第1-2
「どんな人なんですか?わたし達よりも先に来た人達って」
今、わたし達は、ほかの転移者に会うために街の中を歩いていた。やはりというか車や自転車は走っておらず、歩いている人ばかりだった。
「みんな君たちよりも年下の女の子だよ。一人は来年で13歳だったかな」
「そんな・・・」
言葉が続かなかった。まさか自分たちよりも年下の子が、こんなことに巻き込まれているなんて。まだ中学に上がるくらいの子が、家族から引き離されて、絶対にさみしいだろう。
「彼女もこっちにきてずいぶん経つけど、たのもしくなったなぁ」
と、久々にあった親戚の人みたいなことを言い出すノーラさん。いや家族から、お父さんお母さんから引き離されている少女に対して、『もう一人でやっていけそう』みたいな言い方は、ちょっと他人事すぎないだろうか?
わたしがちょっともやっとしていると
「誰がたくましくなったですか」
と後ろから声がした。
振り返ると、大量の食料が積まれた台車を引いた女の子が立っていた。
「げ、おー、ミラじゃん、丁度良かった。いまから会いに行こうと思ってたんだ」
「今、げって。言った?」
つかつかとこちらに歩み寄る少女が威圧感を放っていた。
「言ってないよ?」
「そう、ならいいですけど。それでそのたくましい私にご用は何かしら?」
「うん。彼女たちにお前の話をきかせてあげてほしいんだ」
わざとらしく、たくましいを強調して言った少女を無視して、訂正することもなく、わたし達を紹介しようとするノーラさん。
「私の話?って、えー!?その格好日本のセーラー服じゃない。ってことはこのお姉ちゃんたち、もしかして?」
「ああ」
「そう、わかったわ」
わたし達の格好をみて事情を理解してくれたみたいだった。そして、日本、セーラー服というワード。じゃあこの子が・・・
「ミラ=フランクリンっていいます、よろしくね、お姉ちゃんたち」
「柴木 京華です」
「緑青 茜よ」
「ここでする話でもないですから、歩きながらでも」
ミラが台車に戻ろうとすると
「あ、手伝います」
「ほんと?やった、ありがとー」
そう言って委員長が台車に手をかけて起こそうとする。
が。
「おもっ!?」
積み荷の量からしてかなりの重さなのだろう、台車は起き上がることすらなかった。
「ちょっと大丈夫?」
思わずわたしも駆け寄って二人で台車を起こそうとする。
「「せーのっ」」
が。
「ん・・・んんー」
「おっも・・」
二人がかりでやっと起き上がる程度だった。でもあれ?この子一人で持ってた・・よね?
「えっと・・お姉ちゃんたち大丈夫?」
ミラが困った顔でそう尋ねてきた
「ごめんなさい、今日はちょっと買い込んじゃってて。やっぱり私が運びますね」
そう言ってミラは台車を起こて、軽々と歩き出した。彼女を追うように、ようにわたしと委員長も後に続く。手伝うといったのにこのありさまだ。委員長もちょっと気まずそうだったので、わたしからミラに質問することにした。
「すごい量だけど、ミラってどこに住んでるの?」
「私ですか?私はこの街の宿屋に住み込みで働いてるの」
「あーなるほどね、だからこんなに食料があるんだ」
「そうなのー、宿の食事もそうだけど、他の住み込みの子達の御飯もあるから、どうしても多くなっちゃって」
「他の子!?もしかして他の転移者もそこで暮らしてるの?」
「え?違う違う。宿にいる地球人は私だけだよ。宿の女将さんが身寄りのない子たちを仕事の手伝いをするかわりに置いてくれてるの」
「すごいですね、まだ私なんかより小さいのに、自分の力で生活してるなんて」
委員長も感心したようにため息を漏らす。うん正直わたしもそう思う。もしわたし達もここで生活するようになった場合やっていけるのだろうか。ぶっちゃけ不安しかない。
「そんなことないよ、あの宿屋を紹介してくれたのはそこにいるノラ兄だし、女将さんはすっごい親切だし、ルームメイト達にも助けてもらってばかりだし、自分の力でなんて思ったことはないかな」
そう照れながら言う、小さな少女の背中が大きく見えた気がした