闖入者
(3)
最初に美恵子がその「隣人」に気付いたのは通勤電車だった。
自分は大阪メトロのD駅を利用しいる。そして自分は必ず七時七分のメトロに乗り込む。
メトロは季節により通学生が乗り込む数の大小で車内が混み合う事もあるが、ただ日々殆ど自分が乗るこむ時間には車内は空いている。
だから自分は必ずほぼ決まった車両に乗り込み座ることができるのだが、ある時、不意に視線を上げると前の座席に座る男が居るのが分かった。
見ればスーツ姿で鞄からヘッドホンを取り出して耳に装着し音楽に耽っている。
彼は音楽に耽っているが美恵子が乗り換える駅が近づくと一立ち上がって一緒に駅のホームに降りた。そしてそれは数日続き、現に今朝も同じ電車だった。
当然ながら、正直それだけなら美恵子も何も思わない。
何故なら日本のビジネスは常に規則正しく、労働者は悲しいくらいの時間の規則性に従って生きてる悲しい存在なのだ。
勿論、美恵子もそんな悲しい一人なのである。
だから現代の働く労働者理論に沿えば、メトロで顔を合わせる規則性は特に何も異常性はない。
むしろ勤め先の企業を辞めない限り、それは人生の終わりまで続くかもしれないからだ。
だが…、である。
それがまた違う場所で出会うことになればどうだろう。
例えばそれがバーやフィットネスジム、結婚相談所等のとても個人的な時間を過ごすパーソナルな場所ともなれば…。
そう、美恵子の気持ちが穏やかで無くなって来るのは時間の問題だった。