21.へりくつ野郎、タメ口先輩に救われる
むぅぅ、こんなチートすぎる美少女が、何故こんな何てことのない学校に来るんだ。
この前会った、おみ足美少女と同じ理由だというのか。
だがしかし、俺には全く無関係なことだ。
しかし俺は今、チート美少女に弱みを握られ、かつ責められようとしている。
「まぁ、あれだよ! つまり、キミはチートなのだな?」
「……」
「なに、言わなくても分かるぞ。残念なことに、俺もある分野ではチートなのだよ。そういう訳で、残念ながら俺は鮫浜あゆなる美少女には、何の触手も動かなくてだね……」
「触手……ふぅん?」
「冗談だ。食指だぞ」
「どうでもいいけど……。それじゃ、あなたは私の敵……敵で間違いない?」
あれ、これはそういう流れだっただろうか。
たかが女子の名前を聞いただけなのに、しかも相手はよく分からないチート美少女だったのに!
何で雑魚なる俺の敵と化す必要があるというのか。
さすがの実乃梨さんも、ドン引きモードに突入してるぞ。
「……いいよ? ここでキミもやりたいんだよね?」
「や、やらん! 何かは知らんが、自分をもっと大切に扱うべきだぞ」
「クスッ……全然似てないね。似てないけど、育て甲斐はあるよ?」
「育てる……だと!? おれの身長はとっくに止まっていてだな……」
やばい、何かがやばい。このチート美少女から漂う雰囲気は、間違いなく黒い世界のトップオブトップ。
逆らったつもりは無いが、名前を聞いてしまっただけで何かの引き金を引いてしまったか。
『うっるせええな!! さっきから廊下で何をごちゃごちゃとしゃべってやがる!!』
おぉ? この怒りで我を忘れるわけも無い怒気をはらんだ声は、先輩か!
「――あぁ、あなたはこの学校の……」
「ちっ、鮫浜だぁ? 何でここにいやがる。ここでぼさっと突っ立っている雑魚野郎は、面倒でもこの学校の奴だ。鮫浜なんぞがしゃしゃり出る幕はねえぞ?」
「……何だ、もう唾をつけられた男、男なんだ。それならいらない。どうでもいい。どうせ、彼はここで会えない」
「あぁ? 何言ってやがんだ?」
「へりくつ野郎くん、キミはもう答えが出すぎている。分かっている……違う? 違わないはずだけど?」
「そ、それはだな……」
チート美少女鮫浜は、俺と実乃梨を交互に見つめた後、首を左右に振った。
そして、
「もういい。これでさよなら。へりくつ野郎くんは、最後に決めてあげるべき。それじゃあ、さよなら」
「……へ?」
「おい、待ちやがれ! 鮫浜がこの学校に来やがって、ふざけんじゃねえ! 出るとこ出るぞ、あたしは!」
「じゃあついて来れば? ふふ、そうすれば……きっと」
どうやらタメ口先輩に救われたようだ。
闇のチート美少女とは、縁が生まれそうで生まれなかったということか。
ううむ……あの子の微笑はどう考えても、俺の心を読んでいるとしか思えん。
さてと、先輩もいなくなったことだ。
決めるしか無さそうだな。




