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タメ口先輩とへりくつ野郎の青春記録  作者: 遥風 かずら
第二章:変態と青い始まり
15/22

15.変態さまと輝くおみ足美少女


 タメ口先輩こと、栢森かやもり先輩が天然菩薩を従わせてしまうとはあまりに予想外だった。出会った時の印象は、最悪すぎる相性に加え、馴れ馴れしすぎる褒め言葉連発。


 かなり煙たがられていたはずだったのに、麻野は天然菩薩から闇に堕ちてしまったのか。あんなに純粋で癒やしの彼女が何故こんなにも変わってしまったというのか。


「よぉ、変態野郎」

「一応お聞きしますが、それはどなたのことでございましょうか?」

「……椿とかいうエロ野郎のことだけどな。お前だよな? 椿」

「うっ……」

「当たりだな。コイツの言った通りだ」

「う、うううう……」

「あん? ここに来てびびりまくってんのか? 変態野郎が今さら後悔したところで……」


 苦節数日! ようやく先輩が俺の名字を呼んでくれた。

 この機会に歓喜を表すための踊りを披露するべきだろう。幸いにも麻野がいるし、一緒になって踊りを始めてしまうかもしれない。


「う、うおおおおおー! おっおっおー! さぁ、麻野も踊れ! 記念すべき第一声を頂いた記念の踊りだ!」

「えっ? 椿くん、だ、大丈夫? いくら何でも褒められるところが無いくらいキモイよ?」


 踊りといっても所詮は付け焼き刃な足踊り。傍から見ればキモい盆踊りくらいにしか見えないのだろうが、やはり麻野はハッキリと闇を見せて来たようだ。


 以前は褒めて褒めちぎっていた彼女だったのに、何が原因でどうしてこうなった。


「ちっ、うぜえ変態野郎だ。時間が足りなくなる原因が変態のせいってのは、とことんムカつきやがる」

「ど、どこへ行かれるので?」

「昼飯に決まってんだろうが! あたしをシカトしたてめえには、とことん食ってもらうからな! 覚悟しとけよ、この野郎!」

「ほぅ? 奢らせるのではなく、奢って頂けるとは……なんてお慈悲! 麻野も行くだろ?」

「ううん、わたしは嵐花ちゃんのお願いを聞いてあげただけなの。それに、椿くんは嵐花ちゃんと愛を育むべきだと思うんだ。それこそ、素敵なことだよ! じゃあ、行くね」


 なるほど。

 麻野の中で、俺と栢森先輩の愛は不変であると思い込んでいるようだ。


「ち……厄介な奴に貸しを作っちまった」

「俺とご一緒に昼飯を食べて頂けるとは、まさに至宝の極み! いやー出来れば、その細くて長いおみ足で足を組みながら、蔑んでいただきますととても気持ちが良くなる気がしますよ」

「キモ野郎……離れて歩けよエロ野郎!」


 昼と言えば、妹に席と人気メニューを確保しとけと伝えてあったが、鉢合わせるのは確実だ。

 そうなった場合、せっかくのメニューが台無しになる危険性がある。


「もしかしなくても、俺と同じ席で食べるのでございますか?」

「――なわけねえだろ。それと、わざとらしいソレを今すぐやめやがれ! あの女も似たことを言ってやがったが、あたしもムカついてしょうがねえ」

「はてさて、一体何のことでござ――」


 言葉を遮るように、顔スレスレの位置で鋭い蹴りが目の前に繰り出されていた。やばい、噛みつきたい……ではなく、もっと違った角度からおみ足を拝見したくなった。


「てめえとあたしは同じ教室にいやがんだろうが! てめえもタメ口で話せよ、この野郎!」

「あー……それもそうですね。しかし、あくまでも先輩じゃないですか。さすがにタメ口で話したらキレると思いますが?」

「誰がキレるって?」

嵐花らんかが」

「蹴るぞ、くそが!」


 試しに名前をタメ口……呼び捨てで呼んでみた直後に、腹に強烈な蹴りを喰らっていた。蹴るぞ、ではなく、蹴った後に怒られるのはどうにも納得がいかない。


「~~~っ」

「それくらい避けやがれ、軟弱な野郎が!」


 もちろんこれは身体的な能力差ではなく、俺が避けれなかっただけだ。栢森先輩の蹴りはギリギリの位置で避けられるように足を出している。


 しかし非常に勿体無い! 繰り広げられるおみ足を違う角度から眺めるのも、俺の役目であり醍醐味。

 避けてしまってはせっかくのおみ足を堪能できないというもの。


「早く起き上がって、学食に行くぞこの野……あっ!?」

「んん? どこからともなく見知らぬおみ足が近づいて来ている? どこだ……」

「くそ……何で彼女が学食に……あー、くそ! おい、椿変態野郎! てめえにたらふく喰わせるのはまた後にしてやる。あたしは用事を思い出した。てめえはとっとと学食に行きやがれ!」

「へ? 栢森先輩はどこへ?」

「あたしは一人で食べる。ついてくんじゃねえぞ! さっさと行け」


 何だかよく分からんが、栢森先輩にも天敵がいたのか? 

 それはともかく、口うるさい妹をぼっちにしたまま放置にするほど、俺は鬼畜になるつもりは無い。


 妹を泣かせたりするのもよろしくない。別姓であっても、愛情くらいは備えている。家以外で甘えさせる場所は、学食と下校時間くらいしかないだけに、学食に急がねばならないはずだった。


『そこのあなた、その背中……わたくしの下に跪くことをおススメするわ!」


 優雨が待っている学食の入り口付近にたどり着いたと思ったら、訳の分からない女子から声をかけられてしまった。しかも何やら高潔そうだ。


「背中? ひざまずく? そういうキミは何かな? どういうことをすればそのおみ足は輝けているというのか」

「聞こえていなかったかしら? ふふん、庶民は高潔なるわたくしと違って、いささか聴覚が衰えているということなのかしらね」


 何とも言えないが、ムカつくようなそうでないような……どことなく偽モノ感が漂っていなくもない。


「庶民を代表して輝くおみ足に跪いてもいいが……キミは何だ? 少なくとも同じ教室では見たことが無いんだが、どこのお嬢様で、どこのどいつなのか教えてくれないかな?」

「わたくしは本物の、高潔で由緒あるお嬢様で間違いなくってよ? 下民ごときがわたくしの名前を知りたいだなんて、とんだヘリクツ野郎……じゃなくて、ええと何だったかしら……」

「あぁそうか。それは失礼をした。何かが足りないと薄々気づいていたけど、キミはどこかが残念なお嬢様だったみたいだ」


 せっかくの輝くおみ足をしているし、かなりの美少女なのに何て勿体ないのか。見た目だけなら、タメ口先輩に匹敵するのに。どうやらオツムが残念なご様子。


「――あ? 誰が残念だこの野郎! もう一度言ってみろ」

「その口調は何だか親近感を覚えてしまうが、もしかしてタメ口先輩のお友達だったりするのかな?」

「わたくしのお友達ですって? ふふっ、世迷言ね。戯言シリーズでも唱えるおつもりなのかしら」


 間違いなく知り合いだな。口調はどちらが先に使っているのかは置いといて、せめて輝くおみ足を拝みつつ、名前を聞かないと優雨の所に行きたくないぞ。


「ははー……跪いてそのおみ足をお舐め致しますので、是非ともお名前を……」

「ひっ……と、とんだ変態野郎がいるのね。は、早く転校したい……変態な背中は嫌よ、嫌すぎるわ」


 転校したい? ということは同じ学年の女子か。この美少女はタメ口先輩への足掛かりとなるかもしれん。


「俺は椿つばき秋晴しゅうせいですよ、お嬢様。二年上がりたてなわけですが、貴女様も?」

「へ、へぇ……そ、そうなのね。ふふん、下賤な輩にわたくしの名前をお聞かせするのも勿体ないことではあるけれど、無駄に名乗って頂けた以上はわたくしも名乗らなければならないようね」

「……図星か。それならその偽言葉をやめてタメ口で話せよ」

「う、うるさいわね。わたくしは池谷いけがやさよりだわ。変態野郎に聞かせるほど安くはなくってよ!」


 タメ口先輩とお知り合いということは、先輩は実はお嬢様だったりするのか? まさかな。

お読みいただきありがとうございます。

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