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セーラー服と帰還中  作者: 吹野 祭
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第1-3話

ミラの住んでいる宿屋は。2階建ての立派なものだった。屋外には小規模ながらも畑があり、そこで収穫された野菜は従業員の御飯やお客さんに提供もされているらしい。


「それじゃあ私、これ厨房にもっていかないとだから、皆はロビーでまっててよ」


「女将さんいま厨房か?だったら挨拶しておきたいし、俺がいくよ」


「ほんと?じゃあこれ、おつりもいっしょにお願いね」


台車と財布を受け取り、宿の裏手に向かっていったノーラさんと別れた後、わたし達はミラの案内の元ロビーに通され、ようやく落ち着くことができた。


「じゃあ、お姉ちゃん達、聞きたいことってなにかな?」


ソファーに腰を下ろした後、本題に入る前に委員長が待ったをかけた

 

「ミラちゃん、お仕事はいいの?」


「うん、部屋の掃除はほかのみんなが終らせてるだろうし、私は夕食の仕込みまでは自由時間なの」


「そうなんだ、ごめんね、急に押しかけるようなことしちゃって」


「いいのいいの、私もまた他の地球人に会えてうれしいわ」


「そういえばミラってどこから来たの?」


「私?私の故郷はアメリカだよ、だいたい2年か3年前にこっちに来たの」


「寂しくなったりしないの?家族と離れて暮らしてて」


「もちろん寂しいわ、ママやパパの事を忘れた事なんて一度もないわ」


「不安にならない?ちゃんと帰れるのかなーって」


我ながらなんて質問をしてるんだろうって思う。外国で暮らすのとはわけが違うんだ。不安じゃないわけないだろうに。

ところが彼女は黙って首を振ると、


「約束してくれたから」


と彼女は小さく微笑んだ。

ノーラさんがこの子のことを頼もしくなったと言った理由がすこしだけ分かった気がした。

これじゃどちらが年下かわからない。わたしは両親と離れて寂しいし、妹のことが心配だし、日本に帰ることができるのか不安で仕方がないというのに。


「ミラちゃん、私も質問いいかな?」


「もちろん、何でも聞いて」


「この街の治安ってどうなのかなーって思って、警察組織みたいなのはあるの?」


「うん、『ヴォルニア・シート』って呼ばれてるの国の治安維持を目的としている集団があるの。ちなみにノラ兄もここに所属してるの」


「ウォルニア・シート」


委員長の目が輝いていた、魔法の話を聞いた時もそうだったけどフンフンと鼻息が荒いので、またテンションが上がってるんだろう。この子も前向きだ。、多分ここで暮らすことを見据えているんだろう。


「へーじゃあ、リーデルって人もそこの人なんだ。団長って呼ばれてたけど偉い人なの?」


「リーデルさん?偉いっていうかあのひとはシートのトップだよ、まあよく仕事さぼってるけど、もう会ってたんだ。なに?またどこかフラフラしてたの?」


「まさか!、角の生えた狼の群れに囲まれたときに助けてくれたの」


「角のはえたって・・・それ魔獣じゃない、え!?大丈夫だったの?」


「うん、危ないところでしたけどね」


「そっか、その事、ノラ兄は知ってるの?」


「どうなんでしょう・・・その時はこの首飾りが無かったので言葉が解りませんでしたし・・・」


「知らないなら言わないほうが良いと思うわ。ノラ兄って魔獣に関しては神経質なところあるから、きっといろいろ言われるわ」


「へぇー」

「そうなんですね」


付き合いの長いであろうミラがそういうなら。あえて言う必要もないだろう、


「そのノラ兄もそろそろ戻って来てもいいんだけど・・・」


「そういえば、遅いね」


「女将に捕まってるのかもしれないわ。ノラ兄ったら女将に弱いみたいだし」


「そいうえば気になってたんだけど、ミラちゃんって、ノーラさんの事()()()ってよぶんだね、ノラ姉じゃなくて」


「それわたしも思った、でもたしかに自分の事俺っていうし、しゃべり方もそうだけど姉って感じじゃないか」


「ああ、その事ね、えっと、あの人は男の人だよ」


「ええ!?」


「あれで!?」


「うん、実は今のノラ兄の体ってほとんど機械なの」


「機械って・・・それってサイボーグってこと?」


「んーーサイボーグとはちょっと違と思うけど・・・その認識で大丈夫と思うよ」


「今はって言ってたけど前は違ったの?」


「うん、前の体は数年前の魔人たちとの闘いでほとんど無くしちゃったんだけど、それまでは普通に生身の男の人だったんだよ」


「「魔人?」」


「魔獣・・・じゃなくて?」


「魔人っていうのは、人を食べた魔獣のことだよ」


さらりと恐ろしいことをいうミラ。ぞくっと背筋が冷えるのを感じた


「魔獣が人を食べると、その人の知識や力を取り込むの。力のある軍人を食べれば武器を扱えたり、頭のいいひとを食べれば、人を罠にかけたりもするようになるんだって。だから魔人っていうのは魔獣なんかよりもとっても危ない存在なの」


「じゃあもし私達が襲われてたら・・・」


「うん、2体の、それも渡人が食べた魔人の出現なんて、大変なことよ。」


「渡人?って私たちの事だよね?私達力があるわけじゃないし知識が豊富ってわけでもないよ?」


「別の世界から迷い込んできた人達をそう呼称してるんだって。それでその渡人なんだけど、こちらに来てから、こっちの人たちみたいに魔術だったり何かしら能力が使えたりする可能性があるの、それもこっちの人よりも強い力が」


「魔術!?ミラちゃんもつかえるの?」


「私の場合は魔術っていうより筋力とか脚力とか身体能力がすっごくなった感じかな、」


そう言ってミラは片手で机を持ち上げて見せてくれた、大人でも二人で運ぶであろう長机を片手の人差し指と親指でつまむように持ち上げていた。


「うわすご」


摘まむようにもっているのにも関わらず、机は水平を保てるほどの力を見てわたしの中にある思いが湧き上がってきた。


「おかげで力仕事ばかり回ってくるけど、この力のおかげで助かってるわ」


「じゃあ私にもそんな力があるかもしれないんですね」


「そうね、だからこそお姉ちゃん達、魔獣には本当に気を付けてね」


「わかったわ」

「・・・・・」


わたしはすぐに返事をすることができなかった。


「あるかもしれないんだね、自分の身を守る力が」


「え?」

「お姉ちゃん?」


諦めかけていた。わたしたちじゃあの化け物には敵わないだろう、このまま街を出ても無残な最期を迎えてしまうから


「わたしは」


でももし、本当に魔術が使えるのなら。身を守る力があるのなら。この街で帰る方法が見つかるまで指を加えて待っているなんてしたくない


「街を出て帰る方法を探したい」






















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