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新人バイトJKに手を出すなと店長から釘を刺されたが、生意気すぎてあり得ない  作者: 兼定 吉行
第一章 コンビニバイト~その真実~
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第1話 藤野という少女

 この店の店長の名は海野もずく。

 二十七歳女性、独身。

 ショートカットが似合う中性的なモデルのようで美しくもあり、あどけなさすらも同居させるという、類い稀な程魅力的な容姿を持ったクズだ。

 もう一度言おう、クズだ。

 大事なことだから重ねて言おう、クズだ。

 見た目がいいクズだ。

 それも見本かお手本のような、サイコパスクズ店長だ。

 そんなクズの下、わりと従順に四年間を勤め上げた俺はかなりの信頼を置かれ、発注やら売り場の管理やらの様々な雑用……ではなく仕事を任されている。

 そしてこの日も、新たな厄介事を押し付け……じゃなくて新たな仕事を任されようとしていた。

 クズ店長が事務机のパソコンに向かったまま、こちらに一瞥もくれずに告げる。

「そういえば今日の夕勤から、新しい子が来るから」

「はい!?」

 初耳だぞ……。

 どうりでシフト表の、俺のパートナーが空白のままだったわけだ……。

「そういうことは先に言って下さい」

 俺はそう苛立ちながら伝えたのが、聞こえていないかのようにとぼけた様子でクズ店長は続けた。

「ちなみにメチャクチャ可愛いJKだけど青砥……手は出すなよ? 県の条例違反で捕まるぞ」

「ちょっ!? なんで俺が手を出すこと前提で話してるんですか!? そんなことしませんよ!」

 失礼な奴め!

……とは言ったものの、そんなに可愛いJKなら気になっちゃうよなぁ。

「もうすぐ来る頃だな」

 そのクズ店長の言葉通り、「コンコンコン」と事務所入り口の扉をノックする音が響く。

「ほら来た。どうぞー」

「失礼します」

 そう言って扉から現れたのは、甘く爽やかなこの時期に咲く花の香りを纏ったミドルの黒髪が美しい少女だった。

 空気中の水分を集めそうな長い睫毛。

 大きな二重の目に、これまた大きく円らな瞳。

 形のよい小さな鼻。

 柔らかそうな頬。

 そして桜色の唇。

 しかも推定Fカップの低身長ロリ巨乳。

 ここまで来ると、もはやわざとらしさしか感じない。

 随分とキャラデザと作画頑張ったんだなぁとか、そんなバカなことを考えてしまうくらいに――。

……大丈夫、高い志を持つ……いや、持っていた俺がこんな三次元の女にうつつを抜かし、落ちぶれて堪るか。

 そんなこちらの心の葛藤など知らぬ彼女は、薄く微笑みながら頭を下げると、若干緊張した面持ちで言う。

「今日からお世話になります、藤野花枝(ふじのはなえ)です。よろしくお願いします」

 あら声も名前も可愛いじゃないですか……。

「あ、青砥です。よろしく」

「はいっ! 青砥さんっ!」

 藤野から向けられた満面の笑みに先程の店長の言葉も忘れ、俺はあっさりとキュン死しかけた。

――くっ!?

 ……危ない。

 こんな少女にいとも容易く殺られるところだったぜ……!?

 だが、もはや殺られるのも時間の問題。

 そう覚悟してしまう程に、この藤野という少女は可憐であった。

 だが――。

 俺の心配と淡い気持ちは数日後、緊張も解け、本来の自分を出し始めた藤野自身によってぶち壊しにされる。

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