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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第三章 再会~でも初めまして~
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第27話 ドーセイっちゅうねーん!

 まさかあの近所の鈴が、テーヘンマートのスタッフ連中と肩を並べるレベルのクズに育ってしまっていただなんて……。

 それに――。

「鈴よ、お前バイトとかしてないよな? 今の所持金は幾らだ?」

「何を言う歩、失礼な。しっかりと街に被害を及ぼすモンスター達を討伐して稼いでいるだろう?」

「それゲームの中での話ですよね?」

「所持金だって二百億ギリーはあるぞ? 大金持ちだ」

「だからそれはアリオンの通貨じゃねぇか! 現実じゃ使えないぞ!?」

「大丈夫、家賃代をうまくやりくりしているから」

「だからそれはそういう使い方しちゃダメなお金だから!? 大学に通うためのものだからな!? 漫喫だって絶対迷惑だと思ってるからね!? 言わないだけで!」

「なら、どうすればいい?」

「どうすればって……そうだな……じゃあ――」

 結局、鈴をこのまま満喫に住まわせておくのはどうかと思い、しばらくは俺の住むアパートで引き取る運びとなるのだった。

「……本当にいいのか歩? 私が一緒に住んでしまって」

「よくないぞ。ぶっちゃけバイト代と奨学金使っても、二人分の生活費を払うとカツカツだよ。でも仕方ないだろ……。いつまでも漫喫に迷惑掛けるわけにもいかないし」

「私の家賃代を使えばいい」

「それはお前の家賃代だから使わない!」

「……すまんな」

「そう思うなら一日でも早く新しい部屋を見付けろよ? それとできれば

バイトも見付けろ。いつまでもコミュニケーションが苦手だって、甘えてちゃダメだぞ」

「そう言われて、この私が働くと思うか?」

「まあ無理だよなぁ」

「わかればいいのだ」

「いや、偉そうにする意味がわからん」

「でも人と関わると、傷付くことになる……」

……そうだった。

 こいつは人に遠慮し過ぎたりして、これまでも傷ついてきたんだったよな……などと同情はしない。

「そう言えば俺が働かなくていいとでも、言うと思ったのなら大間違いだぞ!? もう子供じゃないんだし、昔みたいには甘やかさないからな!?」

「チッ……歩なら軽くちょろまかせると思ったのに」

「心の声が漏れてるぞ!?」

「大丈夫、最初から隠す気など毛頭無い」

「余計質悪ぅぅぅい!?」

「素直だと言ってくれ」

 こうして、急遽俺と鈴との同居生活は始まったのだが――。

「歩、新しいスキルがなかなか身に付いてきたな」

「おう! 攻撃だけじゃなくて、高速移動にも応用出来るようになったぜ! かなり使い勝手いいぞこれ!」

「それならどうだ? このままもう一狩り行くか? どこに行く?」

「そうだなぁ……」

 その時、俺の視界の隅に時計がチラリと入り込んだ。

……もう午前……三時だとぉっ!?

……まずいな。

 このままじゃ俺まで鈴のように堕落してしまう!?

「……寝るぞ」

「えー、まだ三時だぞ」

「まだじゃない、もう三時だ! ほら! さっさとログアウトしろ!」

 俺は問答無用で並べて布団を敷き、鈴と共に床に就いた。

 さあ、明日に備えて少しでも寝とかなきゃな。

 そう思い瞼を閉じた途端、鈴が話し掛けてくる。

「……なあ歩」

「……なんだ?」

「こうしていると、子供の頃にお互いの家を行き来して、よくお泊まり会をしたことを思い出すな」

「……そうだな」

「あの頃は毎晩お楽しみだったな?」

「ちょっ!? その言い方やめろ! トランプで遊んだだけだろ!?」

「……そうとも言う」

「そうとしか言わないよ? ほんと頼むよ……。お前の言い方だと周囲に色々誤解されかねんな……」

「……別にいいじゃん、誤解されても」

「よくないだろ!?」

「……歩のバカ」

「なぜ俺が罵倒されているのか……」

 こんな調子で、鈴がこの部屋に来てからというもの、寝不足の日々が続いていた。

 だがまあ、こんな生活も悪くは無い。

 少しでもそんな風に考えたこの時の自分を、おがくずで満たされた落とし穴に落としてフガフガとさせてやりたい。

 この翌日のこと。

 いつものように、事件がテーヘンで起こった。



「歩退いて、そいつ殺せない」

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