第25話 コミュ障極まってた
「お前……AMEMIYAって本名かよ……!?」
「それはこっちの台詞。まさかAYUMUが歩だなんて」
「まさか、お前までネトゲオタと化していただなんて驚いたよ……」
「まったく同感だ」
「にしても久し振りだな……。最後に会ったのは、確か俺が大学に入って一人暮らしを始める前だから……三年ぶりくらいか?」
「うん……」
「そうか……」
懐かしさから、逆に俺達はしばらく黙ってしまった。
だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。
それに何より、色々と訊きたいことがある。
まずは……。
「なあ鈴、お前って今何してるんだ? 就職か、大学に進学したのか? もし大学生なら一年生の年だよな?」
「歩になら、大体の想像がつくんじゃないか?」
「……そうだな、コミュ障のお前がいきなり就職するとは思えない。頭もいいし、進学を選ぶはず。そして大学を選ぶなら、仲のいい者が居るところにするはず。例えば、俺の居るところとか……」
「さすがは歩」
「……だが待てよ? お前の姿をキャンパス内で見かけたことなんて一度も無いぞ? いや、もちろん広いキャンパス内で、会わないのはそこまでおかしいことではないとも思うが……」
「それも歩なら、少し考えればわかるはず」
「……まさか入学式で友達が作れず、そのまま引きこもりコースか? それならばネトゲに入り浸っていたことにも説明がつくな……」
「正解」
「当たっちゃったよ……」
俺はなんともいたたまれない気持ちになった。
「……そうか。つらかったな。俺が少しでも、お前のことに考えを巡らせてやれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……」
ネトゲをやっているのだって、この世界に居場所が無かったからなのかも知れない。
寂しさをまぎらわすために、ネットの中に繋がりを求めたのかも知れない。
「鈴……気付いてやれなくて、すまなかった!」
そう言って俺は頭を下げようとしたが、それよりも早く鈴がそれを手で制する。
「いや、いい。謝罪の必要はない」
「えっ」
「結果的にこの素晴らしいネトゲという至高の趣味と出会うことができた。睡眠時間を惜しみ、削ることが苦にならないほど、熱中できるものに……」
……ダメだこいつ。
本気で言ってるなこれ……。
コミュ障悪化してるじゃん……。
いつも無表情で、何を考えているのかわかりづらい鈴であるが、俺にはその言葉が本心からのものだということがわかった。
彼女は昔から変わらぬ、淡々とした抑揚の少ない事務的な口調で続ける。
「それに……」
「それに?」
「また、歩とも会えた」
「鈴……。ああ、そうだな。子供の頃近所の路地やらを探検した時のように、また二人だけのパーティで冒険もしてる。まあネットの中でだけどな?」
「うん」
がっしりと、俺達は手を握り合った。
変わらぬ二人の友情を確かめるように――。




