第19話 止まぬイタズラ
こうして俺は、またしても魔王に勝利してしまうのだった。
だがこの魔王の本質はそこではない。
魔力が無かろうと腕力が無かろうと、諦めずに何度も何度も店へとやって来ては、俺への嫌がらせのためだけにイタズラを繰り返し続けたのだ。
そのしつこさたるや、ホットスナックを揚げ続け、頑固な油汚れがベッタリと付着して取れない、コンビニのフライヤー……いや、それ以上だった。
「刮目せよ勇者! 今から私はこのパンを袋の上からツンツンしちゃうぞ? ツーンツン! ツーンツン! ツンツンツンッ! ツンツンツンツンツンツンッ!」
「やめろ商品が傷むだろ!?」
まあ、おでんじゃないだけ幾らかマシだが……。
またある時は――。
「フハハ! 夏直前のジメジメベタベタと蒸し暑いこの時期、アイスボックスの中は涼しくて最高だ!」
「ちょっ!? 何入ろうとしてんだよ!? あーあー扉も開けっぱなしにして!?」
こいつ、絶対将来はSNSを炎上させるようなアホになるだろ……。
それか炎上系動画配信者になる未来しか見えない……。
まあでも、さすがに今回のことで少しは懲りただろう。
しばらくはこのコンビニも安泰だな!
――そんな訳がなかった。
魔王のイタズラはその後も続き、この間に至っては――。
「クッチャクッチャ……ペッ!」
ガムを店内で吐き、綺麗に掃除した床にベッタリと張り付ける始末。
「お前なぁ……!?」
これらのイタズラの都度、俺は――。
ゴチン!
「あだっ!?」
ゴツン!
「ふぎっ!?」
ガツン?
「イダッ!?」
容赦無しにカメラの死角で鉄拳制裁をかましてやった。
今なら国民的アニメであるクレパスしんたろうちゃんの、あの母親の気持ちもよくわかる。
どうだこれが正義の鉄槌の威力だ魔王!
だが――。