第9話 PS問題再び
またある日のこと。
藤野がバイトを上がろうかという頃、急にお客様がわっと増え出す。
そんな時に、あの問題が再び起こった。
……そう、PS問題だ。
お客様の多さに加え、多様な要望にも応えながら、二つのレジをフル稼働させつつ、事務所やらバックヤードやら、レジスペースの通路やらを忙しく行ったり来たりとしていた時だ。
――あっ!?
俺がそう思った時には、もう遅かった。
肘が意図せず、藤野のたわわと衝突してしまったのだ。
たゆんっ!
肘に柔らかな反発力を感じる。
しまっ――!?
「~ッ!?」
……やっちまった。
ただでさえ狭いレジの通路。
俺はこうなることを避けたくて、藤野にパーソナルスペースについてを日頃から口酸っぱく注意してきたのだ。
頬を染め、キッとこちらを睨み付ける藤野に、それ見たことかと、彼女にだけ聞こえるような小声で言ってやる。
「だ、だから言ったんだよ! PSが狭過ぎるって! こういうことが起こるから、いい加減もっと離れろよ!」
「嫌です!」
頑固だ……。
「お前だってぶつかったら嫌だろ?」
「べ、別に?」
「嘘だな。動揺してるじゃないか」
「う、嘘じゃないですし? 塵や埃が体にぶつかったくらい、普通誰だって気にしませんから」
コイツ言うに事欠いて、俺を塵や埃扱いしやがった!?
大ダメージです……。
藤野とバイトが被る度、俺は心の傷を増やしていった。




