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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第二章 魔王転生~邪悪な匂いがスメル~
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第21話 大魔王召喚

 俺の気などお構い無しに、魔王のイタズラはなおもエスカレートしていく。

 そしてついに――。

 ドーン!

 何かがガラスに衝突するような大きな音が、店内に響いた。

 何事だ!?

 音の正体を確認しようと店の外へと飛び出した俺と藤野は、驚きの光景を目の当たりにする。

「なっ!? 魔王っ!」

「真緒ちゃん!?」

 なんとそこには三輪車に乗り、店のガラスへと突撃する魔王の姿があったのだ。

 彼女は悪びれる様子もなく言い放つ。

「おお勇者! 今のはわざとじゃないんだぞ? アクセルとブレーキを踏み間違えたのだ!」

 ふざけんなよ……。

 昨今この国で、増えつつある問題を皮肉ってるつもりか?

 もはや突っ込む気すら起きねぇ……。

 そんなことよりも……。

「ガラスが割れなくてよかった……」

 いくら魔王といえども、今はこの世界の住人。

 その上幼女。

 絶対にケガをさせる訳にはいかない。

 俺は回復魔法だって使えないのだから。

 本当に何事もなくてよかった……。

 さすがに今回は本気で叱ってやる。

「真緒ちゃん! 最近のイタズラはちょっと度が過ぎるぞ!? さすがに今回のは危ないだろうが!」

 だが、魔王こと真緒は悪びれる素振りもなく――。

「魔王だもーん! 危険なくらいがいいんだもーん!」

 聞く耳持たずか……。

 もうこうなったら最終手段だ――!

「……そうか、そっちがそういう態度を取るのなら、こっちにも考えがある」

「はぁ? 考えだと? お前にぃ? そんな大した考えがあるのぉ?」

「……」

 完全に舐められているが、この際もうどうでもいい。

「魔王サトゥルネス! いや、真緒ちゃん! 奥の手を使わせて貰うぞ!」

「奥の手……だと!?」

 俺はおもむろに携帯を取り出し、戸惑う魔王の目の前である人物に電話を掛けた。

「……あ、もしもし佐藤さんの携帯でしょうか? 先日番号を交換させていただいたテーヘンマートの青砥です。その節はどうも。……それで、今お時間の方少しよろしいですか?」

「佐藤」という名を出され、魔王の顔色が変わるのがわかった。

 俺はなおも電話口の相手と会話を続ける。

「実は今真緒ちゃんが店に来ているのですが……えぇ……はい……えぇ……そうです……はい……」

 会話が進むにつれ、魔王の顔からは血の気が引き、みるみる内に青ざめていく。

 それはさながら、母親が急に真面目な顔と口調で電話をしている姿を眺めている、子供のようにだ。

 クックック、効いてる効いてる……。

 ここでついに本題を切り出す。

「それでですねお母様、本日はちょっと真緒ちゃんが危険なイタズラをしてまして……はい……そうですね……はい……最悪大ケガをするような……えぇ……三輪車で、店のガラスにぶつかるというもので……」

 電話の相手はもちろん真緒の母親。

 言うことを聞かないのなら魔王すら凌駕する鬼……そう、大魔王の力を借りてしまえばいいのだ。

「きっ、汚いぞ勇者!? それが貴様のやり方かっ!?」

 どうとでも言うがいい。

 魔王を無視し、電話を続けた。

「あ、はい……真緒ちゃんですか? ……えぇ、今近くに居りますが……はい? ……あ、わかりました、代わります」

 ここで俺は魔王に携帯を差し出す。

 それを震える手で彼女は受け取った。

「……もしもし? ――ッ!?」

 刹那、顔面蒼白となり、目も虚ろで冷や汗をビッショリとかいた魔王は電話を終えると、いつもとは打って変わった口調で「ご迷惑をお掛けしました」とだけ言い残し、三輪車を押して去っていくのだった。

 この後、家でもこっぴどく叱られたのだろう。

 これ以降、魔王が三輪車でガラスに突っ込むような危ないイタズラをすることは無くなった。

 しかし、それ以外のイタズラに関しては――。

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