表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第三章 再会~でも初めまして~
26/77

第25話 コミュ障極まってた

「お前……AMEMIYAって本名かよ……!?」

「それはこっちの台詞。まさかAYUMUが歩だなんて」

「まさか、お前までネトゲオタと化していただなんて驚いたよ……」

「まったく同感だ」

「にしても久し振りだな……。最後に会ったのは、確か俺が大学に入って一人暮らしを始める前だから……三年ぶりくらいか?」

「うん……」

「そうか……」

 懐かしさから、逆に俺達はしばらく黙ってしまった。

 だが、いつまでもそうしているわけにはいかない。

 それに何より、色々と訊きたいことがある。

 まずは……。

「なあ鈴、お前って今何してるんだ? 就職か、大学に進学したのか? もし大学生なら一年生の年だよな?」

「歩になら、大体の想像がつくんじゃないか?」

「……そうだな、コミュ障のお前がいきなり就職するとは思えない。頭もいいし、進学を選ぶはず。そして大学を選ぶなら、仲のいい者が居るところにするはず。例えば、俺の居るところとか……」

「さすがは歩」

「……だが待てよ? お前の姿をキャンパス内で見かけたことなんて一度も無いぞ? いや、もちろん広いキャンパス内で、会わないのはそこまでおかしいことではないとも思うが……」

「それも歩なら、少し考えればわかるはず」

「……まさか入学式で友達が作れず、そのまま引きこもりコースか? それならばネトゲに入り浸っていたことにも説明がつくな……」

「正解」

「当たっちゃったよ……」

 俺はなんともいたたまれない気持ちになった。

「……そうか。つらかったな。俺が少しでも、お前のことに考えを巡らせてやれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……」

 ネトゲをやっているのだって、この世界に居場所が無かったからなのかも知れない。

 寂しさをまぎらわすために、ネットの中に繋がりを求めたのかも知れない。

「鈴……気付いてやれなくて、すまなかった!」

 そう言って俺は頭を下げようとしたが、それよりも早く鈴がそれを手で制する。

「いや、いい。謝罪の必要はない」

「えっ」

「結果的にこの素晴らしいネトゲという至高の趣味と出会うことができた。睡眠時間を惜しみ、削ることが苦にならないほど、熱中できるものに……」

……ダメだこいつ。

 本気で言ってるなこれ……。

 コミュ障悪化してるじゃん……。

 いつも無表情で、何を考えているのかわかりづらい鈴であるが、俺にはその言葉が本心からのものだということがわかった。

 彼女は昔から変わらぬ、淡々とした抑揚の少ない事務的な口調で続ける。

「それに……」

「それに?」

「また、歩とも会えた」

「鈴……。ああ、そうだな。子供の頃近所の路地やらを探検した時のように、また二人だけのパーティで冒険もしてる。まあネットの中でだけどな?」

「うん」

 がっしりと、俺達は手を握り合った。

 変わらぬ二人の友情を確かめるように――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ