第12話 Fじの
当初は藤野にやられっぱなしの俺だったが、最近ではちょこちょこ反撃も出来るようになり、対等な立場になることも時間の問題となっていた。
ある日の夕方勤務の際、俺は前日の晩に考えた藤野のあだ名を披露する。
「藤野、これからお前のあだ名はチビノな」
「チビッ!?」
「どうだ? いいあだ名だろう? 小さなお前にぴったりだ」
「……しょ、小学生レベルですね」
「その割にはうろたえているようだが?」
ムムムと、藤野がこちらを睨み付ける。
そして次の瞬間――!
「ええっ!?」
なぜか藤野は自身の胸を鷲掴みにし、思いきり寄せて持ち上げた。
そのエロ過ぎる奇行に、今度はこっちがうろたえてしまう。
「あ、あわわ。あ、あの……藤野さん?な、何をしてらっしゃるのでありますか? ひ、非常に目のやり場に困るのですが……?」
「いいから見て下さい」
「は、はい……」
藤野は見せ付けるよう、たゆんたゆんとデカメロンを揺らしてこう続けた。
「ほ、ほぉら……どうです?」
やるからには照るなよ!?
こっちまで恥ずかしくなってくるだろ!?
……だが、これだけは認めるしかあるまい。
「す……すっごい……大きいです……」
その言葉を俺から引き出すなり、藤野が勝ち誇った顔で高らかに宣言する。
「これでも小さいチビノですかぁ?」
――くっ!?
そういうことかぁっ!?
完ッ全にしてやられたぁっ!?
「……いえ、全然チビノじゃないです……Fじのです……」
その瞬間、勝ち誇ったように藤野は下からこちらを見下ろした。
「わかればいいんですよ……?セ・ン・パ・イ」
わからせるつもりが、わからされてしまったぁ!?
……くそっ!
どうやら俺では、まだまだこの生意気なJKには敵わないようだ。
そう心底思い知らされる。
俺の憂鬱な、藤野とのバイト生活はまだ始まったばかりだ!