生か? それに引きニート顔だな! 社会性をちっとも感じない! あとぼっち顔もしてるな! どうだ? 図星だろう? 人の娘よ!」

……こいつ、意外と人を見る目あるな……。

 マジで図星を差しちゃったよ……。

 真緒によるこの口撃を真に受けた鈴が、今まさに事に及ぼうとしていた。

 そんな鈴を、俺は羽交い締めにして制する。

 しかし、彼女は浮いた足をバタつかせて抵抗を続けていた。

「放せ歩。こいつは魔王を自称した。魔王なら殺すべきだ。法的に問題ない」

「いや問題あるわ!? ゲームじゃなくて現実だからね!?」

 このやり取りから、自分が完全なる安全圏に居ると気付いた魔王は、愚かにもこちらを挑発する。

「ハッハッハ! つまり私はお前達勇者パーティーすら手出し出来ない、最強のパーフェクトボディ……幼女の体を手に入れたということだな!」

 こんのガキは余計なことをぉぉぉっ!? 

 案の定、その言動は鈴をぶちギレさせる。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロス……」

 こ、これはヤバイヤツだ!

 ええい、こうなったら仕方あるまい! 

 俺は鈴を小脇に抱え直し、空いた方の手で携帯を取り出す。

 もちろん、電話の相手は――。

「……あ、もしもし真緒ちゃんのお母様ですか?」

 そう、真緒ちゃんママだ。

「ちょ、あっ、それはあの、反則じゃ!? だ、ダメダメ勇者! 無し無し!」

 効果覿面。

 鈴をブチギレさせてからもふざけた調子でいた魔王の表情から、一気に余裕の色が無くなる。

「ひ、卑怯だぞ勇者!?」

「使えるモンはなんでも使うのがこの世界なんですよ魔王チャン? それに最初に鈴を引きニート顔だのぼっち顔だの、あることないこと()挑発を始めたのはそっちだろうが!」

「……フン。今日のところは私が退いてやろう。サラダバー!」

 強がってはいたが、やはり相当母親にチクリを入れられたことが堪えたのだろう。

 真緒はすんなりと引いてくれた。

 ってかサラダバーて……。

 どんだけママにびびって焦ってたんだよ……。

 小者感漂わせながら、そそくさと店を後にした魔王を見送った後で、鈴に言ってやる。

「……まあなんだ、気にするなよ。あんなガキの言うことはさ」

「理解した。だが次は必ず、あのメスガキにわからせる……」

……うん、まだキレてますねこれ……。

 だがこれにて、一応は一件落着。 

――とはならない。

 なぜならここはテーヘンの店内。

 幸いなことに客はまったく居なかったが、ここには当然、俺以外の店員が居る。

 そう、藤野が――。

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