第14話 魔王サトゥルネス(笑)
「恐れおののき、私の前に平伏すがよい!」
幼女とは思えぬ迫力。
だがそんなことよりも、もっと気になって仕方の無いことがあった。
それはもちろん――。
――この茶番、いつまで続くんだろう……。
案の定、藤野がチクリと刺してくる。
「……ノリノリじゃないですか青砥さん。いや、アルクさん……ぷっ」
「わざわざ言い直すなっ!?」
「くっくっく……大学生にもなって、恥ずかしくないんですか?」
「うっ……」
今死ぬほど恥ずかしいです……。
「……ま、まあこういう子供に付き合ってあげるのも仕事の内だから……?」
「いや遊びじゃないですか」
「返す言葉も無い……」
構ってしまったが最後、幼女は俺のことをごっこ遊びの相手をしてくれる人だと、そうはっきり認識してしまった。
幼女による設定語りが始まってしまう。
「四年前貴様と戦った時、確かに私は殺された! だがこの魂までは滅することは出来なかったのだよアルク君! よって私は新たな体を獲るために転生し、この世界で再び生まれ変わったというわけだ!」
いや結構設定しっかりしてるーっ!?
流行りの転生要素も入れてきたか……。
ちゃんと幼女の体であることにも説明できてるの凄いな……。
ってか勇者じゃなくて、魔王の方をロールプレイしてるのも、最近の子って感じだ。
……にしても、スライムのやつといい、本当にネット発の転生モノがキッズに大人気なんだなぁ……。
ここまでしっかりと作り込んでこられると、もはや二次元文化好きとして、適当な対応はできまい。
藤野の前だが……ええいままよ!
「そ、そういうことだったのか……!? だが魔王よ」
「なんだ?」
「気配だけは邪悪だけど、肝心要の魔力は全く感じないんだが? 魔法は使えるの? んん?」
「……」
不都合な質問だったためか、わかりやすく黙り込んでしまった魔王サトゥルネス(笑)。
相手の設定に乗りつつ、どうしようもない不備を突く。
こうすることで、俺はこの長引きそうなごっこ遊びに終止符を打とうとしたのだ。
しばらくして幼女は、思い出したように高笑いする。
「ハッハッハッハッ!」
「な、なんだよ!?」
「片腹痛いわ! 何を言うのかと思えば、なんだそんなことか!? 貴様ごとき魔力など使わずとも軽くほふれるわっ!」
……そう来たか。
「本当に?」
俺は久し振りにこの体に秘められた、聖なる光の力……趣味の筋トレで鍛えた二の腕にほんの少しだけ力を込め、それをこれ見よがしに幼女の眼前に突き出した。
すると魔王は――。
「ちょっ、ちょっとタンマ! やめっ! やめろ眩しい! その力は今の私にかなり効く! やめっ! お願い!?」
効果は抜群だ!
面白いくらいに魔王こと痛い幼女は、俺の筋肉を前にたじろいだ。
そんなやり取りを見ていた藤野がボソリと呟く。
「……大人げなっ」
「うるさいっ」