雨ときどきキスのちクレイジー
梅雨の終わりをテレビの天気予報が告げたのが、確か約一週間前の事だった。
だからなのか、それとは全く関係ないのかはわからないが、一人の少年はまるでバケツの水をかぶったかのようないでたちで、公園の砂場の前に立ち尽くしていた。
少年の名は『佐久市林太』
中学三年生。
今はは平日の午前中だというのに、学校に行くこともなくこの有様である。
有様というのは、今の彼の姿を意味すると共に、彼の脳内の状態をも意味している。
――あの砂場で、小さい子供たちは色んなものを作るんだろうな。そして、作り上げた数分後、または数十分後にはそれを跡形もなく壊してしまう。それは、作り上げる為に作ったものなのか、壊す為に作ったものなのか。もし後者だとするならば非生産的で破滅的な思想からなるものなのだな。
等と、今や砂場ではなく、泥水場になろうとしている場所を見つめては思っていた。
頭にたまった水が、髪の毛を伝い、さらに額を伝っては、彼の唇に触れた。
彼はその雨水をペロリと舐めてみた。
美味い筈もなかったが、別段不味いとも思えなかった。
どうして彼は、傘を持っていないのか?
濡れたままでいるのか?
『面倒だから』
と、彼は心で答えるが、本当のところはそれだけではなかった。
『土砂降りの中、傘もささずに公園のど真ん中で佇む自分は、なんとかっこいいものだろうか』
むしろ、こちらの答えの方が多くの割合を占めていた。
だから、彼はこの場所に居るわけであり、雨宿りをしようともせず、その場にぽつんと立ったままなのである。
そんな彼の奇異な姿を、公園の前を通り過ぎる数人の人々は目撃していたが、奇異であるが故に誰も声をかけようともしなかった。
触らぬ神に祟りなし。
思春期の少年などは、触れるものみな傷つけたりするというイメージがあるのだ。
まぁ実際の所、彼の肉体は誰かを傷つけられるほど屈強でもなく、パッと見ただけで叩けば折れてしまいそうなほど貧弱な身体つきだとわかってしまうほどだった。
彼は考えていた。
ずっと、ずっと、ずっと、考えていた。
――どうして、僕は僕なのだろう。僕は一体なんなんだろう。
その事について、誰とも討論する事もなく、ただ己の心の内にのみへ問いかけ続けていた。
それと雨降る公園がどう関連付けられるのかは、きっと彼のみぞ知るところなのだろう。
ただ、ひとつわかる事は、解けない問いかけはあったとしても、止まない雨はなかった。
ふと彼の頭の上に降り注いでいた雨が途切れた。
けれど、雨は止んでいはいない。
ならば何故?
「こんな雨の中、傘もささないでいたら風邪を引くよ」
言葉を発した存在、その存在が彼の頭上に傘を差したからだ。
「余計な事を……」
わざと相手に聞こえるギリギリのボリュームで彼は呟いて見せた。
「迷惑だった? でもね、いいの」
存在は女性だった。
真っ黒でフリフリのついたワンピースを観に纏った彼女はその場で一つ二つ足踏みをすると、林太の顔見もしないで言葉を続けた。
「だって、私がそうしたいと思ったことだもの。それに対して相手がどう思うかなんて関係ないの、それでいいの、それでいいと私は思うの、そう今も思うの」
彼女は林太の頭上の傘をくるりと一回転まわした。
真っ黒な傘だった。
傘は花のように見えた。
――この女はどこか頭がおかしいに違いない。
林太は即座にそう思った。
全身黒い服装どころか、傘、鞄、アクセサリーと、全てのものを黒で統一し、訳のわからぬ言動を笑みを浮かべながら切々と語るような女は、基本的におかしい女とみなしても良い。
林太の辞書にはそう記されているのだ。
この時、林太は気がついていなかった。
土砂降りの中、傘もささずに、砂場を見つめながら意味不明な思考をめぐらす15歳というものも、確実におかしい存在である事に。
「そうだ、いい事を思いついたわ」
女は一つ手をたたいた。
どんな事を思いつこうと、それが林太にとって『いい事』は無いであろう事はおおよそ予測がついていたので、林太はその場から離れようと試みた。
試みたのだが、それは予測の範囲を大幅に超える行動によって阻止される事になった。
林太の動きは、彼女の両腕でふさがれ、さらに林太の唇は彼女の唇で房ふさがれた。
接吻、口付け、キス、そう呼ばれる類の物を、唐突に、不意に、敏速に、彼女はおこなったのだ。
林太は言葉を失った。それと同時に、目を閉じ身体の自由までも失っていた。それだけでなく、思考を力すら失っていた。
永遠とも、一瞬とも、そのどちらでもない時間が過ぎた。
林太は閉じていた目を開く。その数センチ先、そこには彼女の顔があった。
林太から1秒遅れて、彼女も閉じていた目を開く。
そしてさらに3秒後、ふたりは繋がっていた唇と唇を引き離す。
なにがどうなっているのか、林太には理解が出来なかった。
色恋事に疎い林太ではあったが、キスというものが、愛し合う恋人同士がするものであるということは知っていた。
そして今、林太はキスをした。
しかし、それは愛している恋人ではなく、見も知らぬ変な女だ。
「あ、私の名前は『彩子』って言うんだよ。名字は教えないね」
「僕の名前は、林……」
唐突の彼女の事項紹介に釣られて自分の言いそうになってしまったが、途中で言葉を遮った。
それはそうだ。こんなわけのわからない女相手に、名前を名乗る義理など無いのだから。
――訳のわからない女に、ファーストキスを奪われてしまった……。
「そうか、リン君だね。やほーリン君」
ショックに打ちひしがれる林太の心中などまるで察する事無く、彩子は名前を連呼してはうれしそうにしていた。
呼びかけに返事をする余裕など林太にはない。
――落ち着け、落ち着くんだ。状況を把握するんだ。
林太は深呼吸を一つ、二つ、三つと繰り返すと、目の前にいる諸悪の根源たる彩子と名乗る女の姿をまじまじと見つめた。
――こ、この女、確実に僕より年上だよな、20歳くらいか? それはともかく……結構綺麗じゃないか……。
把握できた状況、それはこれだけだった。
しかし、これはこれで良い状況把握ではある。正直思春期の男の子は綺麗なお姉さんに唇を奪われたがっているものなのだ。
これは正式な統計などは全くとってなどはいないが、確実にそういうものなのだ。
相手が綺麗なお姉さんであるというだけで、なにかしら安堵を得てしまう、これが思春期の思春期たる男子のあるべき姿である。
と共に、相手が綺麗なお姉さんであるが故に、急にドキドキしてしまい頬を赤らめてしまったりもしてしまうのである。
身体の中から、熱を感じる。その熱が濡れた服を乾かしてしまいそうだった。
改めて、視線を彩子に向ける。
先ほどと寸分も変わらずに、笑顔のまま彩子は立っていた。
林太は言葉が何ひとつとして出てこなかった。だから、彩子が次に口を開くまでは無言の時間が流れざるをえなかった。
「あのさ、ビックリした? 驚いた? ねぇねぇ、なんか言ってもよ」
彩子の問いかけに、林太はまってましたとばかりに答えをマシンガンのように口から吐き出す。
「ビックリした! 驚いた! 何か言いたかった! でも、何言えば良いかわかんなかった! 意味がわかんない! なんで? なんでなの? なにがどうしてこうなるの? なにをどうしてこうなると、キ……キスするんだ……よ」
最後の方は、わざと相手に聞き取れないようなボリュームで言った。
「キスのこと? あ、その前に……雨上がったみたいだよ」
彩子は差していた傘を閉じて地面に突き立てると、空を見上げた。
つられて、林太も空を見た。
先ほどまでの雨雲は、まるでどこかに吹き飛んで言ってしまったかのように、綺麗さっぱりなくなっていた。かわりに、灼熱のオレンジ色した太陽がドデーンと空の真ん中に居座っていた。
彩子は空を見ている林太のもとにツカツカと歩み寄ると、真っ白く透き通る手で林太の髪の毛を軽く撫でた。
「うわっ!」
思わず林太は後ろの飛びのいてしまった。
「どうして逃げるの? 頭が濡れてるから拭いてあげようと思っただけなのに。頭触られるの嫌い?」
「あ、頭を触られるのが嫌いとかじゃなくて、突然何かをされるのが嫌いなんだよ! さっきもそうだけど、ビックリするだろ!」
「さっき? あぁ、あれね、キスのことね」
彩子は小悪魔的な笑みを浮かべて、唇に人差し指を当てた。
「でもね、今からキスをしますので、ご用意お願いいたします。って、私が言っていたら、リン君は確実に逃げていたでしょ? 狙いをはずさずにキスをするためには、唐突にするしかなかったんだから。それに、キスは突然した方がドキドキが大きかったりするものよ」
突然のキスと、前もってわかっているキスのどちらがドキドキするのかってことを、林太は知りもしなかった。
それはそうだ、今さっきがファーストキスなのだから。
「し、知らないよ、そんなどっちがドキドキするかなんて!」
そう言われたから、彩子は試す事にしたのだ。
「それでは宣言します。私は今から10秒後にリン君にキスをします」
「な、何を言って?!」
反論をしようとしたさいに、既に5秒の時がたった。
そして、そのさらに5秒後に、その言葉は現実になった。
先ほどよりも、深くしっとりとした感触が林太の唇と身体の心を被った。
「ふぅ、どうだった? 突然だった時と、今とどっちがドキドキした?」
「わかるわけないだろう! なんだよ! 僕をからかって楽しいのかよ! 畜生! こんちくしょう! ふざけんじゃねぇよ!」
林太は言葉をぶつけた、そして左こぶしをも彩子の左肩にぶつけてしまった。
そう、殴ったのだ。林太は彩子を殴った。
――殴った?! 女の人を?! この僕が?
突発できだったにしろ、林太は彩子を殴ってしまった。
彩子は殴られた衝撃でバランスを崩し、砂場に倒れこんだ、それも顔面から。
「あ、あの、ごめん! 殴るつもりなんてなかったんだ。ほんと、ごめん!」
砂場に駆け寄り、倒れている彩子の身体を起こそうとした。
その刹那。
林太は予想外の衝撃を後頭部に受けて、その場に倒れこむ。
助け起こそうとした林太の後頭部を殴りつけたのは、彩子だった。
「一回は一回だから。そういうのは恋人同士だとしてもちゃんとしないといけないと思うのよね」
泥と砂まみれになった顔と服。それらを叩き落としながら彩子は言った。
林太は殴られた後頭部をさすりながら、これまた泥と砂まみれになった身体を起こす。
「なんだよ! ごめんって謝っただろ! それに助けようとしたって言うのに、なんだよ、一回は一回って! 子供かよ!」
口の中に砂が混じってとても喋り辛かった。
「わかった。私が間違っていたわ」
林太の言葉に納得した素振りを見せた彩子は、ヒラヒラした長いスカートを捲り上げた。その中から白くて細い足が姿をあらわす。
そうしたかと思うと、その足を高らかに持ち上げ、振り下ろす。勿論、振り下ろす目的地は林太である。
「げべへっ」
人間の発する言葉とは思えない、奇妙な言葉を発して林太はまたまた砂場に顔をうずめる事になった。
「そうよね、倍返しのほうが基本的よね。これでいいのかしらリン君?」
もし、これで良いと林太が答えたとしたならば、それはこの時、林太がドMに目覚めた場合のみだろう。
残念ながら林太は、己のうちに隠された性癖に目覚めることはなかった。
故に、怒った。
「いいわけあるかっ! なんなんだ、本当に一体全体なんなんだよ!」
「知らないわよ。それともリン君は、自分がなんであるかなんて知っているの?」
不意に林太の背筋に寒気が走った。
林太がこの公園で、雨に濡れてカッコつけて佇んでいた訳。
それは『どうして僕はなのだろう。僕は一体なんなのだろう?』その問いかけゆえだったからだ。
「そうだわ。自分がなんであるか知っている事が一つあるわ。そう、私はリン君、あなたの彼女なのよ」
指を指して言った。彩子は林太を指差して言った。力強く、ごく当たり前のように、っとんでもない発言を。
「そして、リン君! あなたは私の彼氏なの。これでお互いが何者であるかはっきりしたわよね。良かった、良かった。そう思わない?」
そう思わない? などと言われて、どうかえせばいいのか?
「思うわけないだろ!」
そう返した。
「そう思ってくれないの? 残念だわ……。なら、私は死んでしまうわ」
「は?」
「死ぬって言っているの」
「どうして死ぬんだよ」
「私はキスした相手と恋人同士にならないと、死んでしまう病だからよ」
「……」
ここで林太が言葉に詰まるのは、常識人として至極当然の事と言えよう。
キスをした相手と恋人同士にならないと、死んでしまう病気? 確かにこの世の中には無数の病気が存在してる。だから、万が一、いや、億が一にも、そのような病気が無いとは言えはしない。
そこから林太は答えを導き出した。
――こいつあれだ、よくネットとかで見る、メンヘラとかいう類の女に違いない。自分を悲劇のヒロインみたいに例えては、悦に入って楽しむ部類なんだ。
林太は後悔した。少しばかり綺麗だからといって、最初にキスされたあとにすぐさま逃げなかったことにだ。
――今からでも遅くない、逃げよう! それが一番だ。本気で走ればきっと逃げ切る事ができるに違いない。
林太は心の中でスタートの合図を待った。勿論、逃げ足スタートの合図である。
用意、スタート!
スタートの合図が心中できられたのと同時のタイミングで、彩子は口から血を吐いた。
血を吐いたのだ。
「ほら、恋人同士になってくれないなんていうから、血を吐いちゃったじゃない」
ボタボタと流れ落ちる吐血は、彼女の黒い服に赤い模様を刻み込んでいった。
――まさか! まさか、この世にはそんなとんでもない奇病が存在するのか!
唖然、愕然、驚愕。
「ま、まて! ちょっと待て! そんな病気があることは100歩譲って信じよう。でもなんでなんだ? どうして僕にキスしたんだ? キスさえしなければそんな事にはならなかった訳だろ? どうして?」
彩子は口元から流れ出る血を、ポケットから取り出したハンカチでふき取ってから口を開いた。
「だって、キスしたかっただもん。仕方ないでしょ。悪いのは、私をキスさせたくなったリン君が悪いのよ!」
「なんなんだ、その理屈は!」
「理屈なんてないの。人間だもん、動物だもん、生き物だもん。頭の中にそう電磁パルスが走ってしまった。だから、私の手足は動いた。そして、リン君にキスをした」
「わけわかんない。それに僕はそっちより年下だよ!」
「私は年とか気にしないの! というか、むしろ年下の方が好みなのよ!」
「ぼ、僕は学校はサボるわ、急に意味不明な悩みを抱えては悦に言って喜ぶようなタイプの、中二病なんだぞ! 中三だけど!」
「いいじゃない! 私だって周りからメンヘラだの、危ない女だの、悲劇のヒロイン症候群だの言われてるんだから!」
「さっきあったばっかりだろ!」
「さっきあったばっかりじゃないもん!」
「え?」
「だから、さっき会ったばっかりじぁゃないって言ってるのよ」
「そ、それは一体どういうことで……」
「私は4年前から、リン君の事をストーキングしていたんだもん!」
「え……」
驚愕の事実を彩子は語りだした。
彩子は林太に出会ったのは4年前の事だった。
その時、林太は小学6年生。短パンにランドセルの、それはそれはかわいらしい子供だった。
彩子はその時、高校2年生。
短パンとランドセルの小学生をこよなく愛する、それはそれは危ない女の子だった。
彩子は勇気を振り絞って、何度となく林太に告白をしたかった。
しかし、出来なかった……。
それは何故か?
林太はスクスクと健全に育っている男の子で、彩子は確実にどこかしらが腐ってしまった女の子。
彩子は林太にかかわってしまったら、林太の人生を台無しにしてしまう。
そう思っていたからこそ、遠くから写真を撮ったり、ゴミ箱をあさったりでとどめて置けたのだ。
しかし、ここ数年で林太は変わっていった。
そう! 中二病をこじらせてきたのだ。
『今の僕は本当の僕じゃない! 隠された力が眠っているに違いない!』
などと言っては、こっそり裏山で超能力開発にいそしんでみたり。
『この世界は腐りきっている! そうこの選ばれた僕が粛清しなければならないのだ!』
などと言っては、こっそり脳内だけで政府転覆を図ってみたり。
エトセトラ、エトセトラ……。
そんな姿を彩子は望遠レンズ越しにずっと見守ってきていた。
そして、今日この日に、ついに確信へと至ったのだ。
『今のリン君ならば、私と付き合っても、人生おかしくなったりなんかしない! だって、もう既におかしくなっているだから! むしろ、似たもの同士で素敵な会話が出来るに違いない!』
そう、明らかに間違った結論に行き着いていたのだ。
雨の中、びしょ濡れになっている林太を見守りながら、出て行く絶好のタイミングを見計らい、まるで偶然を装いながら登場する。
しかし、その欲望は抑える事が出来ずに、いっきに唇を奪ってしまう。
それが事の顛末。
ちなみに、これは林太には話してない部分なのだが、吐血はこっそり仕込んだ血糊であり、キスした相手と恋人同士にならないと死んでしまう病等というものは勿論存在しない。
「ね、そう言うことなの。だから、私とリン君は恋人同士なの。これは神が与えた運命。逃れる事の出来ないディスティニー」
「いや、あの、その、そこは僕としてはすごいひいちゃう所だと思うんだけれども……」
「大丈夫! 痛くなんかしないから!」
「ちょっと待て! なにがなんだ、何が痛くなんかしないんだ!」
「さぁ……。それは秘密です。シークレットなのです。さっきも言ったでしょ、突然のほうがドキドキするって……」
「僕はどうすれば……」
結論として……。
二人は恋人同士となった。
何故ならば、林太は完全にこの馬鹿げた病気を信じてしまっていたからだ。
恋人同士にならないと死ぬ、つまり恋人同士にならなければ、林太が殺したも同然となってしまう。
そんな恐ろしい事に耐えるには15歳という年齢はあまりにも若すぎた。
けれど、本質はそんな所にはなかった。
林太は求めていた。
他人とは違う人生を、経験を。
林太は探していた。
今まで歩いてきた道と、まるで別方向に向かう道を。
その二つを見つけたのだ。
それに彩子は綺麗だ。ここがとても重要な部分だった。
きっと彩子がブサイクだったら、林太は最初で逃げ出していただろう。
そう、ドラマをスタートさせるものは、綺麗か、ブサイクか、可愛いか、可愛くないか。
そんな単純な事でしかなかったのだ。
「というわけで、恋人同士になれたわけだから、リン君これからどうしよう?」
「とりあえず、濡れた服を着替えに帰りたいな……」
「それならうちに来るといいよ。偶然、私この近所に独り暮らしをしているし、リン君のための着替えも用意してあるから。それにベッドのシーツだって昨日洗濯したばかりなの!」
「………なにか恐ろしい計画が待っているような気がしてならないんだが……」
「大丈夫、恐ろしくもなければ、痛くもないから。さぁいきましょう」
おしまい。